背景:身体活動,座位行動,睡眠(以下,日常生活行動)は相互補完関係にある.日常生活行動(座位行動の中でもスクリーンタイム)と幼児の発育発達や健康状態との間に正の関連を示すエビデンスが蓄積されてきた.欧米を中心とする先行研究により,日常生活行動は家庭の社会経済状況によって格差があることが示唆されている.しかし,日本ではその実態が明らかにされておらず,エビデンスも不十分である.
目的:本研究の目的は,沖縄県における幼児の社会経済状態と身体活動,スクリーンタイム,睡眠との関連を明らかにすることとした.
方法:分析に用いたデータは,幼児の日常生活行動に関する国際比較研究であるSUNRISE studyの一環として収集された横断データである.対象は,沖縄県の都市部の3保育園と非都市部の1保育園に在籍する3,4歳児52名とその保護者(都市部40名,非都市部12名)であった.家庭の社会経済状態の指標は,保護者の学歴とした.身体活動は加速度計(ActiGraph GT3X)を用いて測定した.スクリーンタイムと睡眠時間のデータは,保護者への質問紙調査により収集した.親の学歴と3つの健康行動との関係は,地域,年齢,性別,体格で調整した回帰分析によって分析した.
結果:どの日常生活行動も親の学歴と関連しなかったが,睡眠時間は関連の傾向が認められた.低学歴の親ほど子どもの睡眠時間が短い傾向があった.
結論:本研究は,親の学歴に影響された沖縄県の幼児における睡眠の格差を示唆した.沖縄県は社会経済的に脆弱であり,日本の他の都道府県と比較して経済格差が顕著であることから,これらの知見が日本全国で一貫しているかどうかを判断するためには,さらなる研究が必要である.