抄録
本総論では大きく変貌しつつある慢性GVHDの現状を概説し今後の展望につき考察する。慢性GVHDは同種移植後約40%の患者に発症し再発・生存率と生活の質に大きく関連する晩期合併症である。慢性GVHDに特徴的な臨床所見に基づいたNIH診断基準や重症度判定基準が提唱されて7年が過ぎ,その臨床的有用性が検証されつつある。患者は慢性GVHDを発症すると免疫抑制療法は長期に及び,現在でもステロイド剤が依然として標準治療法であるが長期投与に伴う有害事象も多いため新たな治療法の開発が必要である。慢性GVHDの病態に関する多くの新しい知見に基づいた治療戦略として免疫寛容を促すために制御性T細胞の増殖と維持を図ること,B細胞や自己抗体産生を標的とすること,あるいは組織線維化に至る過程を抑制することなどが挙げられ,分子標的薬や薬物療法以外の治療法の開発・臨床導入の道が開かれている。良くデザインされた前向き臨床試験で有効性が証明された治療こそが新たな標準治療となりうる。