地理学評論
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明治政府の地誌編纂事業と国民国家形成
島津 俊之
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2002 年 75 巻 2 号 p. 88-113

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抄録

本稿は地理学史におけるクリティカル・ヒストリーの潮流に鑑み,明治政府の地誌編纂事業を新出史料に基づいて再構成し,近代日本の国民国家形成との関係性を考察した.一国地誌の編纂は当初民部省・文部省・陸軍省で個別に構想され,文部省は『日本地誌略』を,陸軍省は『兵要日本地理小誌』などを刊行した.陸軍省から正院に移った塚本明毅は『日本地誌提要』を編纂し,さらに「皇国地誌」の編纂を推進した.それを「大日本国誌」に発展させた内務官僚桜井勉の異動は,その中止や地誌編纂事業の帝国大学移管と規模縮小につながり,井上毅文相の裁定と死は当該事業の命運を断った.正院-内務省系統のキーパースンは,地誌編纂の表象的な国土統合機能を主権強化の要件としたが,国民統合の構想には欠けていた.しかし,対外的な国威発揚の用具ともなった『日本地誌提要』は,その記載内容が実質的に国民統合に向けて動員された.かかる「意図せざる結果」は,国土統合や主権強化の諸過程とあいまって,国民国家形成に寄与し得るものであった.

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