2021 年 10 巻 1 号 p. 36-47
肝中心静脈閉塞症(veno-occlusive disease,VOD)は類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome,SOS)としても知られており(以下SOS/VOD),造血細胞移植後合併症の1つで,過去には重症の場合は多臓器不全を合併し80%以上の死亡率であった。病態の主座は骨髄破壊的移植前処置による類洞内皮細胞の傷害と破綻による類洞閉塞である。発症に係わるリスク因子に関してはよく知られているが,いまだ有効性の高い予防法,治療法は確立しておらず,唯一デフィブロタイドの予防および治療効果が認められているが十分な効果とは言い難い。また,本稿では遅発性のSOS/VODに対する診断基準と新たに導入された5段階の重症度分類と,海外臨床試験および国内における医師主導治験の結果を含めた現時点の治療法を中心に概説した。