植生史研究
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千葉県沖ノ島遺跡から出土した縄文時代早期のアサ果実
小林 真生子百原 新沖津 進柳澤 清一岡本 東三
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2008 年 16 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

千葉県館山市の沖ノ島遺跡の縄文時代早期の地層から,アサCannabis sativaの果実が出土した。アサ属とカナムグラ属の果実は似ているため,アサとカラハナソウHumulus lupulus,カナムグラHumulus scandensの果実の形態を記載し同定根拠を示した。カラハナソウ果実は側面観が円形で頂部はハート型もしくは円形に肥厚し,着点にくぼみはなく,大きさはアサよりも小さい。カナムグラ果実は側面観が円形で,頂部はハート形に肥厚し着点にくぼみは見られなかった。沖ノ島遺跡から出土した果実と現生アサ果実は側面観が卵形で着点がわずかに丸くくぼみ,果実先端には丸いこぶがあり,果実サイズも同じだった。そのため,出土果実をアサと同定した。これまでに,福井県にある鳥浜貝塚の縄文時代草創期の堆積物からアサの繊維が見つかっているが,今回見つかったアサ果実は果実化石としては世界最古の産出記録である。鳥浜貝塚から見つかった繊維は国外から持ち込まれた可能性があるが,アサ果実が見つかったことで,アサが縄文時代早期には日本で生育していたことが示唆された。沖ノ島遺跡でアサが栽培利用されていた可能性が考えられる。

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© 2008 日本植生史学会
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