Geographical review of Japan, Series B
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日本とその周辺地域における寒冷前線の地域的・季節的特性
山川 修治
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1984 年 57 巻 2 号 p. 154-165

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抄録

日本とその周辺地域 (Fig.1) における寒冷前線の地域的・季節的特性を,主として赤道140°E上にある静止気象衛星 (GMS) からの可視画像を用いることによって,明らかにしていくことが本稿の目的である。当該地域において特筆すべき異常気象が発生しなかった, 1979年4月から1980年3月までを研究対象とした。
まず,日本を含む広域で,寒冷前線とそのほかの前線,およびスコールライン(同一気団内で発生する線状の積雲群であり,前線と関連するものに限定している)について調査した。いずれも雲画像からの判読で,雲系と前線の関係 (Fig. 2) を基本にしている。日本付近を通過する寒冷前線は4月,9月,10月に最も多くなる。1-2月の寒冷前線は,一年間で最南域の20°一25°N付近に位置することが多く,時にはフィリピン諸島近海,つまり10°N,125°E周辺の熱帯性雲塊が発生しやすい地域まで南下する。梅雨季初期(5月)の前線は,平均して22°-23°Nにあり,冬季よりむしろ定常的位置にあるといえる。また,秋季のスコールラインは,その方向性に特徴がみられる(Fig.3)。
次に,雲系ダイヤグラムを128°Nと140°Eに沿う2つの南北断面で作成した(Figs.4, 5, 6)。これは,GMSの毎日03GMT(12JST)の画視画像によるもので,各断面の経線を中心とする経度2°の地帯における雲の有無に基づく。日々雲系がどのように消長し移動しているかを調べ,24時間ごとの画像では追跡しきれない小規模の雲系については,3時間ごとの画像も参考にして,二次元空間分布を時間一空間分布に置き換えた。雲系を層状雲とセル状雲に識別するとともに,雲の輝度にも配慮して,図示した。1月の寒冷前線性雲バンドは,128°Eでは12°一20°N付近まで,140°Eでは15°-25°N付近まで南下し,前者の方が南偏しやすいことが確かめられた。しかし,25°-40°Nの緯度帯に関する限り,128°Eより140°Eにおいて発達しやすく,このことは,雲バンドの細かいシャープな形態からも,850mb面気温の南北勾配からも推定される。

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