地理学評論
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上越国境山地における積雪の長期変動-平ヶ岳の植生変化に関連して
安田 正次沖津 進
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2006 年 79 巻 10 号 p. 503-515

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抄録

近年,上越国境山岳域で積雪量が減少しているという報告がなされている.この地域中央にある平ヶ岳では積雪量の減少によると考えられる植生の変化が確認されている.しかし,この地域では気象観測がほとんど行われていなかったため,積雪量の経年的変動は明らかになっていない.そこで,平ヶ岳における過去から現在に至る積雪量の変動を,低標高域の観測点の観測記録より推測した.その結果,平ヶ岳における積雪量は長期的に減少傾向にあることが明らかとなった.積雪量変動の要因を各気象要素から検討した結果,各年の積雪量は日本付近における冬型気圧配置の出現頻度に応じて増減していることが明らかとなった.長期的には冬型気圧配置出現頻度は漸増しているが,現実には積雪は減少傾向にある.この原因として冬期の気温が上昇傾向にあることが挙げられた.そして,気温だけでなく,上空の寒気の温度も上昇していることが明らかとなったド以上より,積雪量が減少しているのは,冬期の気温および上空の寒気の温度が上昇しているためであると考えられた.

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