2022 年 30 巻 1 号 p. 5-22
関東平野中央部にある縄文時代早期から晩期の4 遺跡において,詳細な放射性炭素年代の測定と花粉化石群の解析を行い,森林資源管理や植物の栽培が集落の周辺でいつ頃から行われて人為生態系が形成されたのかについて検討した。植物化石群の解析によると,関東平野中央部の4 遺跡の周辺では,落葉広葉樹が縄文時代早期から後期において優占しており,常緑広葉樹は海岸沿いでは混生していたが,海進が及んでいない内陸部では後期後葉以降に拡大した。2 遺跡において,縄文時代早期後葉にクリ花粉が優勢または比較的多く産出し,加えて移入植物のウルシ花粉やヒョウタン種子が出土した。こうした結果から,関東平野中央部では縄文時代早期後葉の約8000 cal BP 以降にクリ林が人為的に形成され,ウルシ林は約7650 cal BP までには作られて維持管理されていたことが示された。こうしたクリ林とウルシ林は縄文時代前期から晩期にも関東平野中央部では継続して形成され維持されていた。