弘前医学
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原著
高血圧,糖尿病,血小板機能におけるバゾプレシンV1a受容体の役割
Kazi N Hasan庄司 優杉本 一博蔦谷 昭司保嶋 実
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2007 年 58 巻 1-4 号 p. 35-52

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抄録

 アルギニンバゾプレシン (AVP) は下垂体から分泌されるペプチドホルモンで,V1a受容体 (V1aR) を介して心血管系の制御,グリコーゲン分解,血小板凝集に重要な役割を果たしている.本研究では,V1aR の新たな4個の一塩基多型 (-6951G/A, -4112A/T, -3860T/C, -242C/T) と高血圧症,2型糖尿病と血糖レベル,AVPに対する血小板凝集反応との関連を検討した.対象は,青森県内の高血圧症 365例と健常対照者 255例,2型糖尿病 186例と非糖尿病対照者 188例,健常若年成人 33例である.層別化解析により4多型のうち -6951G/A多型と非肥満者における高血圧との連関が認められた.多変量解析では -6951G/A多型は非肥満者高血圧の独立した危険因子であることが示唆され,高血圧との関連の強いハプロタイプが存在した.2型糖尿病に対しても -6951G/A多型は多変量解析上独立した危険因子と認められ,また,関連の強い2種のハプロタイプ結合が存在した.さらに,健常若年成人における -6951G/A多型の変異型では,野生型のホモよりヘモグロビンA1c が高値であった.一方,AVP による血小板凝集反応の個体差と4個の一塩基多型とのあいだには関連性が認められなかった.以上の結果から,V1aR-6951G/A多型の変異型では,非肥満者高血圧および2型糖尿病の疾患感受性が高い可能性が示唆された.しかし,検討したこれらの V1a受容体遺伝子多型は血小板凝集反応性の遺伝子マーカーにはなりにくいと考えられた.

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© 2007 弘前医学編集委員会
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