Geographical review of Japan, Series B
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日本における梅雨季の長期変動について
村田 昌彦
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1987 年 60 巻 2 号 p. 179-194

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抄録
古日記中の天候記録を利用して,歴史時代(東京では1710年から1895年まで,大阪では1714年から1895年まで)の梅雨入りと梅雨明けを復元した.観測時代(1896年から1980年まで)の梅雨入りと梅雨明けと復元データを結合して,その長期変動傾向を検討した結果,以下のことが明らかになった.
(1)梅雨明けと梅雨の継続日数には強い正の相関,梅雨入りと梅雨明けには弱い負の相関がみられた.
(2)長期変動傾向として,1770年頃,1810年頃,1860年頃,1920年頃が梅雨明けが早く継続日数が短い期間,1740年頃,1780年頃,1830年頃,1870年頃,1950年頃が,梅雨明けが遅く継続日数が長い期間として挙げられる.また,周期性を調べた結果,梅雨明けと継続日数およそ60年の長周期の存在が確認された.
(3)梅雨入り,梅雨明け,梅雨の継続日数には,小氷期とその後の時代とで,大きな差がみられない.
(4)梅雨明けが遅い年に,東北地方で冷夏が発生しやすいことが,歴史時代から観測時代を通じて成り立っており,天明,天保,慶応・明治の各凶作の時代に,特に梅雨明けが遅かったことが分かった.
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