近年, 日本の製造業は, 技術集約・知識集約型の生産システムへと変化しており, この傾向は大都市圏外に立地する中小製造業へも波及しつつある. 本稿は, 長野県諏訪地域を事例に, 変化の先進事例である試作開発型中小企業について,「知識・学習」に着目しながら, その生産および技術的存立基盤を明らかにすることを目的とした. その結果, 知識・情報の収集と習得・創造によって構成される技術学習が, 試作開発型中小企業に対して, 技術的な陶冶をもたらすと同時に, 成長の基盤を与えたことが明らかとなった. また, 技術学習に関する知識は, 機械加工に関わる暗黙知が中心であり, それらめ知識は諏訪地域内の同業者からもたらされる. これらの暗黙知が, 域内に立地する関係主体間に共有されることで, 知識を基盤とした生産体系が構築されている.