抄録
カラヤスデゴケFrullania muscicola(タイ類ヤスデゴケ科)は主に東アジアに分布する茎葉性のタイ類である.本研究ではカラヤスデゴケ(Form A)の葉緑体ゲノム(LC765338)を決定したので報告する.本種の葉緑体ゲノムは全長120,444 bp で,GC含有率が31.9%あり,LSC領域(82,312 bp)とSSC領域(19,792 bp),2つのIR領域(それぞれ9,170 bp)で構成されていた.このゲノムには,タンパク質をコードする遺伝子87個と,tRNA遺伝子29個,rRNA遺伝子4個を含む合計120個の遺伝子がコードされていた.タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列に基づく分子系統解析の結果,カラヤスデゴケとデータベースに葉緑体ゲノムの登録があったカミムラヤスデゴケF. nodulosa(MH064510)の単系統性を強く支持するとともに,クサリゴケ科Lejeuneaceaeとヒメウルシゴケ科Jubulaceaeのクレードとヤスデゴケ科Frullaniaceaeが姉妹群になること,クラマゴケモドキ目Porellalesの単系統性がそれぞれ強く支持された.