体操研究
Online ISSN : 1883-5872
ISSN-L : 1883-5872
研究資料
「体操の糸」を紐解く
―我が国の体操事情―
佐原 龍誌
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2009 年 6 巻 p. 1-9

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抄録

体操とは、その文字が示すように「体」と「操る」という語が合わされてできた言葉である.しかし、これだけでは体を「誰が」あるいは「何が」操るのか、といった主語が見当らない.そこで、本発表のテーマを「体操の糸」を紐解く、としたのはそうした我々の身体を操る主体は「誰か」「何か」を問うことによって、今後の「体操像」をおぼろげながらでも描けるのではないか、といった淡い期待を込めた試みなのである. そのためには、まず体操の歴史的変遷過程をたどることで、そこに見え隠れする「一本の糸」を手繰り寄せてみれば、何かが見えてくるのかもしれない.それとも「体操の糸」は絡まっているのかもしれない.であるならば、時間をかけ根気よくほどいていくしかない.そして「一本の糸」にすれば良い.そうした思いの丈が少しでも伝われば、という願いから若干の提案も試みてみた.以下のような流れで話を進めていきたいと思っている.
・はじめに(問題の設定) - 改めて体操を問うことの意味と意義について
・我が国における体操の系譜 - 体操以前から現代までの流れを社会的背景との関わりから眺めていきたい
・グーツムーツの出発点 - 我が国の意図的、体系的な体操の原点は「ドイツ体操」であり、そのはじまりはグーツムーツにたどりつく.しかも、彼は「古代ギリシア」を端緒としながら、その時代に行われていたギムナスティケーを反映した形で、ギムナスティークを形成する.古代ギリシア世界に思いを馳せることによって、そこに見えてくる古くて新しい問題をカロス(美)とアガトス(善)の思想を手がかりとして眺めてみたいと思っている.
・まとめ - 現代という時代感覚から、何が求められているのかを問いつつ、「発想の転換」を軸に「主体操」の提案を試みるものである.

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© 2009 日本体操学会
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