地理学評論
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大都市機械工業地域における新規取引連関の形成過程 -東京都板橋区の中小企業を事例として-
丸山 美沙子
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2007 年 80 巻 3 号 p. 121-137

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抄録

1990年代以降, 産業集積地の優位性が再認識されてきた. この時期の研究の重要な視点として「企業間における新たな連関形成の重要性」が指摘できるが, その際に企業がとる方法など,連関の形成過程については具体的解明に至っていない. そこで本研究では, 東京都板橋区の中小企業を対象とし, 聞取り調査に基づいて新規取引連関の形成過程の解明を試みた. 本研究を通じて, 最も重要な新規取引連関の形成方法は「知人による紹介」であることが示された. 企業は紹介者を介して新規取引相手の情報を収集し, 新規取引に伴う取引費用や技術的・金銭的リスクを軽減している. 企業と紹介者は, 同一協力会への所属, 下請仲間, プライベートな付合いがある場合が多く, 信頼関係にある. 信頼関係は同一組織への参加により, 互いの技術力や人柄を知る機会を得ることで形成される. したがって, 新規取引連関の形成には現在までの企業間関係が大きく関わっている.

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