日本地熱学会誌
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論文
多孔質内における固体の沈殿に及ぼす溶液のpHと懸濁物質の影響
トゥサラ ローレン糸井 龍一山城 理恵福田 大輔川原 義隆
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2015 年 37 巻 4 号 p. 143-152

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抄録

地熱熱水は貯留層温度,pH,貯留層岩石成分の影響を受け複雑な組成を有し,これらの特性は地表設備ならびに地下の貯留層において生じるシリカの沈殿に様々な影響を及ぼしている。本研究では地熱貯留層において熱水中の懸濁物質および熱水pH がシリカの沈殿に及ぼす影響を明らかにする目的で,アモルファスシリカに対する飽和比が2.5 の人工熱水を作成し,熱水中の懸濁物質濃度(0, 0.1, 1.0ppm)およびpH(pH8, pH5.5)を変えて人工熱水を多孔質層に流量一定および温度一定(80℃)条件下で供給する実験を行った。長さ5cm,内径4mm のガラス管に石英砂を充填し、5 本直列に接続して全長25cm の多孔質層を作成した。また,懸濁物質としてベントナイトを使用した。実験終了後は,多孔質層内の石英砂を取り出し,SEM による沈殿物の形状観察を行った。その結果,懸濁物質の濃度が高くなると多孔質層の平均浸透率が大きく低下するが,pH が低くなるとその低下速度が緩和されることを明らかにした。また,SEM 観察により石英砂表面の沈殿物が多いほど浸透率が低下していることがわかった。

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© 2015 日本地熱学会
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