法学ジャーナル
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論説
キャラクターの著作権保護をめぐる考察
日中のキャラクターグッズの現状比較を通して
李 林渓
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2024 年 2024 巻 105 号 p. 55-94

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  • 目  次

    1 はじめに

    2 キャラクターグッズについて

    3 キャラクターグッズの現状

    4 まとめ

1 はじめに

今日のアニメ産業の発展に伴い、キャラクターを活用する方法は多様化している。キャラクターの活用方法といえば、グッズのデザイン、制作、販売が重要な位置を占めるであろう。本稿では、それらキャラクターグッズの現状に関わる日中比較を通して、キャラクターの著作権保護をめぐる考察を行う。

2022年、日本動画協会がまとめた2021年の日本アニメ産業の市場規模(国内と海外の合計)は、20年比13%増の2兆7422億円と、過去最高を更新した。国内市場は、前年比21%増の1兆4288億円であって、そのうちテレビ、映画、ビデオ(DVDなど)、配信の4つの映像流通の合計は3713億円と33%増えた1図表1)。

図表1 ネット配信がアニメ産業の成長を支えている

出所:日経MJ(流通新聞) 2022年12月7日付

このような市場規模は、日本のアニメ産業の繁栄を示しているものだろう。アニメ作品が盛んな国として、ハローキティやコナンなど有名な商業キャラクターも多く、21年度は合計1553キャラクターと10年前から倍増した「ゆるキャラ」も成長している2(日本経済新聞2022年2月6日付)。このような産業の発展に伴い、キャラクターの活用方法はますます多様化し、グッズとしての利用されることはさらに生み出す収益が生んでいる。しかし、その過程で著作権に関する様々な問題が発生することは避けられない。

一方で、2013年以降、中国のアニメ産業の総生産額は成長を続けており、2020年には総生産額が2000億元(約4兆1,628億5,072万173円)以上に達し、今後も産業全体が急速に発展する見込みであるとされている3図表2)。

図表2 2013年−2020年中国動画産業総額

出所:Analysys易観分析 「中国数字経済全景白皮書」動画産業篇 2頁 2021年12月24日

中国製アニメを原作品としたグッズ産業の発展にしても、2021年冬季オリンピックマスコットとして知られている「ビンドゥンドゥン」に代表されるようなキャラクターグッズ産業の期待以上の発展にしても、原作品とそのグッズ産業が強く結びついていることがわかる。

しかし、キャラクターグッズをめぐっては、原作品の著作者と生産者、販売者の間での紛争が避け難い。日本及び中国の各々の国内販売者による国内著作物の侵害事例がある一方で、「クレヨンしんちゃん事件」4((2011)高行終字第1427号)のような国際紛争もあると思われる。

日本のキャラクターに関する有名な判例として「ポパイ・ネクタイ事件」(大阪地裁昭59・2・28判タ536号418頁)がある。代表的な判例として論じられるこの事件については、学界でも様々な意見が提示されている。この事件の最高裁判決をめぐる諸説を整理し、最高裁判決そのものに疑問を投じた論文としての中村稔「キャラクターの保護について」(著作権研究164−218頁)の論文ではいくつかの学説がまとめられている5。そこでは諸説が紹介され、キャラクターそのものの著作権性を中心に議論が展開されている。

キャラクターの商品化やキャラクター自体の著作物性に焦点を当てた論説は数多く存在するが、その多くは有名な判例に通して、法理論または法解釈に関連する学術分野の研究に集中しており、キャラクター商品化に関する実務上の現状を比較・考察した論稿は少ないと考える。本稿は、そのような問題意識にもとに、先行研究とは異なる視点で、まずは判例からのキャラクターの著作権法上の意義を検討し、日本と中国におけるキャラクター商品化に関する実務上の現状を比較・考察し、キャラクターの著作権保護について考えるものである。

2 キャラクターグッズについて

2.1 キャラクター

 ⑴ キャラクターの意味

英語の言葉「character」から変更された外来語「キャラクター」は、今は人々の生活の中でごく普通に使われている言葉である。「キャラクター」の語源は、ギリシャ語から英語を経て、日本語においても「キャラクター」という言葉が使われるようになった。現代では、物語や作品に登場する人物や生物の個性や特徴を表す言葉として広く使われている6

日本では、『広辞苑 第七版』(2018年)によると、「キャラクター」とは、「①性格。人格。個性。キャラ。②小説・映画・演劇・漫画などの登場人物。その役柄。③文字。記号。」と言ってされている。

中国語で上記と同じ表現として使われる言葉に「角色」というものがある。小説や演劇の登場人物を指すこともあれば、ある種の人格全般を指すこともある7。作品に登場するイメージのみを指し、マスコットなどは含まれないため、日本語の「キャラクター」よりも適用範囲が狭いが、日常生活において、キャラクターが様々な方法(グッズなど)で活用される場合はこの言葉に翻訳されることがほとんどである。このことは、日本と中国の文化が、この客観的な概念に対して同じような認識を持っていることを示している。同じような概念であれば、この存在をめぐる比較もしやすくなる。

 ⑵ キャラクターの著作権法上の意義

キャラクターが著作権法で保護される著作物であるかどうかという問題は、学界で継続的に議論されてきた問題である。日本の有名な判例としては、前述した「ポパイ・ネクタイ事件」(大阪地裁昭59・2・28判タ536号418頁)がある。

この事件では、第一審で登場人物の名称を「ポパイ」とする連載漫画の著作権を保有している原告は被告が販売する商品に付されたポパイの図柄は「ポパイ」漫画の複製であり、上記著作権を侵害すると主張し、同商品の差止めを求めて訴訟を提起した8。最高裁は以下のような判決を通して(最高裁平成4年(オ)第1443号事件平成9年7月17日第一小法廷判決)、キャラクターに対する著作権法上の保護を下記のように否定した。

「著作権法上の著作物は、『思想又は感情を創作的に表現したもの』(同法二条一項一号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それそれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。」

① まず、論点の整理として、岡村久道弁護士の著書「著作権法[第5版]」(民事法研究会,2020年)59頁「漫画・アニメーション等とキャラクター」では、キャラクターの著作物性に関する肯定説と否定説という両方の観点がまとめられている。

 「肯定説は、特定のコマを用いたいと思って利用しているわけでないこと等を理由とする。これに対し、前掲ポパイ・ネクタイ事件判決は、キャラクターは具体的表現そのものではなく、それ自体が思想・感情を創作的に表現したものとはいえないとして否定説に立ち、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画では、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たるとする。否定説では、侵害を主張する側の訴訟当事者が、侵害対象として漫画の具体的なコマを特定することの要否という点が議論されている。」

「ポパイ・ネクタイ事件」の判決を賛成、すなわちキャラクターの著作物性に対して否定説に立つものをしては、以下のような見解がある。

② 中山信弘教授の著書「著作権法[第3版]」(有斐閣,2020)218頁「キャラクター(商品化権)」の内容は次の通り書き起こされている。

「キャラクターとは、小説や漫画等に登場する人物や動物等の姿態、容貌、名称、役柄等の総称を指し、小説や漫画等の具体的表現から昇華した抽象的なイメージである。キャラクターそのものはアイディアレベルの存在であり、具体的な表現を保護する著作権法では保護されないという点については、ほぼ判例・学説上の支持を得ている。」

中山教授は、キャラクターというについては、「抽象的なイメージ」であるというの見解である。

③ 高林龍教授の著書「標準 著作権法[第4版]」(有斐閣,2019)

101頁−102頁にはキャラクターに対して次の通り記述している。

「キャラクターという単語は、国語辞典では、劇、小説、漫画などの登場人物、配役などのこととされているが、著作権法で検討すべきキャラクターは、漫画やアニメなどで視覚的に表現されている人物や動物などの主体(ファンシフル・キャラクター)と、言語の著作物である文学作品に登場する人物や動物などの主体(フィクショナル・キャラクター)に分けられる。さらに、分類するならば、視覚的に表現される人物や動物などの主体も、ポパイやサザエさんのような連載漫画に登場するキャラクターと、ハロー・キティやけろけろけろっぴのように商品化のために単体で創作される人物や動物などの主体(オリジナル・キャラクター)もある。

 最一小判平9・7・17民集51・6・2714(ポパイネクタイ事件)は、連載漫画に登場するキャラクター(ファンシフル・キャラクター)に関する事案であるが、『キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができない』として、『当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない』と判示した。著作権法は思想または感情から顕現した具体的な表現を保護するものであって、その表現が醸し出す雰囲気やシチュエーションなどを保護するものではない。画風や作風が著作権の保護対象とならないのも、同様の立場から説明できるから、キャラクターを、表現された著作物とは別の保護されるべき権利と構成することができないことは、物権法定主義からも当然のことというべきである。評者によってキャラクターの定義が異なるが、ポパイネクタイ事件最一小判は、そもそも思想または感情の創作的表現とはいえない抽象的概念をキャラクターと定義したうえで、その著作物性を否定したものであって、いわば当然の判示である。」

「ポパイネクタイ事件最一小判の事案においても、訴訟の対象となっている水兵らしい人物の絵柄が、当初公表されたポパイの漫画の翻案であるとすることは、公表以来長年連載されているポパイから醸成されてきた、水兵であるポパイの拡大されているイメージをかなり取り込まなければ、困難な事案である。このように、通常の単品として創作される視覚的な著作物の場合よりも広く同一性を認めることができる囲にある登場人物の表現を『キャラクター』と呼ぶのならば、「これは著作権の保護範囲である翻案権侵害が成立する範囲が広く解されるに至った登場人物の視覚的な表現対象の呼び名であって、ポパイネクタイ事件最一小判がキャラクターと定義した『表現対象物を離れた別個の権利客体』とは異なるものである。

 キャラクターという言葉で何を定義するかを確定しないままに論ずることは危険であることを知っておかなければならない。」と述べている。

しかしながら、最高裁判決からから生じた「キャラクター」の著作物性に関しては以下のような異なる見解もある。

④ 中村稔弁護士「キャラクターの保護について」(著作権研究39)165頁

「これらの登場人物はつねに具体的表現であって、抽象的な概念ではない。」

「社会的に広く受け入れられ、使用されている『キャラクター』は、キャラクター商品におけるキャラクターと同じく、具体的に表現される小説・漫画等の登場人物であって、抽象的な概念ではない。

 本件判決はポパイという『キャラクター』をネクタイ等の商品に用いた場合に関する事案であるから、社会常識にしたがえば、ポパイという『キャラクター』は演劇・小説・漫画・アニメなどの登場人物という具体的に表現されたものを意味すると解されるのであって、ポパイ・ネクタイ事件最高裁判決の判示は社会常識から遊離した判断としか言いようがない。」と判決を違反している。

⑤ 辰巳直彦教授「連載漫画は原作原稿の二次的著作物であるとした事例」民商法雑誌第127巻1号(2002年10月)<判例紹介>115頁

「この一体不可分性の思考も、先述のポパイ著作権事件の上告審最一判平成九・七・一七を契機に崩れつつあるように考える。この最高裁判決は、確かに、⑴ 漫画において一定の名称、容貌、役割等の特徴を有するものとして反復して描かれているキャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって著作物とはいえないと判示する。しかし、⑵ 連載漫画において後続する漫画は先行する漫画の二次的著作物とし、二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じないとする。連載漫画において後続する漫画は先行する漫画の二次的著作物かは問題であるが、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて著作権が生じるという考えは、既にそこに一体不可分性の考えとは異なった要素分析的な思考が入り込んでいることが看取できるように思われる。これを前提に、最高裁判決は、⑶ 後続の漫画に登場する人物が、先行する漫画に登場する人物と同一であると認められる限り、当該登場人物については、最初に掲載された漫画の著作権の保護期間によるべきであるとして、最初の掲載時である昭和四年(一九二九年)の翌年である昭和五年(一九三〇年)一月一日を起算日とし、五〇年に三七九四日を戦時加算し、平成二年五月二一日を経過した時点で存続期間が満了したものと判示した。ここでも漫画の絵画表現で、しかも登場人物に焦点を当てて、その保護を問題にしている点で、一体不可分的な思考から要素分析的な思考に移行していることが伺われる。しかも、この判決は漫画のキャラクターの著作物性を否定しながら、個別具体的な漫画やそのコマを超えた漫画の登場人物を、漫画の他の要素から切り離して著作権による保護を問題にしていることからも、結論的には、その前言に反して漫画のキャラクタ一の著作物性を認めるのと同等の結果となっていると見てよい。」

中村稔弁護士と辰巳直彦教授の意見と同様に、筆者も本事件の判決に対して異論を有している。著作権法の2条1項1号によれば、著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものである」。この規定について、主観的な要件は創作性に対する要求と言えるし、客観的な要件はこのものを表現したのかどうかということである。著作権法学の分野におけるの「キャラクター」に関する議論も、多様な意味をそれぞれに検討するのではなく、事実に則した具体的な意味に基づいて行われるべきだと思う。つまり前述の『広辞苑 第七版』で「キャラクター」と言う言葉の解釈に対して、第1番目の概念である、①性格。人格。個性。キャラ。という抽象的な概念ではなく、実際にはキャラクターを活用する場合での第2番目の小説・映画・演劇・漫画などの登場人物の意味を指すべきだ。例えば、「キャラクター商品」という言葉も『広辞苑 第七版』によると、「販売を促進するため、テレビや漫画などの登場人物やそのシンボルマークなどを付した商品」と記載されている。このことからも明らかなように、実際の「キャラクター」は語彙解釈における、前述の第②番目の意味である。つまり「登場人物」という意味である。

すなわち、本事件の判決に代表としての否定説に立ちしている観点は、キャラクター自体が思想・感情を創作的に表現したものとはいえなくて、権利侵害を主張する当事者は必ず原作品の具体的なコマを特定しなければならないことである。しかし、この学説は、現実の著作物、特に漫画やアニメのような視覚的に表現される著作物の権利保護にはそぐわないと思っている。このような著作物は、キャラクター、人物関係、ストーリー、時代設定など、様々な要素から構成されている。この作品は著作物性があるのは、その内容に著作権で保護されうる要素が含まれているからにほかならない。作品を全体としてのみ扱うと、内容自体が著作物として無視されてしまう可能性があるだろう。では以下では、キャラクターグッズについて、検討したい。

2.2 キャラクターグッズ

 ⑴ キャラクターの商品化

キャラクターグッズは本来、英語で「Character」+「Goods」されるものである意味である。要するに、キャラクターグッズはキャラクターの一つの活用方法である。松田俊治氏は講演中で、このキャラクターをグッズとしての利用を、「伝統的なキャラクターの利用」、すなわち「商品化」と総括している9

キャラクター業界の発展、消費水準指数の上昇、並び消費者の商品に対する需要の増大と格上げに伴い、現在では様々な商品が生活のあらゆる場面に入り込んでいる。また、インダストリアルデザインの継続的な発展もキャラクターグッズの発展にもつながっている。具体的には、種類の数やイノベーションの増加に現れている。例えば、有名なサンリオのハローキティは、シールや文房具、ぬいぐるみといった定番商品から、日常生活で使用するバンドエイドやお薬手帳、コロナ時代に入ってからデザインされた抗菌マスクケースや手指消毒用スプレー、及びお風呂のためのバスボールなど、様々なグッズへと進化している。

中国万和証券会社(VANHO SECURITIES)は、2020年に発表したキャラクターグッズ産業に関する報告書で、同産業は原作品、グッズ産業、消費者という伝統的な上下の関係ではもはやなく、先に原作品と消費者の関係が形成されてから、グッズ産業が関与するという三角の構造になっていると言及している10

図表3 原作品、キャラクターグッズ、消費者との関係

出所:万和証券研究所「従美日両国看文娯IP授権周辺行業発展」4頁

すなわち、原作品の権利者は、書籍、映画、コミックなど、様々な形で著作物をまずは消費者に提供し、その後著作権の使用許可をキャラクターグッズ関連企業に与え、それらの企業は様々な種類の商品を消費者に販売するという構造である。著作権に関連する問題は、上記の構造における関係の第一階層、すなわち、原作品の権利者とグッズ関連企業との間の権利許可をめぐるところで生じる可能性が高いと思われている。

 ⑵ キャラクターグッズをめぐる中国の判例

 ① 代表的な民事事件と刑事事件

中国においても、キャラクターグッズをめぐる著作権侵害事件のほとんどは、原作品の権利者と権利許可をもらってないグッズ関連企業との間で起きている。有名な民事事件といえば、「哪吒」(Ne Zha)(図表4)という中国国内に非常に流行っているアニメ人物を巡って、原作品の権利者と許可をもらっていないグッズ生産企業の間の一連の事件がある。2019年、ノースリーブの赤いウエストコートを着て、目の下に黒クマを作り、ピルヘッドをして、悪い笑みを浮かべた子供「哪吒」は、瞬く間に中国国内で人気キャラクターになった。古い物語中のキャラクターのイメージを覆したアニメ映画「哪吒之魔童降世」とともに、興行収入50億元以上(約1,038億円)という中国映画史に残る奇跡を起こし、同時に魔法少年哪吒をイメージしたキャラクターグッズのブームをもたらした。(浙江法制報2021年11月30日付)

図表4 「哪吒」の人物設定

出所:百度百科

しかし、これらのグッズの多くは著作者の許諾を得ていない。それに対して、北京光線影業株式会社(以下「光線影業」という)が「哪吒」作品の著作権を侵害したとして、多数の子供服製造・販売業者を訴えた。そして、濱州経済技術開発区人民法院裁判所は2021年6月25日に判決を出した。((2021)魯1691民初668号等)

本事件の事実について、光線影業は、3Dアニメーション映画「哪吒之魔童降世」の登場人物の一人である「哪吒」の美術作品の著作者は同社であり、第三者が許可なく著作物を使用することは許されないと主張してきたが、多くの子供服メーカーが無許可で「哪吒」の画像を子供服に印刷して販売していたこと、また多くの販売業者が侵害された子供服を販売していたことが判明した。その後、光線影業は裁判所に提訴し、前述の子供服業者に対し、権利侵害行為の差し止めと、経済的損失および権利の保護に要した費用として10万元から30万元の賠償金の支払いを求めたのである。

裁判所は、被告らが光線影業の権利許可を得ずに子供服の製作に「哪吒」の図柄を使用したり、子供服を販売したりしたことは、光線影業の「哪吒」というキャラクターの美術作品に対する著作権を侵害するものであり、被告らは侵害行為の停止と発生した損害の賠償責任を負うべきであるとした。

一方で、中国の近年の著作権に関する判例では、民事事件の以外に刑事事件も存在している。有名な判例として、ディズニーの「Frozen」(「アナと雪の女王」)という作品を巡って、無許可でエルサ、アナ、オラフなど「アナと雪の女王」中のキャラクターが印刷されたスーツケースを大量に作って販売した者に対する著作権侵害事件(刑事事件)がある。((2018)沪03刑初32号)

「アナと雪の女王」は2013年にディズニーが製作し、大成功を収めたアニメーション映画である。ディズニーは、これらのキャラクターの商品の発売にも力を入れており、エルサ、アナ、オラフなどのキャラクターの図柄が印刷されたポーチやエコバッグなど、日常生活に密着したグッズを販売している。しかし、中国の一部の企業は無断でこれらのキャラクターの図柄を使用し、グッズを製造、販売してきた。

2017年8月上海市公安局は本件のスーツケースに印刷された模様はディズニー映画「アナと雪の女王」に登場するエルサ、アナ、オラフなどのキャラクターと実質的に同一であるとして、2015年から2017年まで、合計2967個のスーツケースの製造を行った被告を逮捕した。

本件において、裁判所は、「被告たちは営利を目的として著作者の許諾を得ずに、著作権を侵害するスーツケースを共同製作し、販売することを他人に委託されたものであり、その行為は著作権侵害罪に該当し、法に基づき処罰されるべきである」と判示した。中国の著作権侵害罪は刑法217条にある、しかし、本件において被告らは当該キャラクターの図柄について、美術作品であると主張した。美術作品であれば、中国刑法217条1項の『その他の著作物』の範囲に必ずしも含まれず、著作権侵害罪は成立しない可能性がある。

中国刑法217条1項は次の通り記載している11

第217条「営利を目的とし、次に掲げる著作権侵害行為の一つを実施し、違法所得金額が比較的大きいまたはその他の情状が重大である場合は、3年以下の有期懲役または拘役に処し、罰金を併科又は単科する。違法所得金額が巨額である場合またはその他の情状がきわめて重大である場合は、3年以上7年以下の有期懲役に処し、罰金を併科する。」

㈠ 著作権者の許諾を得ずに、その文字作品、音楽、映画、テレビ、ビデオ作品、コンピュータソフトウェア及びその他の作品を複製発行した場合。

裁判所は被告主張に対して、「本件キャラクターが他の著作物に属するか否かについて、調査の結果、本件のキャラクターエルサ、アナ、オラフなどは、いずれもディズニー発行のアニメーション映画『アナと雪の女王』に登場するものであり、アニメ映画の関連美術作品に属する。『中華人民共和国著作権法実施条例』第2条によると、著作権法にいう著作物とは、文化、芸術、科学の分野における知的成果で、創作性があり、有形形式で複製できるものを指す。中国著作権法の関連規定によると、著作物の範囲には、書面の著作物、口承の著作物、音楽、演劇、オペラ、舞踊、雑技作品、美術作品、建築作品が含まれる……中華人民共和国刑法第217条第1項には「美術作品」が明記されていないが、著作物均等保護の原則(どの種類の作品も同じく保護されるべき)によれば、美術作品は、著作物の法的類型として、文章、音楽、映画、テレビ、ビデオ、コンピュータ・ソフトウェア等の著作物と同等に保護されるべきであり、本件に関わるキャラクターの美術作品は、この法的規定の範囲に属するはずであるし、キャラクターの美術作品は『その他の著作物』の法的規定に属するはずである。被告らは、著作者の許諾を得ずに、商業目的で本件のスーツケースを製作し、公衆に販売したが、これは本件の美術作品を複製し、頒布する行為である。刑法第217条第1項に基づき複製・頒布された著作物には美術作品が含まれないとする被告の弁護意見には根拠がなく、当裁判所はこれを認めない。」と判示し、キャラクターは「その他の著作物」、保護すべき著作権侵害の対象となると明示した。

なお、本件後の、2020年刑法改正により(2021年3月1日施行法)、刑法217条1項は以下のように修正され12、美術という文言が入れられ、美術作品に対する刑法上の保護も明示的に規定された。

第217条「営利を目的とし、次の各号に掲げる著作権侵害事由又は著作隣接権侵害事由のいずれかに該当し、違法所得額が比較的大きい又はその他重大な情状がある場合には、3年以下の有期懲役に処し、罰金を併科又は単科する。違法所得額が巨大である又はその他極めて重大な情状がある場合には、3年以上10年以下の有期懲役に処し、罰金を併科する。

⑴ 著作権者の許諾を得ずに、その文字による著作物、音楽、美術、視聴覚著作物、コンピュータソフトウェア及び法律、行政法規に規定されるその他の著作物を複製、発行し、情報ネットワークを通じて公衆に送信した場合。

すなわち、同条項に「美術作品」という文言が明示的に入れられたより、キャラクターをめぐる著作権侵害が認められやすくなった。

 ② 実務から見るキャラクターの著作権保護

キャラクター保護に詳しい張吴穹弁護士は「視聴覚作品のキャラクターに対する著作権法の保護に関する一考察(筆者談)」13という論文で実務におけるキャラクターの著作権保護に関して、以下のように論じている。

「キャラクターについては、実務上、権利者がキャラクターイメージを比較的安定した形態(表情、動き、道具、付属品等の細部を含む)で固定し、美術の著作物として著作権登録を行うのが通常である。判例においても、アニメキャラクターの原画は美術の著作物であり、著作権法で保護される。すなわち、外形的なイメージ特性のみが保護されるという共通認識が形成されている。また、権利侵害者が使用するキャラクターの画像の多くは、視聴覚的な著作物に由来するものであり、権利者が美術の著作物に固定したキャラクターの画像と完全に一致させることができないため、裁判所は通常、キャラクターの特徴がコピーされているかどうかで侵害を判断しており、これは実質的な類似に該当するため、視聴覚的な著作物のキャラクター図柄の保護範囲を一定程度拡大することが認められる。」

中国におけるキャラクターに関する著作権侵害事件では、張吴穹弁護士が指摘されるように、通常は、キャラクター自体が保護の対象となる美術作品として認識されている。すなわち、中国ではキャラクター自体が著作物性を有するものとして認識されてきた。そして、侵害事件において複製行為の有無を判断する際も、特徴の実質的な類似性が認められれば、保護範囲は拡大されると考えられる。

そのことを示す著名な事件として、映画作品「ミニオンズ」のキャラクターに関する事件がある((2019)浙01民終1501号)。2019年5月31日、浙江省杭州中級人民法院は、映画作品「ミニオンズ」のキャラクターである小さな黄色いイメージが著作権法上の美術作品を構成し、著作権法の保護を受けると判断した。すなわち、権利侵害の有無を判断する際、被告が製造した本件の子供用の便器商品の最も創造性がある部分(図表5)、すなわち丸い線と全体的な構造、目立つ黄色、小さな目と大きな白目、そして大きくて厚い保護メガネなど、被告は「ミニオンズ」のキャラクターの最も創造性がある部分を使用していると認められ、本件の商品の図柄が体と肢体の部分を欠いていることは、実質的な類似性を構成するのに影響を与えないと判断した。

図表5 「ミニオンズ」事件における被告製品

出所:百度図片

つまり、中国の著作権侵害事件において、複製行為の有無を判断する際には、キャラクターの特徴の実質的な類似性が重要な要素となる。特徴の実質的な類似性が高いと認められれば、そのキャラクターに対する保護範囲は拡大される可能性があることが上記「ミニオンズ事件」からわかる14

 ⑶ キャラクターをめぐる日中国際紛争

また、キャラクターをめぐっては日本と中国の間にも国際紛争がある。有名な事件として「『クレヨンしんちゃん』事件」((2008)沪高民三(知)再終字第1号)がある。この事件は日中のビジネス界はもとより、法曹界においても注目されてきた。アニメや映画になった人気漫画『クレヨンしんちゃん』(以下、しんちゃん)を発行する双葉社は、中国における「しんちゃん」の著作権侵害訴訟を提起し、上海市第一中級人民法院(地裁)で勝訴した(2012年3月23日)。

本件では、原告の双葉社が1992年から漫画家故臼井儀人の原作「クレヨンしんちゃん(中国語名:蜡笔小新)」の著作権を管理してきたが、被告は広州市誠益眼鏡有限公司など3社で、1996年以降無断で「蝋筆小新(ラビシャウシン)」(繁体中国語)の文字商標(下記参照)や『クレヨンしんちゃん』の図形商標(下記参照)を先駆登録し、こちらの商標を付したメガネ、および子どもアパレルなどの関連商品を販売していた15。こちらの行為に対して、原告は管理している著作権の侵害を理由に、被告に対して2004年8月に上海市第一中級人民法院に提訴したのである。

図表6 本件文字及び図形商標

出所:双葉社

本判決最終判決までの過程において、2004年8月には仮処分が下されて、被告の著作権侵害が認められたが、著作権と商標権の抵触について中国の司法解釈(2005年3月11日)16により、商標権の登録にかかわる紛争は商標局が扱うものとされたので、本事件は上海市第一中級人民法院、上海市高級人民法院で審理中断の後に、共に却下(不受理)された。しかしながら、原告が最高人民法院に再審請求した結果、2008年11月に「受理すべき」との差戻し判決が下り、その後、本件は上海市高級人民法院での再審査審理を経て、上海市第一中級人民法院に差戻された。2011年9月に審理再開となり、2012年2月15日に口頭審理が行われた。8年もの長い年月を経て、2012年3月23日にようやく原告の主張を認める判決が下された17

本件の経緯は概略次の表の通りである18

図表7 『クレヨンしんちゃん』事件の経過

2004年 原告は被告3社に対し上海市第一中級人民法院に著作権侵害訴訟
提起。((2004)沪一中民五(知)初字第156号)
2004年8月〜
2005年12月
上海市第一中級人民法院は、「登録商標に関する紛争について、原告は関連する行政機関(商標評審委員会)に処理を申請するべく」として著作権に対する訴えを不受理処分、双葉社が控訴。
上海市高級人民法院は原決定を維持。((2005)沪高民三(知)終字第110号)双葉社は上告。
2008年11月〜
2009年3月
最高人民法院は双葉社の主張を認容し、上海市高級人民法院に差戻し。((2007)民三監字第14-1号)
上海市高級人民法院は再審理の後、上海市中級第一人民法院に差戻し。((2008)沪高民三(知)再終字第1号)
2012年3月 上海市中級第一人民法院は双葉社の主張を認容し、被告の行為は著作権侵害とした。

出所:弁理士法人オンダ国際特許事務所・株式会社オンダテクノ「中国商標「クレヨンしんちゃん」著作権侵害事件判決が示唆するもの」をもとに筆者作成

そして、最終的には、差し戻された第一審の上海市第一中級人民法院が、「被告の行為は原告の著作権を侵害する」として、3社のうち1社(上海恩嘉経貿発展有限公司)に対し侵害行為の即時停止と合計30万元(約600万円)の損害賠償金の支払いを命じた。そこで判示されたのは、「被告は原告が支配権を専有する複製、発行及びインターネット上の公衆送信行為を実施し、原告の著作権を侵害した。それらの行為が商標権の合法的な使用だという被告の抗弁理由については、著作権と商標権とはそれぞれ独立した民事上の権利であり、それぞれの権限を有するものである。よって、権利者が自らの合法的権利を行使しているときに、他人の合法的権利を侵害してはならない。被告は自分の商標使用権を行使している過程において、先にあった著作権者の専用権を無断で行使している。その行為は著作権侵害であり、相応する著作権についての侵害責任を負わねばならない。

なお、上海恩嘉経貿発展有限公司の以外の被告2社(広州市誠益眼鏡有限公司および響水県世福経済発展有限公司)に対しては、上海市第一中級人民法院は「登録行為自体には著作権者の独占権は及ばず、著作権法上の侵害行為とはみなされない」として、当該2社は著作権侵害に当たらないと判断した。

一方で、原告が2005年に中国の商標評審委員会19(Trademark Review and Adjudication Board, TRAB)に対して、被告20が登録した商標(しんちゃんの図形で眼鏡、アパレルなど5分類、「蝋筆小新」の文字デザインで4分類)の無効審判請求を行ったが、同委員会は「5年の除斥期間が経過している」という理由で登録維持の審決を出したので、原告は同委員会の判断に対して、審決取消訴訟を提起したが((2006)一中行初字第409号)、北京市第一中級人民法院は商標評審委員会の審決を維持する判決を出した。

それに対して、2011年、双葉社は中国商標法第10条第1款第8項21という新たな理由に基づき商標評審委員会に再度無効審判請求を行った、商標評審委員会は、2011年1月4日に商評字[2010]第39810号『第1026605号図形商標の争いに関する裁定書』(第39810号裁定と略称する)を作成し、争いのある商標を取り消すと裁定した。

これらの2つの判決(被告企業による著作権侵害に対する民事訴訟および登録商標無効をめぐる商標評審委員会に対する行政訴訟)に対して双葉社は、「『しんちゃん』の著作権が中国の司法、行政に認められ、一定の成果を得ることができた。真の権利者の権利はようやく保護された。「しんちゃん」のイラスト、タイトル文字22が中国の著作権法で保護されるべき芸術作品だと判断され、大変有意義な判決だと受け止めている。行政訴訟についても、画期的な判決だと評価している」とコメントした23

長期8年及ぶ紛争点を振り返えってみると、本事件の最大の争点は著作権と商標権の抵触であると考えられる。原告である双葉社は、一貫して本件が「他人の著作物を商標として登録すること」と「他人の著作物を商標として市場で公然と使用すること」の是非を主張し続きた。司法解釈に基づけば、登録商標の権利を巡る紛争に関しては、行政機関(商標評審委員会)に処理を申請し、人民法院は受理しないという裁定があり、上海市中級人民法院と上海市高級人民法院は本件を受理してこなかった。しかし、最高人民法院は本件の上訴段階で「……(上海市中級人民法院と上海市高級人民法院ともに)行政授権をめぐる紛争と民事侵害をめぐる紛争との異なる性質を混同し、訴訟を却下してしまうという誤った判断をした。その結果、双葉社が法律に基づいて保有した著作権は、法的救済を受けられない。」と判断し、双葉社の主張を認容した。つまり、本件民事訴訟において、被告が実際に双葉社の著作物を無断で商標として使用した場合は、単なる登録商標をめぐる紛争と解釈すべきではないと考えられている。

このように、キャラクターの商品化については、著作権に関する問題だけでなく、商標権が関わる紛争も生じることが分かる。つまり、ある権利を保護する際に、それに関連しての先立つ権利を侵害してはいけない。複数の権利が絡む場合、総合的な側面から判断する必要があるだろう。

また、本件からも、キャラクターの派生形の一つである「商品化」が、キャラクターから利益を生じさせる大きな手段であることが見て取れる。以下では、キャラクターグッズの発展の現状について論じる。

3 キャラクターグッズの現状

株式会社矢野経済研究所「キャラクタービジネスに関する調査(2023年)」によると、日本国内のキャラクタービジネス市場は商品化権で構成され、2022年度の商品化権市場(小売金額ベース)は前年度比101.4%の1兆2,736億円、プラス成長となった24。その中、キャラクタービジネスと言えば、アニメや漫画作品に登場するキャラクターの他に、「マスコットキャラクター」と呼ばれる存在も思い浮かべるだろう。マスコットキャラクターは、企業や団体、イベントなどのシンボルとして広く活用され、その親しみやすさや視覚的な特徴を通じて企業や団体のイメージを強化すると考えられるだろう。

日本では多くの自治体や企業が独自のマスコットキャラクターを持ち、そのキャラクターを通じて地域の魅力や商品の特徴を伝えている。ご当地キャラクター(ゆるキャラ)はその代表例である。これらのゆるキャラはイベントへの参加や地域文化活動の協力など、様々な形で宣伝効果を生み出している。

そして、日本で約10年前から倍増した「ゆるキャラ」25(日本経済新聞2022年2月6日付)に対して、中国にも冬季オリンピックの際に人気が急上昇し、マスコットキャラクター「冰墩墩(ビンドゥンドゥン)」は冬季オリンピックが開催された2022年の年末までに550万個を超えた26(新華社2021年12月28日付)、これも中国でのマスコットキャラクターブームの代表例と言えるだろう。以下では、そのように、マスコットキャラクターとその商品化の現状について考えたい。

3.1 「進撃」のマスコットキャラクター

2024年4月15日、「長年の相棒でご退任された蒲島知事を追いかけるも転げるくまモン」という投稿が2157万回の表示数および28万件の「いいね」を獲得し、SNS「X」(旧「Twitter」)のトレンド入った27。このようなゆるキャラのSNS上の発信力は都道府県の4割でそれぞれの知事の発信力を超し、経済効果も莫大であるとされてきたが28(日本経済新聞2022年2月5日付)、くまモンは熊本県知事の退任で再び公衆の注目を集めた。

「ゆるキャラ」という産業の発展に伴い、「ゆるキャラ」の商品化による収益も生んでいる。熊本県は2024年4月5日、くまモンに関連する商品の昨年の売上高が1664億円に達し、3年ぶりに過去最高を更新したと発表した。調査を始めた2011年以降、累計で1兆4596億円となった29(読売新聞オンライン2024年4月6日付)。

図表8 くまモン

出所:くまモンランド

もちろん、くまモン以外にも、日本の他の地域も「ゆるキャラ」の商品化を進めている。「ゆるキャラ」関連のグッズは、キャラクターグッズの重要な一部となっていると言える。そのため、全国の地域の特色を活かした多種多様なキャラクターに対して、サポートを行う事を目的で、2009年に一般社団法人日本ご当地キャラクター協会という組織が設立された30。同協会のホームページによれば、当該協会は「ゆるキャラ」のキャラクターグッズやノベルティなど、さまざまなグッズの製作を手伝っている。また、全国各地のご当地キャラクターグッズを取り扱うネットショップ『キャラマ』を運営している。

商品化に当たっては、利用許諾の問題が関わってくる。くまモンの著作権に関する管理を例に挙げると、関連規定は熊本県のホームページで確認できる31。「くまモンのイラスト等の利用には、著作権法に定める著作権の制限に該当する場合32を除き、必ず利用許諾申請が必要であることと、イラスト毎に、申請手続が異なる。」などという利用規定が手引で記載されている(くまモンイラスト・くまもとサプライズロゴ利用の手引 4頁)。

くまモンに対しての利用許諾申請は、通常の利用、簡易な利用と海外販売商品の利用などのそれぞれの利用方法に基づいて、別々の申請手続を手引に記載している。そして全59頁の詳細な利用手引には、くまモンの商品化に関するさまざまな利用方法の手続きとイラストの使い方などの内容が包括的に規定されている。「ゆるキャラ」の代表としての熊本県のくまモンは、このように詳細な利用規定に基づき大きな産業として成長を遂げたと言えるだろう。

一方で、利用料については「熊本県キャラクターくまモン・くまもとサプライズロゴの利用に関する規程」によると、イラスト等の利用料については無料とする(第15条)となっている。くまモンが無料で利用できるという規定は、その使用率を大幅に向上させ、多くの人々の注目を受けるようになった。そして、人々がくまモンを見る頻度が増えるほど、このキャラクターの好感度が上がった。個人や企業は、高額な著作権料を心配することなく、くまモンを使うことができるため、くまモンの使用による経済効果は拡大することになった。

このような戦略は、他の地域のゆるキャラ産業にも良い手本を示した。利用料を無料することでご当地文化の価値と認知度をさらに向上させたからである。

しかし、このようなゆるキャラブームの一方で、「ゆるキャラ」の知的財産法の紛争は、このような日本国内ゆるキャラの発展とともに、知的財産をめぐる紛争も増えていると思われる。例えば、商標権問題や翻案権帰属の解釈問題なども含む非常に複雑な「ひこにゃん事件」や、商品使用を巡る商標権の紛争である「メロン熊事件。筆者居住地の大阪府吹田市でも、吹田市のイメージキャラクターである「すいたん」のゆるキャラを巡る著作権の紛争も生じている。

図表9 吹田市のイメージキャラクター「すいたん」

出所:吹田市

「すいたん」の著作権は吹田市が保有している、令和5年8月2日に提出された吹田市職員措置請求書によると、吹田市議会議員であるAは、自らが開設している「ユーチューブチャンネル」において、「すいたん」あるいは「すいたん」に酷似したキャラクターが登場する動画を複数アップロードして公開した。それに対して、吹田市市長は、前記のAによる動画公開を知りながら、特段の措置を講じず、Aによる動画公開を放置にした。措置請求書を提出した吹田市職員は「すいたん」にかかる著作権をはじめとする一切の権利は吹田市に帰属しているという事実を理由として、Aの行為が吹田市の著作権を侵害すると主張し、吹田市長が吹田市の財産の管理を怠ったとして、吹田市監査委員会に対して必要な措置を求めるものである33

それに対し、吹田市監査委員会は本件の動画公開の行為は、著作権を有する吹田市の許諾を得ずに行われた「すいたん」の二次創作物の使用であり、著作権を侵害していると判断したものの、当該行為自体による吹田市の財政上の損害は発生していないことから、本件措置請求には理由がないものと判断し、請求自体を棄却した。

本請求は市民の声受けて行われたものであった。筆者としては地方のマスコットキャラクター、つまり「ゆるキャラ」に対しては日本では政府だけでなく、地方の市民も著作権や創作物の保護に対する理解を高めてきていると考えている。

一方で、中国では2022年冬季オリンピックのマスコット「冰墩墩(ビンドゥンドゥン)」が、爆発的な人気を得、マスコットキャラクターの代表として非常に高い経済的価値を得た。山西証券によると、冬季オリンピック期間中に「冰墩墩」グッズの売り上げは25億元(約510億円)を超える見込みだとされていた(財聯社2022年2月5日付)。

図表10 冰墩墩(ビンドゥンドゥン)

出所:https://olympics.com

これまでにも人気のあるオリンピック関連の標識について、各権利者の権利を保護するために、中国国務院はすでに2002年に「オリンピック標識保護条例」という規定を頒布している。その第4条では、権利者の許可を得ずに、いかなるものも商業目的でオリンピック標識を使用してはならないと規定されている。また、第5条では「商業目的使用」とは、営利を目的としてオリンピック標識を利用することであると具体的に説明している。そして、第5条第5項には「オリンピック標識の製造または販売」が含まれているため、前述した「冰墩墩」に関連するグッズの不正商品の製造も、この規定に違反することになる。

冬季オリンピックの開催に伴い、中国国内では実際に「冰墩墩」の関連グッズの不正商品を製造・販売し、権利者に著作権侵害で訴えられる事件が発生した。その中で最も有名な事件は、中国初のオリンピック標識著作権侵害の刑事事件であった((2022)京010刑初86号)。「冰墩墩」というキャラクターの著作権は、北京冬季オリンピック・パラリンピック組織委員会に帰属する。本件の容疑者Aは冬季オリンピック組織委員会の許可を得ず、営利を目的として居住地で冬季オリンピックのマスコットキャラクター(「冰墩墩」と「雪容融」(シュエ・ロンロン))のぬいぐるみを自作し、その後、ネットショップを通じて北京市豊台区などの地域に販売し、総額6万元(約120万円)の利益を得た。

裁判所は、Aが営利を目的として著作権者に許可を得ずに著作権者が著作権を有する作品を複製・配布したことは、情状が重く、その行為は著作権侵害罪を構成し、法律に基づいて処罰されるべきであると判示した。結局、Aには懲役1年、罰金4万元(約80万円)が言い渡された。著作権を侵害する「冰墩墩」と「雪容融」のぬいぐるみの完成品および未完成品は、すべて没収され、処分された。Aは判決を受け入れ上訴せず、一審判決が確定した。

この事件を通じて、中国ではその代表的なマスコットキャラクターに対して非常に厳格な保護が行われていることがわかる。特別に条例を制定するだけでなく、訴追も効率的に行われている。しかし、製造業大国である中国では、キャラクターグッズの不正商品が絶えず製造されるという大きな問題が依然として存在しており、すべての紛争がオリンピックのマスコットキャラクターに関する「冰墩墩事件」のように、効率的裁判と厳格な保護がなされているわけではないだろう。以下では、そのような問題意識から日常生活中におけるキャラクターグッズの不正商品について考えたいである。

3.2 日常生活中における不正商品について

筆者は中国での日常生活においても、日本のキャラクターの権利侵害が深刻であることに心を痛めてきた。例えば、中国で最も有名なオンラインショップであるアリババが運営しているタオバオ(淘宝)で、サンリオのカードホルダーのようなグッズを検索すると、公式オンラインショップの定価が660円のグッズが、ここでは200円で購入できる。(図表11

図表11 サンリオのカードホルダー

出所:サンリオオンラインショップ(左)、タオバオ(右)

サンリオのカードホルダー以外にも、多くの中国製である日本企業のキャラクターグッズが、同様の状況にあることが確認できる。つまり、同じ商品が定価よりも大幅に低い価格で販売されている。商品の詳細ページの説明を見ると、そのような商品が実際には日本企業が委託した工場から来ていることがわかるが、不良品(訳あり)として個人によって低価格で販売されている。また、筆者の検索によると、不良品以外にも、権利許可を得ずに大量生産された原商品と全く同じ商品がいわゆる不正商品が、低価格で直接タオバオや他のオンラインショップで販売されている。

つまり、ネットワークプラットフォームで販売される権利侵害品は大きく二つのタイプに分けられると考えられている。一つは不良品の無許可販売であり、もう一つは不正商品(知的財産権侵害品)の無許可製造および販売である。この二つタイプの商品は侵害する権利が異なる。前者は委託関係に基づいて日本企業と生産委託された工場との間の民事契約に起因する契約違反であり、後者は日本企業が有する特許権、意匠権、商標権、またはキャラクターの著作権という知的財産権の権利侵害である。

このように、対象商品がどのタイプに属するかを判断する方法について、筆者は売り上げによって判断できると考えている。不良品の数は限られているため、もしその店舗が同じ商品を長期間にわたって継続的に販売し、在庫が常に十分にある場合、その販売計画は日本企業と工場の間で結ばれた契約の範囲を超えており、不正商品として追加生産されている可能性があると考えられている。

以上のような現象に対する解決策として、消費者の「不正商品は買わない」という知的財産権保護意識の向上や原著作権者の権利保護能力の強化に加えて、筆者はもう一つ重要な点があると考えている。それは、オンラインショッププラットフォームが主流になりつつある今日において、プラットフォーム自体が持つ管理責任である。以下では、日中オンラインショッププラットフォームの管理規定とその効果、および関連する現状について検討したい。

3.3 オンラインショッププラットフォームによる協力

中国のアリババが運営しているタオバオはプラットフォーム内で流通する不正商品に対して、以下のような「タオバオオンライン市場管理と違反処理基準」を設けている。(筆者訳34

第二十四条 不正商品の販売

【定義】不正商品の販売とは、業者が模倣した登録商標または海賊商品を販売する行為を指す。

【違反行為への対策】タオバオは、模倣品または海賊商品や情報を削除する。

【違反類型】不正商品の販売

【違反処理措置】

⑴ 業者が一般的な模倣品または海賊商品を販売した場合、商品ごとに削除する。

⑵ 業者が模倣品または海賊商品を販売し、かつ重大な場合、24ポイントを毎回差し引く。

⑶ 業者が模倣品または海賊商品を販売し、かつ非常に重大な場合、48ポイントを毎回差し引く。

タオバオは不正商品の販売に対して「三振でアウト」制度を採用しており、業者が不正商品を販売する行為は1回ごとに1振りとして記録される。同一の業者が偽不正商品を合計3回振りの場合、アカウントが封鎖される。

同時に、タオバオは状況の重大性に応じて、商品の取り下げること、商品の削除、商品の制限、保証金の制限、違約金の支払い、アカウントの封鎖などの措置を取ることがある。

上記の内容から、タオバオはプラットフォーム上に現れる不正商品に対して一定の対策を講じていることがわかる。しかし、審査方法については具体的な規定がなく、「重大性」の程度についても明確な基準がない。このような曖昧さは、実際の運用において参考性や適時性の欠如を招く可能性があると思われている。

上述の筆者が発見した、サンリオカードホルダーという商品を販売している不正商品の業者を例にとると、その商品ページには「サンリオ」という商標の中国語名と商品キーワードが明確に記載されているが、それでもなおタオバオのプラットフォーム上で流通している。これにより、著作権者からの自発的な報告がなければ、タオバオが自らプラットフォームの侵害の有無を審査することは難しいのではないかと考える。

このような問題を改善するために、筆者は以下の措置を取ることを提案する。

① 審査方法の明確化:審査の具体的な手順と基準を詳細に規定し、不正商品の定義、検出方法、処理手順などを含める。これにより、審査の参考性と適時性を高めることができる。

② 「重大性の程度」についての規定:異なる種類の違反行為の「重大性の程度」と相応の措置とは何かを明確にする。これにより、違反行為の程度に応じた適切な処理が確保され、基準の不明確さによる不公平な扱いを避けることができる。

③ 定期的な公表:定期的に審査結果を外部に公表する。これにより、業者がプラットフォームの要求を明確に理解できるだけでなく、消費者のプラットフォームへの信頼を高めることができる。

④ 第三者機関による監督制度の導入:独立した第三者機関による監督制度を導入してプラットフォームの審査プロセスを監督・評価し、審査の効率性と公正性を確保する。

一方で、日本の大手オンラインショップである楽天グループ株式会社(以下、「楽天」)は、知的財産侵害物品などの水際取締りに関し、財務省の地方支分部局であり各地域における税関業務を行う税関との情報交換を2014年より行っている。具体的には、知的財産権を侵害する模倣品や不正競争防止法に違反する物品と、それらを取り扱う販売事業者に関する情報、および税関が差し止めた知的財産侵害物品に関する情報を相互に共有し、「楽天市場」における不正な物品の撲滅に向けて対策を講じてきたほか、同市場のユーザー向けに模倣品などに関する注意喚起を行ってきた。また、「楽天市場」における安心・安全の取り組みの一環として、知的財産侵害物品などの国内流通防止に関する連携を強化するために、財務省関税局と「水際取締りに係る協力に関する覚書」を2023年12月20日締結したと発表した35

このような覚書を通して、楽天と財務省関税局は意見交換の場を増やすほか、楽天と税関は情報交換をより強化し、模倣品業者の特定と取締りをより効率的かつ効果的に行うことを目指している。また、「楽天市場」における模倣品などの流通を確認した場合には、楽天が出店店舗に対して規約に基づいた厳正な措置を講じ、悪質な事業者の参入を防ぐとされる。

2014年に「楽天市場 品質向上委員会」を立ち上げて以来、楽天はブランド模倣品などの権利侵害品や、偽サイト、商品の品質表示の管理などについて外部団体や行政の協力を得ながら対策を講じてきたが、2019年からは、Eコマース事業者関連団体や、消費者団体など外部有識者で構成されるアドバイザリーパネルを設置し、サービス品質について外部有識者とも定期的に協議している。

しかし、このように侵害物品の排除を目指してきた「楽天市場」というオンラインショップのプラットフォームも、知的財産権侵害事件に巻き込まれてきた。代表的な事件として、2012年の「チュッパチャプス事件」([知財高裁 平成22年(ネ)第10076号 商標権侵害差止等請求控訴事件 平成24年2月14日判決])がある。本件は、棒付きキャンディーとして世界的に有名な「チュッパチャプス」のロゴマークを無断で使用した商品がインターネット通販サイト「楽天市場」で販売されていたことを巡って、サイトの運営者である楽天が商品の販売差し止めや損害賠償を求められた事件であるが、知的財産高等裁判所は「商標権の侵害については通販サイトの運営者も出品者と同じ責任を負う場合もある」とし36、「……サイト運営者は出店料など営業上の利益を得ている上、削除や出店停止などの結果回避措置をとることができる。サイト運営者が商標権侵害を知ったときは、その後の合理的期間内に問題商品をサイトから削除しなければ、商標権者はサイト運営者に対し、商標権侵害を理由に、出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である」と判断し、「……サイト運営者であっても、出店者による出品が第三者の商標権を侵害するものであることを具体的に認識するに至ったときは、商標権侵害の幇助犯となる可能性がある」として、サイト運営者も出店者と同じように商標権侵害について責任を負う場合があるとする初めての判断を示した。

図表12 チュッパチャプス商標

出所:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

本件高裁判決を通じて、日本のオンラインショッププラットフォームは知的財産権保護を重視しなければならないことが明らかになった。日本ではプラットフォーマーの責任が明確にされたことで、オンラインショップにおける著作権保護の規制がより整い、権利者の知的財産権がより効果的に保護されることになったと確信している。

4 まとめ

以上のように、筆者はキャラクターに対する著作権性の議論、そして、日中両国のキャラクターグッズに関する様々な判例を論じた。また、日中両国のキャラクターグッズの現状について、話題になっていたマスコットキャラクターの権利侵害事件、さらには、大手オンラインショップのプラットフォームの審査責任にも触れ、キャラクターグッズの保護のあり方を検討した。

キャラクターはエンターテインメント文化の一部として、非常に高い経済的価値と文化的価値を持っている。そして、著作権法は、適切な権利保護によって創作の促進を図り、一方で権利の制限によって公正な利用を確保することで、文化の発展に寄与することを目的としている37。したがって、既存の作品に対する適切な権利保護や、将来の作品の創作意欲を促進するためにも、キャラクターに関しても、その著作権性や実務の分析は非常に重要であると考えている。

Footnotes

1 「日本のアニメ 最高の2.7兆円」日経MJ(流通新聞)2022年12月7日付

2 「目指せくまモン 全国1500超、ゆるキャラに託す発信力」日本経済新聞 2022年2月6日付

3 Analysys易観分析「中国数字経済全景白皮書」動画産業篇 2頁 2021年12月24日 https://www.analysys.cn/article/detail/20020341

4 (2011)高行終字第1427号 日本国株式会社双叶社与国家工商行政管理総局商標評審委員会、江蘇蜡笔小新服飾有限公司商標争議行政紛糾案 北京市高級人民法院 2011年12月9日

5 中村 稔 「キャラクターの保護について」著作権研究39 164−218頁

6 辞典・百科事典の検索サービス‒Weblio辞書 https://www.weblio.jp/content/キャラクター

7 千篇漢語辞典 https://cidian.qianp.com/ci/角色

8 小島喜一郎「二次的著作物の保護期間『ポパイネクタイ事件:上告審』」著作権判例百選[第6版]有斐閣 158頁

9 松田俊治「講演録:新時代におけるキャラクターの法的保護」「コピライト」Vol. 62 No. 742 3頁

10 万和証券 「従美日両国看文娯IP授権周辺行業発展」沈彦東 潘子棟 証券研究報告| 行業研究 4頁(2020年2月25日)https://pdf.dfcfw.com/pdf/H3_AP202002271375555985_1.pdf?1582815510000.pdf

11 JETRO 中国の法令・法規 中華人民共和国刑法(抄録)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/19970314_2.pdf

12 JETRO 中国の法令・法規 中華人民共和国刑法修正案(十一)(知財部分のみ抜粋)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20210301_jp.pdf

13 張吴穹「浅析視聴作品中角色形象的著作権法保護」2023年3月17日 https://www.sohu.com/a/655294938_121123771

14 類似事件:湖南省長沙市中級人民法院(2014)長中民五初字第375号、上海知的財産法院(2019)沪73民終391号

15 本事件の判決文によると、「広州市誠益眼鏡有限公司」および「響水県世福経済発展有限公司」という2社は『クレヨンしんちゃん』の図形商標を先駆登録し、「上海恩嘉経貿発展有限公司」という会社は実際的に当該商標を自社が生産する商品に使用した。((2008)沪高民三(知)再終字第1号)

16 「司法解釈」とは法律解釈に疑問があるときに最高人民法院が司法解釈を行うことによって全国統一の法理解釈を行うことを言う。

  最高人民法院が2005年3月11日に頒布した「最高人民法院民事審判第三庭关于关于伝発[2004]民三他字第10号函的通知」という司法解釈には、「登録商標の権利を巡る紛争に関して、原告は関連する行政機関(商標評審委員会)に処理を申請するものとし、人民法院は受理しない」という記載がある。

17 株式会社双葉社「中国における『クレヨンしんちゃん』訴訟の勝訴判決について」2012年4月17日 https://www.futabasha.co.jp/news/36

18 弁理士法人オンダ国際特許事務所「中国商標『クレヨンしんちゃん』著作権侵害事件判決が示唆するもの(2012.5.9)」https://www.ondatechno.com/jp/ip_info/trademark/p6109/

19 商標評審委員会(TRAB):元商標評審委員会は、商標法に基づき、商標権に関わる紛争問題の処理を担当する部門である。2019年2月15日に頒布された国家知識産権局第295号公告によって、元商標審判委員会は中国国家知識産権局商標局へ統合され、廃止された。

20 商標登録を行った広州市誠益眼鏡有限公司および響水県世福経済発展有限公司2社。

21 中国商標法第10条第1款第8項 社会主義道徳に有害な、またはその他の悪影響を持つシンボルを商標として使用してはならない。

22 に対しては、中国の著作権法で保護されるべき芸術作品だと判断された。

23 前掲注17

24 株式会社矢野経済研究所「キャラクタービジネスに関する調査を実施(2023年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3292

25 「目指せくまモン 全国1500超、ゆるキャラに託す発信力」日本経済新聞2022年2月6日付

26 「冬奥頂流“冰墩墩” 紅遍全球的幕后故事」 新華社 2021年12月28日付

27 https://x.com/mjmh_sakurakpop/status/1779862903434436623?s=46&t=8Cy13cvBMn4xZpQ-JwYcqw

28 「ゆるキャラ 経済の起爆剤」日本経済新聞朝刊 2頁 2022年2月5日付

29 「くまモン商品、3年ぶり売上高最高更新……累計1兆4596億円『世界一の公務員』」読売新聞オンライン 2024年4月6日付

30 日本ご当地キャラクター協会:http://gotouchi-chara.jp

31 くまモンイラスト・くまもとサプライズロゴ利用の手引 https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/114761.pdf

32 著作権法に定める著作権の制限に該当する場合について:①個人で利用する場合(詳細はFAQ参照)、②報道目的で利用する場合、③学校の授業の過程で利用する場合等 著作権法第30条

33 吹田市職員措置請求書 令和5年8月2日 https://www.city.suita.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/683/20231018.pdf

34 「淘宝网市場管理与違規処理規範」https://rulechannel.taobao.com/?type=detail&ruleId=506&cId=89&spm=a2177.7231193.0.0.xepq1X#/rule/detail?ruleId=506&cId=89&spm=a2177.7231193.0.0.xepq1X

35 楽天グループ株式会社「楽天、財務省関税局と模倣品などの水際取締りに係る協力に関する覚書を締結」https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2023/1220_02.html 2023年12月20日

36 伊東国際特許事務所「インターネット通販サイトの運営者も商標権侵害に問われる可能性―知的財産高等裁判所[知財高裁 平成22年(ネ)第10076号 商標権侵害差止等請求控訴事件 平成24年2月14日判決]

37 文化庁著作権課「著作権テキスト―令和5年度版―」4頁

参考文献
  •  1.Analysys易観分析「中国数字経済全景白皮書」動画産業篇 2021/12/24
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  • 22.早稲田祐美子 Q&A(著作権相談から)/キャラクターの保護「コピライト」Vol. 45(No. 536)著作権情報センター <CRIC> 2005/12/01
  • 23.辰巳直彦「連載漫画は原作原稿の二次的著作物であるとした事例」民商法雑誌第127巻1号 <判例紹介> 2002/10
  • 24.向山勇 特集 令和5年の差止実績及び水際取締制度の強化 税関における知的財産侵害作品の水際取締制度について ファイナンス 2024 Jun.
 
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