日本らい学会雑誌
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Beta-Glucuronidaseに対する微生物由来の結合蛋白質について
その精製,抗体作成ならびに癩腫および他の感染症病巣における局在
松尾 英一小松 明男前川 傑古野 之洋松下 晃子住石 歩佐々木 紀典Olaf K. Skinsnes
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1994 年 63 巻 2 号 p. 35-46

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抄録

らい菌は,末梢神経やらい細胞に多量に含まれるピアルロン酸を自己に結合させた宿主由来の酵素を用いて分解し,その産物を代謝して増殖すると考えられる。よって本検索ではこの酵素結合蛋白質(β-glucuronidase binding Protein: BGBP)の精製方法,抗体作製並びに感染病巣における局在について検討した。
BGBP精製の原料としては,らい腫から分離された抗酸菌HI-75をピアルロン酸の構成分子であるグルクロン酸とN-アセチグルコサミンを加えた小川培地で培養して用いた。なお,BGBPの分布はらい腫以外にB型肝炎やM. avium-intracellulare (MAI)による感染病巣についても免疫組織学的に検討した。
以上の結果,BGBPの精製については,精製の最終段階で調整用電気泳動を用いる事が最良の方法であり,分子篩クロマトグラフィーは恐らくBGBPが共存する分子と結合する性質を有するため,適さない事が分かった。また,BGBPはらい腫ならびにB型肝炎ウイルスやMAIの感染病巣にも存在する事が分かった。以上は,これらの寄生体もまた,らい菌と類似した方法によって宿主の代謝系を利用する能力を有する事を示唆すると考えられた。

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