地理学評論
Online ISSN : 2185-1727
Print ISSN : 1347-9555
ISSN-L : 1347-9555
宗教施設と社会集団との相互関係とその変化-福井県嶺北の寺院・道場の事例から
藤村 健一
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 78 巻 6 号 p. 369-386

詳細
抄録

本稿では,福井県嶺北地方の3集落における寺院・道場を事例として,施設が形成され,位置づけられ,逆に施設がそれをめぐる社会集団に影響を与える相互関係を動態的に分析する.寺院・道場と社会集団との相互関係は,以下の構図を示す.まず,社会集団により寺院・道場の形成や位置づけが行われ,形成された寺院・道場の存在が,社会集団の紐帯を強化する.これにより,寺院・道場と社会集団とが相互に支えあう関係の枠組が半ば固定化される.ところが,世俗化などの集落内外の変化や動向によって,寺院・道場を支える社会集団に変化が生じると,再編成された社会集団により再度,寺院・道場の形成や位置づけがなされる.さらに,こうした寺院・道場の存在が社会集団の紐帯を強化する.このような共通の構図の枠内で,主に施設の制度的な位置づけやそれを支える社会集団の性格の違いによって,3集落の寺院・道場と社会集団との相互関係に差異が生じている.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
次の記事
feedback
Top