日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
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症例
同種造血幹細胞移植後ヒトヘルペスウイルス6型脳炎の急性期症状の緩和としてステロイドパルス療法の有用性が示唆された2例
藤島 眞澄藤島 直仁道下 吉広奈良 美保亀岡 吉弘吉岡 智子田川 博之高橋 直人廣川 誠澤田 賢一
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2013 年 2 巻 3 号 p. 75-79

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抄録

同種造血幹細胞移植後のhuman herpesvirus 6(HHV-6)脳炎に対してステロイドパルス療法の有用性が示唆された2症例を経験した。骨髄異形成症候群に対する非血縁者間同種骨髄移植症例,および急性骨髄性白血病再発に対する非血縁者間同種臍帯血移植症例で,ともに脳炎発症に先立ちpre-engraftment immunoreaction(PIR)がみられた。抗ウイルス薬(ganciclovir,foscarnet)の投与と並行してステロイドパルス療法を行ったところ意識障害の早期改善が得られたが,それぞれ脳血管障害,重症移植片対宿主病(graft versus host disease,GVHD)によりHHV-6脳炎発症から15 ヵ月後,4 ヵ月後に死亡した。単純ヘルペスウイルス脳炎等に対してはステロイドの有用性が報告されているが,造血幹細胞移植後のHHV-6 脳炎における効果は現時点では不明であり,貴重な症例と考えられた。また,移植後HHV-6 脳炎の長期的予後改善には急性期の治療と,GVHD や感染症などに対する合併症治療も非常に重要と考えられた。

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© 2013 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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