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キラルなα,β-不飽和イミド1にNaHMDS存在下、TBDMSClを反応させると、ケテンシリル-N,O-アセタール2が単一異性体として得られた。Lewis酸存在下、2と種々のカルボニル化合物とのビニロガス向山アルドール反応を試みた。いずれの場合も反応はγ位でのみ進行し、特にLewis酸としてTiCl4を用いると高い立体選択性で目的の付加体を収率よく与えることを見出した。本反応では、生成するイミド3のγ位およびδ位に不斉が導入されるが、このような遠隔不斉誘導は現在まで行われたことがなく、新しいタイプの不斉合成反応を確立したことになる。また本反応の生成物は、ポリケチド類によく見られるα-アンチメチルホモアリルアルコール構造を有している。特に、sphingolipid合成阻害剤であるKhafrefungin (4) や抗腫瘍活性をもつTMC-151C (5)といったポリケチド類には、遠隔不斉誘導反応の生成物の部分構造を数ヶ所認めることができる。本発表では、ビニロガス向山アルドール反応の詳細と、これらの生物活性物質合成への応用について述べる。