日本地熱学会誌
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インドネシア東部フローレス島マタロコ地熱地域における坑井カッティングスの熱水変質より推定される岩石圧的に被圧された蒸気卓越型貯留層の粘土質帽岩
Asnawir NASUTION谷口 政碩菊地 恒夫村岡 洋文
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2003 年 25 巻 3 号 p. 193-210

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抄録

フローレス島マタロコ地域MT-1号井のカッティングスをX線解析した結果,変質帯は浅部からカオリナイト-α-クリストバライト帯(I帯),ゼオライト帯(II帯)及びカオリナイト帯(III帯)に分帯され,II帯はヒューランダイト帯(IIa帯),ローモンタイト帯(IIb帯)及びワイラカイト帯(IIc帯)に細分される。ゼオライトの相平衡とカオリナイト結晶度指数から推定される結晶化過程の地下温度は,静水圧沸騰曲線を超えて急上昇し,深度約180mで236℃に達する。この深度が水の2相分離曲線の最大エンタルピー点を表し,下部の蒸気卓越型貯留層と上部の蒸気凝縮帯とを分けていたらしい。蒸気凝縮帯の厚さは一般に360m程度であるが,本地域では岩石圧的被圧によりその半分であった。II帯の鉱物生成が不透水帯をつくり,蒸気卓越型貯留層に過剰な熱供給が続いた結果,岩石圧的被圧帽岩が出現した。現在,この岩石圧的被圧は解消されている。

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