日本造血細胞移植学会雑誌
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活動報告
本邦の同種造血幹細胞移植後長期生存成人患者におけるQuality of Lifeに関する調査研究
大島 久美黒澤 彩子熱田 由子稲本 賢弘谷口 修一山下 卓也
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2018 年 7 巻 3 号 p. 113-117

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抄録

 本邦の同種造血幹細胞移植後長期生存成人患者において,Quality of Life(QOL)に関する横断的調査研究を日本造血細胞移植学会が主導する臨床研究として施行した。対象は,1995年から2009年の間に造血器疾患に対して成人診療科で同種造血幹細胞移植を受け,造血細胞移植登録一元管理プログラム(TRUMP)に報告されている症例のうち,移植時年齢16歳以上かつ調査時年齢20歳以上で,調査時点で移植後3年以上非再発生存している患者であり,47施設の1140例(男性592例,女性548例,年齢中央値51歳,移植後フォローアップ期間の中央値は7.1年)が最終的な解析対象症例となった。解析対象症例と非解析対象症例の1941例との背景因子を比較した結果,非解析対象症例において,末梢血幹細胞移植や臍帯血移植と比較し骨髄移植が多く,非血縁ドナーからの移植が少なく,骨髄破壊的でない移植前処置の使用が少なく,GVHD予防としてシクロスポリンの使用が多い傾向が認められた。研究についての同意説明の機会があった症例1250例のうち,同意を得られなかった症例は34例と少なく,研究期間中に来院されなかったなどの理由で同意説明の機会がなかった症例が不参加症例の大部分を占めた。そのため移植年代の古い症例が不参加であったことが推定され,欠損値の影響も考えられるが,結果の解釈の際に注意が必要である。しかし,本研究のデータは本邦における成人同種移植後長期生存患者のQOLに関する大規模なデータであり,本邦の同種移植後QOLの現状を推定するための重要な結果と考えられる。

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© 2018 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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