2008 年 81 巻 7 号 p. 551-570
本稿は, 広島県三次市を事例に中山間地域の高齢者を取りまくサポート源に対するニーズ (サポートニーズ) を検討し, 既存のサポート源の機能的有効性と住民参加の地域福祉活動の活用可能性を考察した. 中山間地域の高齢者は同居家族や別居子といった家族からサポートを得られにくい状況にあるが, それを補完するために近隣者に対してサポートニーズを高めていることが判明した. しかし, 近隣者に対するそれは集落間で差異があることなどから, サポートニーズが近隣者の減少と高齢化によって必ずしも充足されていないことが示された. 住民参加の地域福祉活動は, このような既存のサポート源の空洞化を補完する新しいサポート源として期待される. ただし, それは近隣者に対するサポートニーズを充足する機能を有しているが, 運営ジステムや空間的活動範囲から生じる制約により部分的な補完にとどまる. 集落の限界化が進む中で地域福祉活動を活用しつつ, 高齢者の日常生活に近接するようサポート源を配置することが課題である.