地理学評論
Online ISSN : 2185-1727
Print ISSN : 1347-9555
ISSN-L : 1347-9555
オルソ化航空写真の年代間比較による山地湿原の植生変化の検出
安田 正次大丸 裕武沖津 進
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 80 巻 13 号 p. 842-856

詳細
抄録

近年, 群馬県と新潟県の境にある平ヶ岳頂上部の湿原が縮小しているとの報告がある. そこで, 平ヶ岳湿原の面積の変化を航空写真より検出した. 航空写真補正用ソフトおよびGISソフトを用い, 航空写真をオルソ画像化して歪みを取り除き, 面積の算出を行った. その結果, 1971年から2004年までの33年間で湿原面積は10%縮小していた. 湿原が顕著に縮小している部分において植生調査を行った結果, 湿原内部ではハイマツを中心としたパッチ状の群落が侵入し, 面積の変化が大きい湿原縁部ではチシマザサが優占する群落が侵入していた. ハイマツとチシマザサの湿原への侵入の様子とその生態的特性を検討したところ, ハイマツは湿原へ先駆的に侵入して植生変化のきっかけとなり, 面積の変化にはチシマザサがより大きく寄与していた. こうした植生の変化は, 湿原の生成, 維持に関わっている積雪量が減少したことが原因であると考えられた.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top