抄録
日本近海産アカウミガメ類の分類学的取扱いが混乱している現状を明らかにし,次のことをのべた。
1.日本近海に普通に産し,南日本に産卵のため上陸するいわゆる‘アカウミガメ’の集団は唯1種よりなり,それはolivacea Eschscholtzではなく,caretta Linnéに該当する。
2.したがって,この集団の学名としてはCaretta caretta(Linné),そして,和名としては‘アカウミガメ’を用いるべきである。
3.いっぽう,Lepidochelys olivacea(Eschscholtz)の日本近海における出現は稀なようで,現在のところ,確実な記録としては,福岡県志賀島および新潟県寺泊での捕獲があるのみである。
4.Lepidochelys olivaceaを‘ヒメウミガメ’と呼ぶことを提案する。