地理学評論
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石川三四郎におけるエリゼ・ルクリュの思想-その受容と差異
野澤 秀樹
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2006 年 79 巻 14 号 p. 837-856

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抄録

石川三四郎は日本を代表するアナ-キストの一人である.「土民哲学」,「歴史哲学」にその思想的特徴がある.石川の思想形成に大きく関わった一人として19世紀フランス最大の地理学者といわれるエリゼ・ルクリュがいる.ルクリュはカール・リッタ-の弟子として,「地と人」の統一思想のもとに『新世界地理』全19巻を著わす一方,パリ・コミューンに参加するなどアナ-キズムの理論的指導者としても活躍した.その思想のもとに書かれた『人間と大地(地人論)』全6巻は,石川に強く影響を与えた.石川とルクリュは,「世界観」,「宇宙観」を共有していたが,世界,宇宙における人間をどのように見るかの人間観に差異があった.石川は,そこに人間の無常を感じ,虚無観,厭世観を抱いていた.石川の内省的・求道的な個人主義的傾向,反文明,反科学の歴史哲学は,それに由来する.一方エリゼ・ルクリュは,微小,泡沫な人間ゆえに連帯を説き,そこに「進歩」と「希望」を託していた.

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