抄録
耐病性関連遺伝子をイネに導入して優良耐病性組換え体系統を作出する目的で, 導入遺伝子の発現制御に使用するCaMV35SプロモーターとマツCab1プロモーターの特性を比較し検討した.CaMV35Sプロモーターは恒常的高発現をすると考えられ, 遺伝子機能の解析等で汎用されている.マツCab1プロモーターは緑葉特異的発現をする.CaMV35Sプロモーターでは遺伝子の発現量は多かったが, 発現量の個体間差が大きく, また個体内では感染に重要な最上位葉での発現が相対的に少なく, 個体の生育が進むと発現が低下する等の問題点が明らかになった.一方, Cab1プロモーターでは発現量は少なかったが, 最上位葉での発現は相対的に最も多かった.CaMV35Sプロモーターの場合には胚乳でも発現したが, Cab1プロモーターでは発現が見られなかった.耐病性関連遺伝子による組換え体では, 発現量が多い場合に植物体に障害を与えることもあり, また不要な遺伝子発現をさせず, 食用器官での発現を防止することも重要である.各プロモーターの発現特性は複雑であり, 実用的組換え体作出の目的では, 導入遺伝子の特性に対応して使用するプロモーターを適切に選択することが重要であると考えられる.