レプラ
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神經癩に於ける植物性神經の變化
瀧野 増市櫻井 方策
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1931 年 2 巻 3 号 p. 41-65,161

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抄録
余等は神經癩の8例に於て,其の植物性神經系統並に末梢神經を組織學的に檢索し,既に余等の1人なる瀧野が得たる結節癩に於ける所見と相比較觀察して次の結論に達せり。
(研究方法はヘマトキシリンヱオジン染色,ワンギーソン氏染色,各種脂肪染色,癩菌染色等の他に神經染色に特に注意し,瀧野の考案せるビルショウスキー氏變法にて癩菌と神經變性の關係を明らかにするに努めたり。
1. 神經癩に於ては,結節癩に比し,交感神經節,迷走神經節及び末梢神經に癩菌を證明すること遙かに稀なり。
2. 神經癩に於ても,交感神經節と迷走神經との聞に介在するアナストモウゼ(Anastomose)に,癩菌及び細胞浸潤を證明せり。既に瀧野は,此のアナストモウゼが,癩菌を植物性神經中樞に傳播する1傳播經路なることを報告せり。且つ興味あることは此のアナキストモウゼの左右の相違にして,篠崎氏最近の研究に依ると,右側が左側に比し此のアナストモウゼ多し。此の事實は,此のアナストモウゼに屡々癩菌並に細胞浸潤を證明せる事と相俟つて,癩に於て興味ある,しかも未だ充分に釋明されざれし,一般に右側迷走神經肥大の左側のそれに比し強きことと密接なる關係あることを物語るものなり(此の研究の1部分は昭和4年日本内分泌學界にて報告せり)。
3. 癩菌の分布状態は,神經癩は結節癩と大いに共の趣を異にし,結節癩は癩球形域顯著,癩菌の集合性強し。反之して,神經癩は,一般に瀰漫性に,疎に散在し癩球形成或ひは無きか,或ひは極めて稀なり。此の兩癩型の分布状態の相違は,又共の神經變性機轉の相違と密接なる關係あるものなり。
4. 結節癩に於ては,神經變性は,主として癩菌増殖に因る壓迫と關係あり。神經癩は細胞浸潤高度の炎症部分に於て神經變性も亦最も強し。此際,癩菌は分布疎なる爲め,結節癩の如く神經に對し壓迫作用を及ぼさざるが如し。
5. 神經癩たると,結節癩たるとを問はず,神經の變性に對し,結締織の増殖及び其の壓迫は,少くとも炎症の初期に於ては,癩菌,癩球及び細胞浸潤の如く重要なる役目を演ずるものに非ず。
6. 神經癩に於ても亦,結節癩の如く,シユワン氏細胞の増殖著明ならず,寧ろ細胞浸潤並に癩菌増殖に因る壓迫にて,變性或ひは消失せり。結節癩に於ては,往々癩菌の該細胞内侵入及び該細胞内に於ける癩菌増殖證明せるも,神經癩に於ては極めて稀れなり。
7. 神經細胞のカプセル細胞の癩性炎症に對する態度も亦,兩癩型に於て特にその増殖を示さず。
8. 各種脂肪染色に因る脂肪顆粒は,神經癩に於ては,結節癩に比し極めて少し。尚詳細は獨文原著に譲る(自抄)。
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