Geographical review of Japan, Series B
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華南海南島における気候と農業:予察研究
吉野 正敏
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1984 年 57 巻 2 号 p. 166-182

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抄録

海南島における気候と農業について,最近の中国における文献と1984年1~2月の筆者の予察研究旅行の結果とによって記述した。まず,総観気候学的背景を前線帯・雲量分布・850 mb面における流線・霧分布などによって示した。 850 mb面における南西の風と,北東の風,台風が重要な役割を果たすこと,また気温・降水量・雨季と乾季の長さなどを気候記録によって示した。何大章による気候区分を紹介し,その8気候地域を示した。次に,海南島の農業について,その気候条件を考慮しつつ,特にゴム・米・茶について,詳しく述べた。ゴムについては5地域に区分し,各々について寒害と風害に注目した。ゴム栽培の高距限界は島の北部では300~350m,南部では500mである。米作のうち特に興味あるのは,最近の雑種交配種子の栽培である。それらは中国各地から農民や試験者が島の南部にやってきて栽培される。冬に成長し,3月中・下旬に出穂・開花し, 4月中・下旬に成熟する。そして,とれた種子を中国の各地に持って帰り,そこで通常の栽培期間に栽培するものである。
最後に,台風による被害と,寒害について記述し,特に,その分類基準を紹介した。また,近年の早稲と晩稲の栽培の問題,ゴムの栽培における寒害の問題は,海南島の熱帯作物栽培の今後の発展に特に重要な課題なので詳しく述べ,気候条件の研究が急務であることを指摘した。

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