Human Sciences
Online ISSN : 2434-4753
Original Article
Promotion of special needs education in early childhood education and care; from special needs education to building inclusive education system
Takanobu AbeNoriyuki KifuneKeiji SakakiYui OkimotoKana Inoue
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2019 Volume 1 Pages 38-48

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Abstract

本研究では,まず,特別支援教育について,その理念から概観し,次に特別支援教育に係る制度的な整備や障害者権利条約の批准等の昨今の状況について解説を行う。最後に,乳幼児教育における特別支援教育について,基本的な考え方を幼稚園教育要領,保育所保育指針及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領から示した上で,実際の指導の在り方についての知見を述べる。その結果,次のことを明らかにした。まず,乳幼児教育における特別支援教育は,子どもたちの主体的な遊びや活動が成立することによって実施できるということである。次に,乳幼児教育における特別支援教育を推進することが,インクルーシブ保育を構築していくことであり,それは合理的配慮の提供により障害の有無に関わらず子どもたちの主体的な遊びや活動が成立することで実現されていくということである。

1. 特別支援教育とは

2007年4月の学校教育法の一部改正により,特別支援教育が始まったと考えると,それから10年が経過したことになる。それまでは,特殊教育と呼ばれ,障害の種類及び程度に応じて,特殊教育諸学校と総称されていた盲学校,聾学校及び養護学校,地域の小中学校の設置される特殊学級,そして通級による指導といった特別な場で行う教育とされていた。しかし,2001年秋に文部科学省が設置した「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」が2003年3月に示した「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」1)によれば,「特殊教育諸学校(盲・聾・養護学校)若しくは特殊学級に在籍する又は通級による指導を受ける児童生徒の比率は近年増加して」いること,「重度・重複障害のある児童生徒が増加するとともに,LD,ADHD等通常の学級等において指導が行われている児童生徒への対応も課題になるなど,障害のある児童生徒の教育について対象児童生徒数の量的な拡大傾向,対象となる障害種の多様化による質的な複雑化も進行」していること,「障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズを専門家や保護者の意見を基に正確に把握して,自立や社会参加を支援するという考え方への転換が求められている」ことなどから,「障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う「特殊教育」から障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図る」ことが示された。

つまり,特別支援教育とは「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うものである」2)。そして,特別支援教育の目的は「自立と社会参加」であり,その方法として「一人一人の教育的ニーズを把握」して,「適切な指導及び必要な支援を行う」ものであると整理できる。

この特別支援教育の理念を受けて,2007年4月の学校教育法の一部改正においては学校制度の大幅な変更も同時に行われた。障害の重度・重複化へ対応できるように,それまで障害種別ごとに設置されていた盲学校,聾学校及び養護学校を,複数の障害種別に対応できるなど障害の種類にとらわれない特別支援学校へと学校制度上の転換を図った(図1)。特別支援学校には,「地域において小・中学校等に対する教育上の支援(教員,保護者に対する相談支援など)をこれまで以上に重視し,地域の特別支援教育のセンター的役割を担う学校」という役割を担うことも求めた3)

図1

特別支援学校制度への転換

これは,それまでの我が国における近代学校教育制度で堅守されてきた,学校はその在籍する児童生徒の教育を司るという役割から一歩踏み出したある意味画期的な制度の変更であるといえる。つまり,在籍する児童生徒の教育だけでなく,学校のもつ専門性と資源を生かして,当該学校に在籍していない,地域の小中学校等に在籍する児童生徒の教育に係る助言又は援助を行うこととしたのである。

また,「特別支援教育は,これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく,知的な遅れのない発達障害も含めて,特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施されるものである。」として,特別支援教育の対象を通常の学級に在籍している児童生徒にまで拡充させた2)。これは,それまでの特殊教育では,対象となる障害のある児童生徒は,盲学校,聾学校及び養護学校の特殊教育諸学校,小中学校にある特殊学級に在籍するか,通級による指導の対象の児童生徒に限定されていたが,特別支援教育では,通常の学級に在籍する知的発達の遅れのない,学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症(HFA)といった発達障害のある児童生徒も対象とするということである。学校教育法第81条には「幼稚園,小学校,中学校,義務教育学校,高等学校及び中等教育学校においては,次項各号のいずれかに該当する幼児,児童及び生徒その他教育上特別の支援を必要とする幼児,児童及び生徒に対し,文部科学大臣の定めるところにより,障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする」とされ,「その他教育上特別の支援を必要とする幼児,児童及び生徒」という文言で,通常学級に在籍する知的発達の遅れのない発達障害のある児童生徒のことが示されている。これにより地域の小学校,中学校,そして,特殊学級や通級の指導がなかった幼稚園と高等学校においても特別支援教育を推進することになった。これに加えて,厚生労働省が所管する児童福祉施設である保育所も,幼児段階での早期発見・早期支援が重要であることから,幼稚園と同じように就学前教育を担う教育機関の一つであるとして,特別支援教育の推進を図ることとしたのである(図2)。

図2

特殊教育から特別支援教育への転換

なお,米国精神医学会(American Psychiatric Association; APA)によって2013年(日本語訳は2014年)に刊行された「精神疾患の分類と診断の手引第5版」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th edition; DSM-5)では,本稿における学習障害(Learning Disabilities; LD)を,「限局性学習症」(Specific Learning Disorder; SLD),注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder; ADHD)を,「注意欠如・多動症」(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder; AD/HD),高機能自閉症(High-Functioning Autism; HFA)については,「高機能自閉症」,「カナー型自閉症」,「アスペルガー症候群」といった亜分類を廃し,「自閉スペクトラム症」(Autism Spectrum Disorder; ASD)と総称しているが,文部科学省によるこれら疾病の名称に変更はなく,また,発達障害者支援法における対象となる疾病の名称も変更されていないことから,本稿においては,従前のとおり用いることとする。

2. 特別支援教育推進のための具体的方策

このように,特別支援教育はすべての学校種で推進されるものとされた。各学校におけるその具体的な方策については,2007年4月に文部科学省初等中等教育局より示された「特別支援教育の推進について(通知)」2)にあり,大きくまとめると3つのことが示されているといえる。

一つめは,「特別支援教育に係る校内委員会の設置」である。「校長のリーダーシップの下,全校的な支援体制を確立し,発達障害を含む障害のある幼児児童生徒の実態把握や支援方策の検討等を行うため,校内に特別支援教育に関する委員会を設置」することによって,担任の教員一人が請け負うことなく,学校全体で組織的かつ計画的に特別支援教育を推進していく体制づくりをすることである。実際には,既に学校には各種委員会組織があり,新たな委員会を設置したり,その委員会の協議のための時間を設けたりすることが難しい場合が多い。その際には,既存の生徒指導委員会等の関連する委員会が兼ねることで,その委員会の協議の時間に必ず議題として,特別支援教育に係る議題や個別の児童生徒のケースに係る議題を入れることによって代替するという方法もある。また,形骸化を防ぐために,年度当初の委員会で,年間計画や年間目標を定めるとともに,全教職員で共通認識をもてるしくみづくりも行っておくことが大切であると考える。

二つめは,「特別支援教育コーディネーターの指名」である。特別支援教育コーディネーターとは「各学校における特別支援教育の推進のため,主に,校内委員会・校内研修の企画・運営,関係諸機関・学校との連絡・調整,保護者からの相談窓口などの役割を担う」とされ,「校長は,特別支援教育コーディネーターが,学校において組織的に機能するよう努めること」と示されている。つまり,前出の「校内委員会」が校内の組織であり,「特別支援教育コーディネーター」は,その組織を機能させていく役割の重要な人的資源を指しているといえる。しかし,特別支援教育初期には,特殊教育の考え方である「特別な場での教育」という考え方のまま,特別支援教育コーディネーターを特別支援学級の担任に充てて,特別支援教育は特別支援学級が担うものとして学校全体の組織への位置づけがされないことも多かったようである4)。そこで,学校において特別支援教育を組織的に担える力量のある教員を養成するために,都道府県教育委員会や市町村教育委員会は特別支援教育コーディネーターの養成のための研修を多々開催してきている。

三つめは,「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」の作成と活用である。「個別の教育支援計画」とは,「長期的な視点に立ち,乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため,医療,福祉,労働等の様々な側面からの取組を含めた」障害のある児童生徒一人一人のための計画である。「個別の指導計画」は「個々の児童又は生徒の障害の状態や発達の段階等の的確な把握に基づき,指導の目標及び指導内容を明確にした」一人一人のための指導計画である。特別支援教育の理念である「一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行う」ための中核的な方策であるといえる。当初は,特別支援学校は必ず全員に作成することが義務付けられていたが,小中学校等においては「必要に応じて作成」するとされていた。2017年3月告示の小学校学習指導要領5)では,「障害のある児童などについては,家庭,地域及び医療や福祉,保健,労働等の業務を行う関係機関との連携を図り,長期的な視点で児童への教育的支援を行うために,個別の教育支援計画を作成し活用することに努めるとともに,各教科等の指導に当たって,個々の児童の実態を的確に把握し,個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとする」と示した後に「特に,特別支援学級に在籍する児童や通級による指導を受ける児童については,個々の児童の実態を的確に把握し,個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成し,効果的に活用するものとする」とされている。このことから,現在では,通常の学級の障害のある児童生徒については,「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」の作成と活用は努力義務であり,特別支援学級の在籍児童生徒や通級による指導の対象の児童生徒については,作成及び活用が義務付けられていると解することができる。

これらの具体的な方策について,2017年度以降,文部科学省は全国の実施状況について国公私立の幼保連携型認定こども園・幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校及び中等教育学校を対象として毎年度9月1日を基準日とした「特別支援教育体制整備状況調査」を実施し公表している。「平成29年度特別支援教育体制整備状況調査」6)の「調査の概要」によれば,「国公私立の全学校種計では,個別の指導計画及び個別の教育支援計画の作成率について前年度を上回り平成26年度から増加傾向になっている。なお,公立の幼稚園・幼保連携型認定こども園・高等学校は公立の小・中学校と比較し実施率が低く課題がみられるが,個別の指導計画及び個別の教育支援計画の作成率は年々増加傾向であり,着実に取組が進んでいる状況が伺える」とされている(図3-1;図3-2)。以前より,校種別では,小学校及び中学校に対して幼稚園及び高等学校の作成率が低いというのは変化がないが,年度を経るごとに作成率が上昇していることは確かである。

図3-1

幼稚園・小学校・中学校・高等学校全校種の年度別実施率

図3-2

幼稚園・小学校・中学校・高等学校校種別の平成29年度実施率

3. 「障害者の権利に関する条約」と「障害者基本法」

我が国においては,2014年1月20日に障害者の権利に関する条約(以下,障害者権利条約)が批准され,同年2月19日に効力が発生した。障害者権利条約は,障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し,障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として,障害者の権利の実現のための措置等について定める条約であり,2006年12月に第61回国連総会において採択され,2008年5月に発効した。

実は,我が国は2007年9月に障害者権利条約に署名していたが,国際法である条約に国内法としての効力をもたせるための批准までに7年という年月が必要であった。その間に我が国の政府は,同条約の批准に必要な国内法の整備を始めとする障害者制度の集中的な改革を行うために,2009年12月に,内閣に「障がい者制度改革推進本部」を設置し,同本部の下に,障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるため,障害当事者,学識経験者等からなる「障がい者制度改革推進会議」(以下,推進会議)を開催した。国の障害者施策の議論の場に,常に障害当事者とその支援者が出席していたのである。これは,我が国の障害者施策の歴史の中で画期的なことであると評価できる。

推進会議での計14回にわたる議論を踏まえて政府は,2010年6月に「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」7)を閣議決定した。この中で,「障害者制度改革の基本的な考え方」(以下,「基本的な考え方」)に「あらゆる障害者が障害のない人と等しく自らの決定・選択に基づき,社会のあらゆる分野の活動に参加・参画し,地域において自立した生活を営む主体であることを改めて確認する。また,日常生活又は社会生活において障害者が受ける制限は,社会の在り方との関係によって生ずるものとの視点に立ち,障害者やその家族等の生活実態も踏まえ,制度の谷間なく必要な支援を提供するとともに,障害を理由とする差別のない社会づくりを目指す」として,まずは,我が国の障害者施策の基本をなす法令である障害者基本法を2012年7月に改正し施行した。

これにより「基本的な考え方」にある「日常生活又は社会生活において障害者が受ける制限は,社会の在り方との関係によって生ずるものとの視点」から同法では障害者の定義が改正され,同法第2条第2項に「社会的障壁」が加えられた。障害は当事者そのものに問題があって生じるという考え方から,社会との関係性の中で生じる,いわゆる「社会モデル」の考え方が付け加わったのである。「社会モデル」の登場とともに,第4条第2項にいわゆる「合理的配慮」の提供の規定が加えられた。

第4条

何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。

 2 社会的障壁の除去は,それを必要としている障害者が現に存し,かつ,その実施に伴う負担が過重でないときは,それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。

第4条第2項では「合理的配慮」の提供とは,「社会的障壁の除去」であるとしている。そして,「必要としている障害者が現に存し」と規定していることからも分かるように,実際に個々の障害者が「社会的障壁の除去」を必要とした場合に事後的に発現するものであるとしている。よって,厳密には事前に広く障害者一般に配慮して,歩道橋にエレベーターを設置したり,公衆トイレに障害者用トイレを設置したりすることではないことに留意したい。ただし,その「合理的配慮」は「その実施に伴う負担が過重でないとき」と一定の歯止めをしている。

最後には,「社会的障壁の除去」の「実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」として,一定の歯止めをしながらも,実際に「社会的障壁の除去」を必要とした障害者がいる時にはじめて「合理的配慮」の提供の義務が生じるとしているのである。実際にいる障害者が表明した後に事後的に生じることになるので,その「合理的配慮」はきわめて個別的となり,一人一人の障害者において求められる「合理的配慮」は異なっていることになる。

4. 「障害者差別解消法」の制定

障害者権利条約の批准に向けた国内法制度の整備の一環として,全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け,障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として,2013年6月,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下,障害者差別解消法)が制定され,2016年4月より施行された。

この法律は,障害者基本法第4条で示されている基本原則である「差別の禁止」の原則に則り,「障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」という「障害を理由とする差別等の権利侵害行為の禁止」(第1項,筆者加筆),「社会的障壁の除去は,それを必要としている障害者が現に存し,かつ,その実施に伴う負担が過重でないときは,それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」という「社会的障壁の除去を怠ることによる権利侵害の防止」(第2項,筆者加筆),そして「国は,第1項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため,当該行為の防止のために必要となる情報の収集,整理及び提供を行うものとする」という「国による啓発・知識の普及を図るための取組」(第3項,筆者加筆)を具体化するという趣旨で制定されている。そのために,「差別を解消するための措置」として「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」を掲げ,さらに「差別を解消するための支援措置」として「相談・紛争解決」,「地域における連携」,「啓発活動」,「情報収集」等を示している。

この内,「国及び地方公共団体等」においては,「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」は法的義務を伴うものであることから,地方公共団体等にあたる公立学校において障害のある子どもに対して「合理的配慮の提供」を否定することは,「不当な差別的取り扱いの禁止」に反することになる点に留意する必要がある(表1)。

表1 障害者差別解消法の法的義務の範囲
団体別 不当な差別的取扱いの禁止 合理的配慮の提供
国 
地方公共団体等
法的義務 法的義務
民間事業者 法的義務 努力義務

5. インクルーシブ教育システムの構築

インクルーシブ教育(inclusive education)は,1994年にスペインのサラマンカで開催されてユネスコとスペイン政府共催による「特別なニーズ教育に関する世界会議(World Conference on Special Needs Education:Access and Quality)」において採択された「特別なニーズ教育における原則,政策,実践に関するサラマンカ声明ならびに行動の枠組み(Salamanca Statement on Principles, Policy and Practice in Special Needs Education and a Framework for Action)」の中で初めて提唱されたものである8)。障害者権利条約第24条では,「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system)とは,「人間の多様性の尊重等の強化,障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ,自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下,障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組み」であり,「障害のある者が教育制度一般」(general education system)から排除されないこと,自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること,個人に必要な「合理的配慮」(reasonable accommodation)が提供される等が必要とされる」と示されている。

これを受けて,2012年の中央教育審議会初等中等教育分科会「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(以下,「報告」)9)では,「インクルーシブ教育システムにおいては,同じ場で共に学ぶことを追求するとともに,個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して,自立と社会参加を見据えて,その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる,多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である。小・中学校における通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校といった,連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要である」(図4)として,特別支援教育の推進を図るとともに「基本的な方向性としては,障害のある子どもと障害のない子どもが,できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指すべきである。その場合には,それぞれの子どもが,授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら,充実した時間を過ごしつつ,生きる力を身に付けていけるかどうか,これが最も本質的な視点であり,そのための環境整備が必要である」と述べている。

図4

連続した多様な学びの場

前出の「報告」によれば,学校等の教育機関における「合理的配慮」とは,条約の定義に照らし,「障害のある子どもが,他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために,学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり,障害のある子どもに対し,その状況に応じて,学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり,「学校の設置者及び学校に対して,体制面,財政面において,均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義している。

また,「基礎的環境整備」とは,「法令に基づき又は財政措置により,国は全国規模で,都道府県は各都道府県内で,市町村は各市町村内で,教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは,「合理的配慮」の基礎となる環境整備であり,それを「基礎的環境整備」と呼ぶこととする」としている。「基礎的環境整備」は,障害のある児童生徒に対する支援の基礎となるものであるが,基本的にはその学校で学ぶ児童生徒すべてに提供されるものであって,「合理的配慮」は,この「基礎的環境整備」を基に,設置者及び学校が,各学校において,障害のある子どもに対し,その状況に応じて,「合理的配慮」を提供することになる(図5)。

図5

合理的配慮と基礎的環境整備

さらに「合理的配慮」は,「設置者・学校と本人・保護者により,発達の段階を考慮しつつ,「合理的配慮」の観点を踏まえ,「合理的配慮」について可能な限り合意形成を図った上で決定し,提供されることが望ましく,その内容を個別の教育支援計画に明記することが望ましい」とされている。

よって,「一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されるもの」であるから,一人一人異なった「合理的配慮」が合意形成を図った上で提供されることになる。

今後は,「合理的配慮」の提供にあたっての合意形成が重要になってくると考えられる。障害者差別解消法の第6条を根拠規定として,内閣が定める「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」10)には,「合理的配慮は,障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり,多様かつ個別性の高いものであり,当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ,社会的障壁の除去のための手段及び方法について,「(2)過重な負担の基本的な考え方」に掲げた要素を考慮し,代替措置の選択も含め,双方の建設的対話による相互理解を通じて,必要かつ合理的な範囲で,柔軟に対応がなされるものである。」と示されており,「合理的配慮」における合意形成は,提供者と障害者の双方による「建設的対話による相互理解」が不可欠であるからである。それは,学校教育でのインクルーシブ教育においては,「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」の作成と活用そのものと考えてよいといえるからである11)

6. 乳幼児教育における特別支援教育の推進

現在,就学前教育の場,すなわち乳幼児教育が行われている施設としては,学校教育法第1条を設置根拠とする学校の一つである幼稚園,児童福祉法第9条及び第37条を設置根拠とする児童福祉施設の一つで保育所,そして就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律(以下,「認定こども園法」とする)第2条の7を設置根拠とする学校及び児童福祉節である幼保連携型認定こども園がある。また,特別支援学校幼稚部も,学校教育法第1条に定める学校の一つであり,乳幼児教育が行われている施設といえる。学校の一つである幼稚園では,以前より学校教育法第25条により教育課程の基準として文部科学省告示の幼稚園教育要領が示されている。同じく学校の一つである特別支援学校幼稚部においても,学校教育法第77条により教育課程の基準として特別支援学校幼稚部教育要領が示されている。これは特別支援学校独自の教育の領域である「自立活動」が示されていることを除けば,幼稚園教育要領と全く同じものである。児童福祉施設の一つである保育所は,「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設」であり,保育所における保育とは「養護と教育を一体的に展開するもの」であるが,ここに示されている「教育」は,「子どもが健やかに成長し,その活動がより豊かに展開されるための発達の援助」ではあるが,児童福祉法第6条の3第7項により「義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとしての満3歳以上の幼児に対する教育」は除かれている。しかし,児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第35条による保育の内容を定める厚生労働省告示である保育所保育指針においては,2008年告示以来,満3歳以上の幼児に対する保育おける「教育」のねらい及び内容は,幼稚園教育要領の定めるねらい及び内容と全く同等のものとなっている。また,幼保連携型認定こども園における教育課程その他の教育及び保育の内容に関する事項を定める,内閣府・文部科学省・厚生労働省告示である幼保連携型認定こども園教育・保育要領においても2014年告示以来,教育及び保育におけるねらい及び内容は,幼稚園教育要領と全く同等のものとなっている。このことから,幼稚園(特別支援学校幼稚部を含む),保育所及び幼保連携型認定こども園の3つの施設においては,同等の教育が行われていると考えることができ,その基準としてねらい及び内容を定める法令である幼稚園教育要領,保育所保育指針及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領が定められているといえる。

特別支援教育の推進という視点から乳幼児教育のねらい及び内容を定めているこれら3法令をみると,まず,幼稚園教育要領(平成29年3月告示)12)においては,障害のある幼児の指導について,「第一章 総則」において次のように示している。

第5 特別な配慮を必要とする幼児への指導

 1 障害のある幼児などへの指導

障害のある幼児などへの指導に当たっては,集団の中で生活することを通して全体的な発達を促していくことに配慮し,特別支援学校などの助言又は援助を活用しつつ,個々の幼児の障害の状態などに応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。また,家庭,地域及び医療や福祉,保健等の業務を行う関係機関との連携を図り,長期的な視点で幼児への教育的支援を行うために,個別の教育支援計画を作成し活用することに努めるとともに,個々の幼児の実態を的確に把握し,個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとする。

このように幼稚園教育要領では,教育的な指導と配慮を進めるという観点から「個々の幼児の実態を的確に把握し,個別の指導計画を作成し活用する」と示し,「個々の幼児の実態を的確に把握」するとともに,「個別の指導計画を作成し活用する」として「個別の指導計画」は「作成」が目的ではなく,指導において「活用」することが目的であると明確に述べている。

次に,保育所保育指針(平成29年3月告示)13)では,「第一章 総則」において,3歳未満児については,個別的な計画を作成した上で保育にあたることを示した上で,障害のある子どもの保育については次のように示している。

 3 保育の計画及び評価

(2)指導計画の作成

 (略)

キ 障害のある子どもの保育については,一人一人の子どもの発達過程や障害の状態を把握し,適切な環境の下で,障害のある子どもが他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう,指導計画の中に位置付けること。また,子どもの状況に応じた保育を実施する観点から,家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図ること。

ここで示されている「支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図る」ことは,幼稚園教育要領で示されている個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成と活用を指していると解される。それは「一人一人の子どもの発達過程や障害の状態を把握し」た上で作成するとしていることからも分かる。

なお,幼保連携型認定こども園教育・保育要領(平成29年3月)14)においても,障害のある子どもの教育及び保育を進める上で,ほぼ幼稚園教育要領と同様のことが次のよう示されている。

 3 特別な配慮を必要とする園児への指導

(1)障害のある園児などへの指導

障害のある園児などへの指導に当たっては,集団の中で生活することを通して全体的な発達を促していくことに配慮し,適切な環境の下で,障害のある園児が他の園児との生活を通して共に成長できるよう,特別支援学校などの助言又は援助を活用しつつ,個々の園児の障害の状態などに応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。また,家庭,地域及び医療や福祉,保健等の業務を行う関係機関との連携を図り,長期的な視点で園児への教育及び保育的支援を行うために,個別の教育及び保育支援計画を作成し活用することに努めるとともに,個々の園児の実態を的確に把握し,個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとする。

個別に実態を把握すること,そして,その把握した実態に基づいた個別の指導計画を作成することが,現代の幼児教育及び保育おいて重要であることが分かる。この個別の指導計画の作成については,特別支援学校幼稚部教育要領(平成29年4月告示)15)の「第2章 ねらい及び内容」の「自立活動」にある「指導計画の作成に当たっての留意事項」に,次のようにその手順が具体的に示されているので参考になる。

 3 個別の指導計画の作成と内容の取扱い

(2)個別の指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとすること。

ア 個々の幼児について,障害の状態や特性,発達の段階や経験の程度,興味・関心,生活や学習環境などの実態を的確に把握すること。

イ 幼児の実態把握に基づいて得られた指導すべき課題相互の関連を検討すること。その際,これまでの学習状況や将来の可能性を見通しながら,長期的及び短期的な観点から指導のねらいを設定し,それらを達成するために必要な指導内容を段階的に取り上げること。

ウ 具体的な指導内容を設定する際には,以下の点を考慮すること。

(ア) 幼児が,興味をもって主体的に取り組み,成就感を味わうとともに自己を肯定的に捉えることができるような指導内容を取り上げること。

(イ) 個々の幼児が,発達の遅れている側面を補うために,発達の進んでいる側面を更に伸ばすような指導内容を取り上げること。

(ウ) 幼児が意欲的に感じ取ろうとしたり,気が付いたり,表現したりすることができるような指導内容を取り上げること。

エ 幼児の学習状況や結果を適切に評価し,個別の指導計画や具体的な指導の改善に生かすよう努めること。

オ 各領域におけるねらい及び内容と密接な関連を保つように指導内容の設定を工夫し,計画的,組織的に指導が行われるようにすること。

このように,障害のある子どもに対する指導は,的確な実態把握が出発点となり,その把握された実態に基づいて指導すべき内容と方法が計画され,それを適切に実施することが求められるのである。

また,ここで忘れてはならないこととして,幼稚園教育要領,保育所保育指針及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領のいずれも共通して述べられていることがある。それは,集団の中で教育・保育を行うことと述べられている点である。例えば,前掲の保育所保育指針においては,「障害のある子どもが他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう,指導計画の中に位置付けること」としている。また,前掲の幼稚園教育要領においては,「集団の中で生活することを通して全体的な発達を促していくことに配慮し」としているのである。ここまで個別的な視点からの実態把握が必要であり,指導計画が必要と述べてきたわけだが,これらいわゆる「3法令」は,障害のある子どもの幼児教育・保育に当たっては,集団的な視点も必要としているのである。個別的かつ集団的というのは一見矛盾していることを示しているようにも思えるが,実は学校教育というのは,そもそも集団に対して教育を行う中で,個別的な視点でもって関わることが求められるものであり,それを障害のある子どもにおいては集団の中での個別的な支援という在り方でもって明確にしているにすぎないともいえる。

7. 乳幼児教育における特別支援教育の実際

幼稚園教育要領第1章総則で示されているとおり乳幼児教育における指導の基本的考え方は,「幼児の自発的な活動としての遊びは,心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習であることを考慮して,遊びを通しての指導を中心」とすることになる。また,保育所保育指針第1章総則においても「子どもが自発的・意欲的に関われるような環境を構成し,子どもの主体的な活動や子ども相互の関わりを大切にすること。特に,乳幼児期にふさわしい体験が得られるように,生活や遊びを通して総合的に保育すること」と,遊びを通して総合的に保育することが述べられており,それは乳幼児教育において特別支援教育を行う場合も変わりのない基本的考え方である。

北九州市保育士会16)は保育所における保育活動の基本的特質として次の4点を挙げ,「学習に何らかの困難がある子どもたちにとって,彼らの学習や成長を助ける大事な要素となる」としている。

① 毎日,決まった生活リズムで規則正しく活動が繰り返される。

・同じ時間に,同じ場所で,同じ活動が繰り返される。

・場所と活動が対応し,保育の流れ(展開)がある。

② 活動や手順の手掛かりが明確である。

③ 大勢の子どもたちと一緒に活動する。

④ 同じ手順で,一定のルールにしたがって活動することが求められる。

そして,同じく北九州保育士会16)では,これらをもとに「障害のある子どもへの基本的な配慮」として次の4点を挙げている。

① 子どもが理解できる伝え方を配慮する。(ことばだけでわからない場合)

② 動き方の最初から最後までを,繰り返ししっかりと体験させる。(説明やモデルではわからない場合)

③ 動く“きっかけ”(手掛かり)に気付かせる。

④ 子どもが“今できるやり方”で教える。

保育所は,子どもたちが集団で生活する場であるという特性を生かして,特別な配慮が必要な子どもの自立と集団への参加のきっかけをつくり,さらにそれらを促していくことを,自然な生活の流れの中で可能にしているといえる。それゆえに,「個別の指導計画」を作成する際には,この保育所の特性を生かした指導を行うことが肝要といえよう。

阿部・小久保・本庄・山下17)では,保育所において「個別の指導計画」として「個別月案」という名称で様式を作成し,実際に障害のある子どもの「個別月案」を作成し,月1回のケース会議を経て,保育で活用するという実践研究を行っている。この実践研究で示されているように,現場の保育者ら自らが,「個別の指導計画」を実際の保育所の生活の中で生かしていける効果的な指導計画の様式を作成し,外部専門家による助言を生かして保育実践を行い,その実践の効果を検証するPDCAマネジメントサイクルを構築していくことが重要である。阿部18)19)では,この「個別月案」の記述内容から,「個別月案」を実際の保育実践で活用することによって,保育士の支援の質が上がっていることを報告している。また,阿部20)ではこの「個別月案」と月1回ケース会議の実施を始めて5年が経過した時点で,当該保育所の保育士ら13名を対象としてアンケート調査を実施した。「個別月案」を活用したことによって対象となる子どもの成長や発達に効果があったと思うかを4件法(かなり効果がある:4-ほとんど効果がない:1)で問うたところ,平均は3.43(SD0.42)であった。その理由としては,「自分の保育を定期的に見直せること」「担任間の共通認識をもつことができる」「専門家のアドバイスが有効である」ことが挙げられていた。

この日常の保育の中で個々の特別なニーズに適した介入を取り入れていく個別指導を融合した包括的なアプローチとして,アメリカで知られている「活動に根ざした介入」(Activity-Based Intervention; ABI)という方法がある21)。ABIにおける4つの基本的な指導観とそれに対応した4つの指導の枠組みは図6のように示されている22)

図6

ABIにおける4つの基本的な指導観と4つの指導の枠組み

子ども主導の活動とは,子ども自らが始めた活動や子どもが主体的に活動を導いている状態を指し,「自由遊びの時間」といってもいいかもしれない。ルーチン活動とは,子どもが日々の生活の中で習慣として行われている必要不可欠な活動といえる。設定活動とは,保育者が主導して計画する活動で,「設定保育の時間」といっていいかもしれない。この中に子どもが学習する多様な機会が埋め込まれていると考える。そのために,日常生活で必要度が高く,さまざまな状況の中で幅広く用いることができる目標を設定することになる。そして,その目標に応じた行動を示した時に,適切なフィードバックを与えて,その行動を強化していくことが求められることになる。これをABIは,アセスメント→目標の設定→介入→評価→アセスメント→…というリンクシステムという包括的なシステムで,日常生活の活動の中に目標を埋め込んで指導を実現させようとしている。これは,我が国の「個別の指導計画」を,日常生活の中に多数ある自然な学習機会の中に埋め込んだような,チームによる指導アプローチのように見える。家庭でも取り組むことはできるのは無論のこと,子どもの生活時間の長い保育所や幼保連携型認定こども園においては適した包括的アプローチではないかと考えられる。

8. おわりに

本稿では,まず,特別支援教育とは何かを,特別支援教育の理念から概観し,次に特別支援教育に係る制度的な整備について考察を行った。次に,特別支援教育以降の直近の状況について,障害者権利条約の批准,障害者基本法の改正,障害者差別解消法の施行,そして合理的配慮の提供と,基本的な考え方を法令等から解説を行った。そして,乳幼児教育における特別支援教育について,基本的な考え方をいわゆる3法令から示した上で,実際の指導の在り方について最新の知見を紹介した。

その結果,次のことが明らかにできた。

まず,乳幼児教育における特別支援教育は,子どもたちの主体的な遊びや活動が成立することによって,はじめて実施することができるということである。次に,乳幼児教育における特別支援教育を推進することが,乳幼児教育におけるインクルーシブ教育,いわゆるインクルーシブ保育を構築していくことになるということであり,それは合理的配慮の提供により障害の有無に関わらず子どもたちの主体的な遊びや活動が成立することで実現されていくということである。最後に,ここでの合理的配慮の提供とは,個別の指導計画やABIによる包括的なアプローチといった子どもの主体的な遊びや活動,そして生活の中に埋め込まれた多様な学習機会の提供とその活用のことである。本来,合理的配慮は,実際にいる障害者が表明した後に事後的に生じることになるものをいうが,教育機関においては,例外的に「「障害のある子どもが,他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために,学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり,障害のある子どもに対し,その状況に応じて,学校教育を受ける場合に「個別に必要とされるもの」とされていることから,これらいわゆる介入技法やアプローチは合理的配慮の提供と考えられる。

付記

本稿は,平成30年5月27日(日)に開催された九州産業大学人間科学部「子ども教育学科開設記念プチオープンキャンパス」における特別講座「乳幼児期からの特別支援教育の推進」(講師:子ども教育学科教授 木舩憲幸氏)による講演の記録を基に,大幅に加筆修正したものである。

文献
  • 1)  特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議.今後の特別支援教育の在り方について(最終報告).2003.
  • 2)  文部科学省初等中等教育局.特別支援教育の推進について(通知).2007.
  • 3)  中央教育審議会.特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申).2005.
  • 4)   宮木 秀雄, 柴田 文雄, 木舩 憲幸.小・中学校の特別支援教育コーディネーターの悩みに関する調査研究―校内支援体制の構築に向けて.広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要 2010; 8: 41–46.
  • 5)  文部科学省.小学校学習指導要領(平成29年告示).東京:東洋館出版社,2018.
  • 6)  文部科学省初等中等教育局特別支援教育課.別紙1平成29年度特別支援教育体制整備状況調査結果について.2018.
  • 7)  内閣府.障害者制度改革の推進のための基本的な方向について(閣議決定).2010.
  • 8)  UNESCO. The Salamanca Statement and Framework for Action on Special Needs Education, 1994. Retrieved from http://unesdoc.unesco.org/images/0009/000984/098427eo.pdf (29 Octorber, 2018).
  • 9)  中央教育審議会初等中等教育分科会.「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」2012.
  • 10)  内閣府.障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針.2016.
  • 11)  阿部敬信.「個別の教育支援計画」,「個別の指導計画」を意味あるものとするために.授業づくりネットワーク,東京:学事出版,2017; 25: 58–63.
  • 12)  文部科学省.幼稚園教育要領〈平成29年告示〉.東京:フレーベル館,2017.
  • 13)  厚生労働省:保育所保育指針〈平成29年告示〉.東京:フレーベル館,2017.
  • 14)  内閣府・文部科学省・厚生労働省.幼保連携型認定こども園教育・保育要領〈平成29年告示〉.東京:フレーベル館,2017.
  • 15)  文部科学省.特別支援学校幼稚部教育要領―平成29年4月告示.東京:海文堂出版,2018.
  • 16)  北九州市保育士会.気になる・困った行動を起こさない保育的配慮―保育活動への参加の促進.藤原義博(監)平澤紀子,山根正夫,北九州市保育士会(編),保育のための気になる行動から読み解く子ども支援ガイド.東京:学苑社,2005, 47–99.
  • 17)  阿部敬信,小久保次郎,本庄公多子,山下香織.保育所における特別な支援が必要な子どもに対する個別の支援計画の作成と活用―組織的なPDCAマネジメントサイクルによる活用―.日本保育学会第66回大会発表要旨集:2013, 669.
  • 18)  阿部敬信.保育所における個別の指導計画による保育実践の効果―組織的なPDCAマネジメントサイクルによる活用―.日本保育学会第67回大会発表要旨集:2014, 921.
  • 19)  阿部敬信.保育所における個別の指導計画による保育実践の効果第2報―組織的なPDCAマネジメントサイクルによる活用―.日本保育学会第68回大会発表要旨集,2015, ID19020.
  • 20)  阿部敬信.保育所における個別の指導計画による保育実践の効果第3報―保育士に対する5年間の作成と活用を振り返る質問紙調査をとおして―.日本保育学会第69回大会発表要旨集,2016, 651.
  • 21)  プリティフロンザック,クリスティ・ブリッカー,ダイアン.子どものニーズに応じた保育―活動に根ざした介入.七木田敦,山根正夫(監訳),東京:二瓶社,2011.
  • 22)  松井剛太.ABIの基本.七木田敦,山根正夫(編著),保育者のためのABI(活動に根ざした介入)実践事例集―発達が気になる子どもの行動が変わる!東京:福村出版,2017, 16–21.
 
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