抄録
動物の日齢と鼠癩菌感受性の関係については既にマウス及びラットを用いた研究が報告されているが,成績の一致をみることができない.そこでこれに関連した新らたな知見を得るために,ラツトとハムスターについて次のような実験を行なった.
ラットは生後3~6日の哺乳仔と60~70日の成熟鼠およびゴールデン•ハムスターの哺乳仔(10~12日)を用い,鼠癩菌液の腹腔内注射後経時的な剖検(肉眼的並びに組織学的検索)と動物の生存日数を調べ比較検討した.
結果として,ラットの鼠癩病巣の進展は,哺乳仔と成熟猟とでは病巣発現までの静止相(resting Phase)の長さに差がみられた.即ち成熟ラットの静止相期間は菌接種後60~90日であり,哺乳仔では120日であった.発症率は哺乳仔,成熟鼠共に日齢に影響されず,更に動物生存日数も両者に有意差を認めえなかった.また哺乳仔は接種菌量ともなんら関連性を示めさない.
一方ハムスターは,成熟したものに接種した場合にみられる初期相(initial phase)が150日もの長い間存続するのに較べ,哺乳仔では短かく90~120日であった.これは成熟ハムスターの初期病巣の組織細胞中と違い,哺乳仔の細胞では菌の溶解があまり著明ではないからと考える.
ラット及びハムスターにおける鼠癩病巣の進展は,哺乳仔の場合その態度が異り,ラットは長く,ハムスターではわりあいに早い.