日本地熱学会誌
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論文
Mg2+ が誘起するシリカ系スケール析出反応の熱力学的解析
盛田 元彰後藤 優介元田 慎一藤野 敏雄
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2017 年 39 巻 4 号 p. 191-201

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抄録

小浜温泉バイナリー発電所において付着したスケール中の鉱物相を組織解析した。小浜温泉の温泉水における炭酸塩スケールとシリカ系スケールの析出傾向を熱力学的に解析した。スケール中の鉱物相と比較した結果,非晶質シリカ系スケールの析出を予測するためには,非晶質シリカだけでなくMg2+ の影響を考慮した非晶質マグネシウムシリケートについても解析する必要があった。一方,炭酸塩スケールの形成にはMg2+ の影響はほとんど見られなかった。その解析手法を用いてスケール付着を抑制する地熱流体の輸送・熱交換の方法について考察し,非晶質マグネシウムシリケートの付着が問題となりうる熱水の化学組成を検討した。イオン強度が0.1-0.2 程度の地熱熱水では,pH が9 以上になると非晶質シリカは溶解傾向にあっても1 ppm オーダーのMg2+ によって非晶質マグネシウムシリケートが析出するリスクがあった。地熱熱水の温度が100˚C 近傍では非晶質マグネシウムシリケートの析出傾向は大きく,75˚C 近傍で熱水運用することにより大幅にそのリスクが低減されることが示唆された。

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© 2017 日本地熱学会
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