日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
総説
非腫瘍性疾患に対する造血細胞移植
矢部 普正
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2016 年 5 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

 同種造血幹細胞移植(HSCT)は再生不良性貧血,原発性免疫不全症および先天代謝異常などの非腫瘍性疾患に対し,有用な治療法として行われている。非腫瘍性疾患に対するHSCTでは,ドナー選択,移植前処置,GVHD予防など腫瘍性疾患に対するHSCTと共通した治療要素を含みながらも,その目的や方法など詳細な点で異なることが多い。ドナー選択では遺伝性疾患の種類によっては,血縁保因者をドナー候補から除外する必要がある。移植前処置では免疫抑制効果と妊孕能温存などの生活の質(QOL)の両立が求められるが,比較的症例数の多い再生不良性貧血においても,移植前処置が確立されたとはいえず,至適前処置を求めて検討が行われている。非腫瘍性疾患における移植後合併症で最も問題となるのは生着不全と混合キメラであるが,近年では臍帯血移植後の血球減少を主体とした自己免疫疾患が注目されている。

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© 2016 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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