日本らい学会雑誌
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らいの長期寛解例における皮膚結合組織の変化
その2 コラーゲン線維と弾性線維の計量的対比
並里 まさ子亀山 孝二矢島 幹久浅野 五朗
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1995 年 64 巻 3 号 p. 220-229

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抄録

長期寛解状態にあるらい患者を対象に,四肢伸側部真皮の厚さ(D)と,真皮内線維成分について対照群と比較検討した。画像解析によるコラーゲン線維(C),弾性線維(E)の計測では,真皮結合組織に占める両線維の割合を計測し,さらにDを乗じて両成分の体積を算出した。また下肢真皮における個々のEの長さも計測し,対照群と比較した。さらに前腕伸側の真皮上層部における弾性線維の増加傾向の有無を,病理組織学的に検討した。
以上より下記の結果を得た。
1 患者群では,上,下肢ともDと両線維の量が著明に低下している。
2 患者群では,上,下肢ともEよりもCの減少が著しい。
3 対照群では,Cに対するEの量比は上肢の方が下肢よりも高値であるが,患者群では,その逆である。
4 対照群下肢では,Dの減少とEのCに対する量比の増加は関連していたが,患者群下肢では,両者の関連がなく,かつEのCに対する量比は全体に高値であった。
5 患者群下肢ではより長いEの出現傾向が見られた。
6 上肢(前腕)真皮上層におけるEの増加傾向は,対照群では大部分に認められたが,患者群では大部分に認められなかった。
以上より,患者皮膚では真皮の菲薄化と線維成分の減少が著しいが,Eの相対的増加傾向があり,EはCより残存しやすいか,産生されやすいと推察された。さらにこのEの相対的増加傾向は,太陽光線照射量の異なる上,下肢についての差はなく,よってその関与は少ないものと考えられた。今回の結果は,らい患者皮膚で,著明なCの増加を特徴とする肥厚性瘢痕やケロイドが生じにくいことと関連すると考えられる。

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