植生史研究
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宇和盆地の花粉分析からみたMIS 15 以降の植生変遷史
守田 益宗須貝 俊彦古澤 明大野 裕記西坂 直樹辻 智大池田 倫治柳田 誠
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2014 年 23 巻 1 号 p. 3-19

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抄録
四国南西部に位置する宇和盆地で採取された深度120 m におよぶUT コアの上部75 mについて花粉分析を行い,上位よりUT-1 ~ UT-43 の局地花粉帯を区分した。これらの花粉帯を,堆積物中に挾在する広域テフラ(AT,Aso-4, Ata, Aso-3, Aso-2, Ata-Th, Kkt, Oda, Hwk, Yfg)の降下年代を基にLR04 の海洋酸素同位体曲線と比較した結果,MIS 15 以降の気候変動にともなう植生変遷を明らかにすることができた。各花粉帯のうち,UT-3 ~ UT-5 はMIS 3 初期~ MIS 5 終末期に,UT-6 はMIS 5.1 に,UT-8 はMIS 6 終末期に,UT-9 ~ UT-15 はMIS 6 に,UT-16はMIS 6/MIS 7 の境界に,UT-17 ~ UT-22a はMIS 7 に,UT-22b ~ UT-24 はMIS 8 に,UT-25 ~ UT-29 はMIS 9 に,UT-30 はMIS 9 初期に,UT-31 とUT-32 は MIS 10 に,UT-33 はMIS 12 に,UT-34 ~ UT-43 はMIS 15 にそれぞれ対比されたが,MIS 11 に対応する花粉帯は欠如していた。氷期に対応する時期にはトウヒ属またはトウヒ属とブナ属,コナラ亜属,クマシデ属などの冷温帯広葉樹が優勢な森林で特徴づけられ,とりわけMIS 8 は過去30 万年間では最も湿潤な氷期であった。一方,間氷期には主にスギからなる森林が成立していた。
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© 2014 日本植生史学会

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