Health and Behavior Sciences
Online ISSN : 2434-7132
Print ISSN : 1348-0898
原著論文
スピーチに伴う生理的反応と主観的緊張感および指標間関連について
政本 香市川 優一郎日高 一誠依田 麻子
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 2 巻 1 号 p. 27-34

詳細
抄録

 本研究の目的は、スピーチ課題実施時における生理的反応および主観的緊張感について調べるとともに、各指標間の関連性についても検討を行うことであった。生理指標にはECG測定による心電図R-R間隔と、サーモグラフィによる手指部皮膚温を採用した。主観的緊張感の測定には、リラクセーション尺度の身体的緊張尺度および認知的緊張尺度を採用した。25名の実験参加者が本研究に参加した。

 結果は以下に示す通りであった。まず、予期時において、主観的緊張感の高まりと手指部皮膚温の低下がみられた。次に、スピーチ課題時には身体的緊張尺度、認知的緊張尺度および手指部皮膚温の各指標における値の変化が最大値を示すのに加え、心電図R-R間隔の短縮が確認された。スピーチ課題後の安静条件では、身体的緊張感、認知的緊張感および心電図R-R間隔はほぼベースライン値まで回復を見せるが、手指部皮膚温の低下はベースライン値までの回復には至らなかった。

 さらに各指標間の関連性について検討したところ、実際にスピーチを行うことで、心電図R-R間隔と手指部皮膚温の反応に関連性がみられ、手指部皮膚温と認知的緊張感においても弱いながら相関が高まることが示唆された。本研究結果から、主観的緊張感および生理的反応はスピーチ課題の実施により喚起されること、実際に生起している生理的反応と主観的な身体への緊張感は必ずしも関連しないことが示唆された。さらに、サーモグラフィによる手指部皮膚温は心電図R-R間隔に比べてより鋭敏な生理指標であり、今後のスピーチ研究に用いる生理指標として有益であることが示唆された。

著者関連情報
© 2003 日本健康行動科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top