日本らい学会雑誌
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らい治療のための免疫賦活物質探索に関する研究
(I) くまざさの分析学的研究
儀同 政一堤 貞衛加庭 信二成田 稔松村 実之助滝谷 昭司福士 勝成
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1980 年 49 巻 1 号 p. 38-46

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抄録

化学療法と併用される免疫賦活療法はらい治療の有力な手段と考えられる。植物由来多糖体に優秀な細胞内浸透性や宿主への緩和な作用が望見され,著者らの一人はくまざさ抽出物服用により癌患者腹水が著減したという臨床経験を提起したので,その免疫賦活作用の有無を調べる前に成分分折を施行した。熱時または冷時に乾燥葉細切片を抽出し,イオン交換クロマトグラフィー,分子鯖過,種々の限外濾過で酸性あるいは分子量の違いにより数種分画に別けた。ガスクロマトグラフィーで,内山らの報告同様多糖構成単糖として溜出の速い方からアラビノーズ,キシローズ,ガラクトーズ,グルコーズを検出し,新知見としてグルコーズは強酸性低分子分画に多く,一方五炭糖は逆に少ない傾向を認め,また多糖に取込まれない遊離単糖としてリボーズ,マンノーズの微量を検出した。抽出液の加温濃縮時にpHが酸性へと変化しがちであるのに冷時濃縮ではこの現象が見られないので,結合硫酸基の存在と加温時遊離を想定し調べたところ,微量の結合硫酸基の存在を推定したが,それが酸性へと傾く原因か,その結合相手が果して糖か否かは明らかでない。結合性燐酸は認められなかった。蛋白構成アミノ酸として16種アミノ酸の構成比が算出された。しかしその糖との結合は明らかでない。炎光分析で著量のカリウムが含まれている事が認められたが,抽出率は低かった。利尿作用との関係が興味深い。

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