抄録
競合着地モデルは,地図パターン問題(空間的相互作用モデルにおける距離変数にかかるパラメーターの推定値が,対象とするシステムの空間構造の影響をうけて歪んでしまい,結局モデルの誤った特定に陥ってしまう,という問題)の解決に向けての曙光と評価される。しかし,この新しいモデルの根底にある二段階目的地選択過程という前提は,これまで経験的に論証されていなかった。本稿は,概念上競合着地モデルと対応するネスティド・ロジヅト・モデルを用いて,この課題に取り組んだものである。1980年におけるわが国の各都道府県からの移動者データの分析を通じて,このモデルにおける合成変数にかかるパラメーターが,一段階目的地選択を含意する値から有意に離れていることを確認した。この知見は,上記の二段階目的地選択過程が作用していることの証左とみなしうるものである。さらに,異なる選択トリーがモデルの実行度に与える影響についても,論及した。