北陸作物学会報
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フェーン現象がコシヒカリ登熟過程の遺伝子発現に及ぼす影響
白矢 武士 丸山 遥太田 沙由理今井 康貴土田 徹
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2021 年 56 巻 p. 45-50

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抄録

新潟県において2019年8月14日から15日に発生したフェーン現象の影響によるコシヒカリの著しい品質低下に ついて分子生理に基づく解析を試みた.フェーン現象により多発したリング状の白濁部位には亀裂がみられ,デ ンプン顆粒は丸みを帯び隙間が生じた.デンプン分解酵素であるα-アミラーゼの遺伝子発現量は,乳白粒およ び白死米の発生率と正の相関を示し,フェーン現象発生後に増加した.同様に,水ストレスおよび酸化ストレス の応答に関係する遺伝子の発現量が増加した.以上から,フェーン現象により低下する胚乳内の水分量や細胞機 能の維持のため,デンプン分解酵素の発現量を増加させた結果,白未熟粒発生を助長したことが示唆された.

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© 2021 北陸作物・育種学会
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