地熱井から過熱蒸気が生産されるメカニズムは二つある。一つは,地熱貯留層内の微細き裂内に存在する流動性のない熱水の沸騰により生じた蒸気が,き裂中を流動する過程で過熱蒸気となって坑井内に流入する場合である(メカニズム1)。もう一つは,気液二相流体が坑井周囲のインフロー領域を流動する過程で継続的に沸騰して液相が消滅し,過熱蒸気となって坑井内に流入する場合である(メカニズム2)。メカニズム1はミクロ的視点である一方メカニズム2はマクロ的視点であるが,両者の最大の違いは気液二相流体の流動の有無である。過熱蒸気中のHClガス発生に関与しているのはメカニズム1である。過熱蒸気生産のメカニズムはTruesdell and White(1973)やGrant(1979)により述べられたが,その後理解が進んだ相対浸透率の観点から説明を加えることが望まれる。また,これら二つメカニズムの相互関係や熱力学過程の違いについては述べられたことはない。本稿では,これらの点を地熱貯留層工学的観点で検討の上,整理して述べる。