地理学評論
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大都市圏郊外のニュータウン出身者の移動行動
高蔵寺ニュータウンを事例に
稲垣 稜
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2003 年 76 巻 8 号 p. 575-598

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抄録

本研究では,高蔵寺ニュータウン出身者を例に,郊外第2世代の移動プロセス,および彼らの移動選択に影響を及ぼす諸条件を検討した.移動には男女差がみられ,未婚時には女性の離家未経験者の割合が高く,結婚時には女性の長距離移動がやや多い.高校卒業直後は,制度的な条件に移動が制約される面が強いが,その一方で,男女のライフコースの違いを前提とする親の言動など非制度的な条件も重要である.大学卒業後は,正規就職ができず,親と同居しながら非正規労働力として就業せざるを得ない女性が生み出されやすい.社会人になると,非制度的な条件が一層重要になる.こうした諸条件の一方で,離家の可能性を持つライフイベントを経験しない場合は,親との同居の意味を積極的に考えること自体が少なく,同居を当然視するという側面もある.結婚後は,同居・別居に対する親子間での異なる意識や,親の居住する郊外住宅地の物理的条件が,親子の同居.別居に及ぼす影響も大きい.郊外第2世代の移動選択に影響を及ぼす条件の多くは郊外の特性を反映したものであり,しかもその特性は,郊外第1世代の行動によって形成されたものであることが少なくない.

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