弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
弘前医学会例会抄録
<一般演題抄録> 胸部食道癌手術における周術期管理としての ERAS の有用性
室谷 隆裕赤坂 治枝横山 拓史高橋 義也袴田 健一
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 72 巻 1-4 号 p. 97-

詳細
抄録

【はじめに】胸部食道癌手術は頚部、胸部、腹部の3領域に及ぶ手術であり、その侵襲は高度で、術後合併症が多く、術後 ADL、QOL、栄養状態の低下が引き起こされることが多い。近年、術後早期回復を目指した ERAS (enhanced recovery after surgery) など各種プログラムが臨床の現場で広く導入され、その有用性が報告されている。当科では 2013年より ERASプロトコルに基づいた体制を整え、術前呼吸訓練、歯科口腔外科による口腔ケア、術後早期経腸栄養、リハビリテーションと連携した術後早期離床訓練に重点を置き、周術期管理を実践している。そこで、今回 ERAS導入前後の術後成績を比較検討し、ERAS の有用性を評価することを目的とした。
【対象と方法】2009年1月から 2019年12月までの間に食道癌に対して食道亜全摘術、3領域郭清を施行した全 335例を対象とした。ERAS導入前 (2009~2012年) の非ERAS群 (NE群) 174例と ERAS導入後 (2013年~) の ERAS群 (E群) 161例の2群間で背景因子、手術因子、術後合併症、術後3ヶ月時の体重、筋肉量の指標としての腸腰筋面積 (PMI) を比較検討した。
【結果】2群間に背景因子や手術時間、出血量に差は認めず、Clavien-Dindo分類 Grade Ⅲ 以上の術後全合併症は NE/E:75例 (43.1%)/49例 (30.4%) と E群で有意に少なく (p=0.023)、術後呼吸器合併症も NE/E:41例 (23.6%)/23例 (14.3%) (p=0.043) と有意に少なかった。術後3ヶ月時の体重減少率は NE/E:7.8± 5.2%/5.6 ± 6.4% (p=0.045) 、PMI 減少率は NE/E: 12.3 ± 13.3%/6.7 ±14.9% (p=0.021) と術後の体重および筋肉量の減少が有意に抑制されていた。
【結語】ERAS の導入により術後呼吸器合併症や術後の体重減少、筋肉量減少に改善が見られ、ERAS の有用性が示唆された。

著者関連情報
© 2022 弘前医学編集委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top