2012 年 1 巻 3 号 p. 66-75
同種造血幹細胞移植に最も適したドナーはHLA適合血縁者であるが,先進国においてそのようなドナーが得られる確率は30%未満にすぎない。そこで,非血縁者間骨髄移植,HLA不適合血縁者間移植,非血縁者間臍帯血移植が開発されてきた。HLA一抗原不適合血縁者間移植は特殊な移植方法を用いなくても実施可能であるが,HLA適合血縁者間移植や遺伝子レベルでHLAが適合した非血縁者間移植よりも若干移植成績が低下する。少量の抗ヒト胸腺細胞抗体(ATG)を併用することで治療成績は改善するかもしれない。これらのドナーが得られない場合にはHLA二抗原以上不適合血縁者間移植や非血縁者間臍帯血移植が考えられる。ATGやアレムツズマブを用いた体内T細胞除去などの移植方法の開発によってHLA二抗原以上不適合血縁者間移植は以前と比較して格段に安全に行うことができるようになっているが,至適な移植方法の選択や臍帯血移植との優劣など,まだ明らかになっていないことも多い。