2019 年 8 巻 2 号 p. 90-96
本研究は,患者と死別した同胞間造血細胞移植ドナーの語りをライフストーリー法で明らかにし,同胞ドナーの心理的特徴が家族に与える影響を家族システム理論の観点から分析した。A氏(30歳代,男性)は急性白血病の姉に細胞を提供した。移植の過程において姉弟に上下関係が意識され,喧嘩になった事は,両親の感情にも影響を与えた。B氏(40歳代,男性)は急性白血病の兄に細胞を提供した。B氏にとって兄とHLA型が一致したことは,わが子が白血病になる不安を感じることに繋がった。C氏(60歳代,女性)は4姉妹の末子であり,悪性リンパ腫である長女に細胞を提供した。姉妹の良い関係を維持したいC氏は,4姉妹の中で自分がドナーになることが自然であると繰り返し語った。姉妹の良い関係は患者の死後も変わらなかった。同胞間造血細胞移植ドナーおよび家族には長期的な影響があることから,継続した支援が必要であることが示唆された。