新潟県において2019年8月14日から15日に発生したフェーン現象の影響によるコシヒカリの著しい品質低下に ついて分子生理に基づく解析を試みた.フェーン現象により多発したリング状の白濁部位には亀裂がみられ,デ ンプン顆粒は丸みを帯び隙間が生じた.デンプン分解酵素であるα-アミラーゼの遺伝子発現量は,乳白粒およ び白死米の発生率と正の相関を示し,フェーン現象発生後に増加した.同様に,水ストレスおよび酸化ストレス の応答に関係する遺伝子の発現量が増加した.以上から,フェーン現象により低下する胚乳内の水分量や細胞機 能の維持のため,デンプン分解酵素の発現量を増加させた結果,白未熟粒発生を助長したことが示唆された.