2019 Volume 1 Pages 78-84
子ども教育学科1年次前期の「保育原理」の授業では,現代の幼児教育の基盤となった子どもの主体的な遊びを尊重したフレーベルの幼児教育論等基本的な事項を学ぶ。
しかし,4年制の保育者養成校において,実習のない1,2年次に,学生が保育の理論と実践を乖離したり,保育職への意欲を減退したりすることが,課題となっている。その課題への対応の一つとして,本学科には,KSU子育て支援室(以下,子育て支援室と略す)が設置され,学生は,この子育て支援室の会員親子と一緒に交流をする。今回の交流事業において,学生はひまわりの種を会員親子と一緒に植え,継続的に水やりをした。この体験を通して,学生は,子どもにとって自然との関わりが大切なことを学んだ。
本稿は,子育て支援室との連携により,1年次学生の保育理論の学習と,体験による保育理解の統合を目的とした教育実践の報告である。
今年度4月に開設された本学の子ども教育学科は,本学にこれまでなかった教員養成系の学科であり,保育士資格や幼稚園教諭一種免許状にプラスして特別支援教諭一種免許状が取得できる。まさに,すべての子どもに質の高い幼児教育を実践するための保育者養成の教育的環境を整備した学科といえる。
質の高い保育者養成が望まれる現代において,4年制の保育者養成校の数は増加する傾向にある。しかしながら,4年制の保育者養成校における課題は,子どもと触れ合う実習のない1,2年次に学生が保育の理論と実践を乖離したり,保育職への意欲を減退したりすることである。
そこで,本学では1年次から保育・教育ボランティアや,インターシップ等の体験をすることにより,子どもと関わる楽しさや保育職のやりがいを持続し,その後に予定されている実習への意欲,及び保育職への動機づけを高めるように教育内容を工夫している。
また,子ども教育学科の附属施設として,人間科学部棟の1階にKSU子育て支援室(以下,子育て支援室と略す)が設置されている。この子育て支援室は,乳幼児期の子どもに望ましい遊び環境を提供するため,同時間帯の利用を8組程度に調整し,週2回,1日2時間程度利用する予約制のシステムをとっている。現在,登録会員は約50組である。利用する子どものほとんどが,0~2歳児であり,付き添いの保護者は母親である。
学生は,授業の中で,子どもと保護者,保育スタッフが遊んでいる姿を観察したり,関わったり,子育て講座のイベントに保育アシスタントとして参加したりしてきた。
本稿では,子育て支援室と連携した活動を通して,1年次における学習の成果および,学生の意識の変容や育ちについて考察したい。
1年次前期開講の「保育原理」の授業の目的は,「保育に関する基本的事柄についての理解を深め,保育を行う上でその根本となる理念や意義,現在の保育事情について理解を深めること」である。つまり,保育の基本的な事項を教授する科目であるが,保育の思想や歴史等,学生にとってはこれまで知らなかった内容を学習する。そのため,1年次の学生には,実践との関連付けがしにくい科目であると考える。
この授業の第2回目の授業内容では「日本の幼児教育の源流であるフレーベルの教育理論」について解説する。また,ドイツで最初にフレーベルが始めた幼児教育施設や,開発した乳幼児の玩具(ガーベ)について,DVDを使用し説明する。
本稿は,子育て支援室の会員親子との交流プログラムにおける学生の栽培活動の体験を通して,理論と実践の統合における学習の成果や学生の意識の変容について,ラベルワークや感想シートの分析から検討する。
5月に実施された子育て講座「大学生との交流プログラム」ミニひまわりの種うえの栽培活動の体験と,それに関連した「保育原理」の授業における実践の経過は,以下の通りである。
4月19日 「保育原理」「日本の幼児教育の源流であるフレーベルの教育理論」子どもは,自発的な遊びの中で多くのことを学んでいること,保育者は,子どもの自己活動を引き出すように,教育的環境(玩具や素材等,身近な大人や友だち,事柄等)をデザインする役割があることを学ぶ。
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5月2日 子育て講座「大学生との交流プログラム」ミニひまわりの種うえ学生と会員親子で一緒にミニひまわりの種を植えた。その後の水やり当番を決めていたが,継続的な実施が難しい状況だった。
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6月1日 「保育原理」「環境を通して行う教育」「命の教育」DVDの視聴「保育所保育指針」」に記されている「身近な生き物との関わりについては,子どもが命を感じ,生命の尊さに気付く経験へとつながる」註1)ことを,まず学生自身が体験することが大切であると考えて,福岡県のK高校の農業科の授業「命の教育」のDVDを視聴することにした。この授業の概要は,生徒一人一人が自分で飼育するニワトリの卵に命名し,孵化させて食肉にするまでのプロセスを通して,ニワトリの命を頂くことで,自分達人間の命が支えられている事を理解するというものであった。
このDVDを視聴した目的は,学生自身の身近な生き物との関わりや,子どもが関わる意味について考える時間を持つためであった。「命の教育」視聴後に,学生は自分の感想シートにDVD視聴の感想を書いた。
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6月7日 「ミニひまわり小夏ちゃん開花プロジェクト」の開始「小夏ちゃん開花プロジェクト」を開始する理由や概要を説明した。5月に植えたミニひまわりの品種は「小夏」という名前であることと,大学の全体的な設計の関係により,新校舎の陰になる場所に花壇を設置することになった事情を説明し,開花が難しいことを伝えた。そして,水やり当番を決めて,交代で栽培活動をすることを呼びかけた。その際にDVD「命の教育」視聴の飼育場面と同じく,ミニひまわりの名前を呼んだり,言葉をかけたりすることを学生に依頼した。
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7月12日 ミニひまわりが45個の花を開花7月10日に,学科の教員が造園業者にミニひまわりが葉はつけたが,開花しないことを相談した際に,「この花壇では開花は無理」と言われた。7月12日に,学生へ造園業者の前述のコメントと,ミニひまわりが45個開花した報告をした。
その後,毎週「保育原理」の授業で,開花数を学生たちに伝えた。学生は水やり当番を,7月19日まで交代で続けた。
月日 | 7/12 | 7/13 | 7/14 | 7/16 | 7/17 | 7/18 | 7/19 | 7/20 |
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開花数 | 45 | 65 | 74 | 90 | 96 | 100 | 107 | 111 |
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7月12日 ラベルワークによる振り返りこのプロジェクトの振り返りのために,以下の2つの課題に対して2枚のラベルにそれぞれが自分の考えを書き,特にポイントとなる言葉に下線を付けた。ワークの2つの課題は以下の通りである。
課題① なぜ小夏ちゃん(ミニひまわり)は111個も花をつけることができたのか
課題② 子どもは植物栽培を通してなにを学ぶのだろうか。
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7月20日 子育て支援室会員親子にミニひまわりをプレゼントする最後の授業の後,会員親子と花壇に出かけ,ミニひまわりを切って子どもに渡した。その後,みんなで記念写真をとった。この日の開花数は111個であった。
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7月23日 オープン・キャンパス「小夏ちゃん開花プロジェクト」の成果発表7月と9月の2回のオープン・キャンパスで,学生がパワーポイントを使用し,「小夏ちゃん開花」プロジェクトの成果発表をした。また,この発表のために,プロジェクトのプロセスをボードフォリオに作成して掲示した。
「小夏ちゃん開花プロジェクト」のラベルワーク
「小夏ちゃん開花プロジェクト」の学びの記録(ボードフォリオ)
ラベルワークの結果を見ると,一番多かったグループで①「命を育てる大切さ」,「愛情を注ぐ」(13人)だった。次に,②「責任感を持つ」(8人),③「見守ること」,「生命の力強さ」(4人),④「成長する喜び」,「子どもの五感を育てる」,「花の命の中に自分を見る」(自分と花との成長の似ている部分や違う部分を知ることができる。)が,2人ずつという結果だった(表2「ラベルワークの分析」参照)。
「保育原理」等で教授している「幼稚園教育要領」等の「環境」の「ねらい」は,「身近な環境に親しみ,触れあう中で,様々な事象に興味・関心をもつ」註2)と記され,「内容の取扱い」は,「身近な事象や動植物に対する感動を伝え合い,共感し合うことなどを通して自分から関わろうとする意欲を育てるとともに,様々な関わり方を通してそれらに対する親しみや畏敬の念,生命を大切にする気持ち,公共心,探究心などが養われるようにすること」註3)と記されている。生き物との関わりによって,子どもが命を感じ,生命の尊さに気付く経験へとつながる。また,そうした気づきを促すことが,保育者の留意すべき点である。「環境」の「内容」は,「身近な動植物に親しみをもって接し,生命の尊さに気付き,いたわったり,大切にしたりする」註4)である。身近な動植物に親しみをもち,愛情をもって関わろうとする子どもの感性を育てるためには,学生自身の体験が必要であり,学生に命への畏敬の念や豊かな感性を育てることが重要である。
今回の「小夏ちゃん開花プロジェクト」は,開花が困難な環境で,111個の花をつけたミニひまわりの命のたくましさと,育ってほしいという願いをもち,それを言葉で表現し,愛情を注いだり,責任をもって水やりをしたりする大切さを,学生自身が体験できたことが明らかになった。
フレーベルは,子どもの成長を植物にたとえ,保育者は庭師であって,育つ主体は子どもであると述べている。学生が,この幼児教育論を理解するのは,今後様々な子どもとの出会いが必要であるが,その学びの出発点での体験としては,効果的であったと考える。
人数 | 分類した グループの タイトル |
個々の学生の感想 |
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13人 | 命を育てる 大切さ |
・子どもが植物を育てることによって,生き物や植物に対する命の大切さを学ぶことができ,愛情をそそぐ事が出来る様になる。 ・植物を育てることで,季節の植物を知ると共に命を大切にすること,生き物を育てることの重要性を感じたり,愛情や責任感を育むことができるようになる。 ・植物などを育てることで命の大切さ尊さを,実感させることができる。 ・植物を育てる大切さ,植物の成長過程を見て植物の生命力のすごさを学ぶことができる。 ・植物を育てていく中で,生命の大切さ,素晴らしさを知って,植物と一緒に子ども達も成長していくことができる。 ・命の大切さや尊さを知り,自分の命の大切さを知ることができる。また,自分が育てるという責任感が持てるようになり,植物が育った時に喜びや達成感を味わう事ができる。 ・植物を育てることで,命の大切さを知ることができる。植物を育てる楽しさや大変さを知ることができる。 ・植物を育てることで,植物の成長の仕組みや生命があるということ,また自分自身が育てるという責任感と,立派に成長した時の達成感を学ぶことができる。 ・子どもにとって植物を育てるということは,命の大切さを知ることや成長する喜びや達成感を味わうことにつながると思う。 ・命の尊さ,大切さなどを直に感じることができる貴重な体験であるから。水をあげること,愛情をたくさんあげること,持続すること。 ・1日1日で成長して変化が見られる植物を実際に見ていくことで,命があるということが分かっていく。 ・種から育てることで「命」の大切さを学べ,母から頂いた「命」を大切にするようになる。 |
13人 | 愛情を注ぐ | ・皆の「育ってほしい」という思いが届いたから。 ・元気に育つようにという気持ちや愛情をもってすることができたから。 ・「たくさん咲いて」と小夏ちゃんに願いながら,水をかけた。 ・水やりの時に「大きくなーれ」や「早く咲いてね」など愛情のある言葉をかけたので,花をつけてくれたと思う。 ・小夏ちゃんは花なので,言葉が返ってくるわけでも,反応があるわけでもないけれど,水やりをする時は声をかけたり,成長すると「よく育っているね」とほめたりして愛情を注いだ。 ・小夏ちゃんにたくさん愛情をかけて,水やりや雑草抜きをしたので,とっても大きく育った。 ・小夏ちゃんに水と言葉をかけてあげると,すくすく成長しました。 ・たくさんの人から声をかけてもらって,水をたくさんもらったから。 ・なかなか花は咲かなかったけど,毎日コツコツとあげ続けることで咲いたと思う。 ・皆が愛情をもって水をあげたから,小夏ちゃんはとても元気に育った。 ・暑さに負けずに元気に育ってという思いを込めて水やりをしました。 ・子どもが植物を育てることで,植物を愛で,慈しむ心を感じ,育てることの大切さを学ぶ。 ・日陰だったけど,自分達が声をかけながら水をかけてあげたり,話しかけたりすることで,愛情が小夏ちゃんに伝わったから。 |
8人 | 責任感を持つ | ・自分で育てることで,花をつけた時のよろこび,達成感を学べ,自分が責任をもって世話をしないと枯れてしまうという責任感を養うことができる。 ・自分で種から植えて,水をやり,花を咲かせるという一連の流れの中で,子どもは,自然の壮大さや力強さ,そして育てることを通して責任を学ぶ。 ・一人ひとりから水や愛情が注がれていたから。 ・子ども教育学科のみんなで交代で水やりをしたから。 ・育つことは簡単なことではない,毎日ていねいに世話する,責任を持つこと。 ・植物を育てるのは一日の工夫ではない,長い時間世話するから,子どもに責任感を培養する意味があります。 ・毎回きまった時間に水をやり,毎日スクスク育つように雑草をとり,栄養を吸収させたので育ったと思う。 ・自分で水やりをするなどのお世話をすることによって,キレイな花が咲いたのを見て,達成感を味わうことができる。 |
4人 | 見守ること | ・自分達で育てることで,成長を見守ることができます。 ・初めて,自分で手をかけて育てることで,芽が出たり花が咲いたりする感動を味わうことができる。そして,植物を通して命の大切さを学ぶことができる。 ・上手くいかないことを楽しんだり,季節の変化を感じたり,生と死を身近なものとして意識し続けることができる。 ・動物とはちがった植物は,感情を伝えてこない。自分がお世話をしないと,植物は死んでしまうということ。生き物の大切さを学ぶ意味がある。 |
4人 | 生命の力強さ | ・他のミニひまわりに比べて,小夏ちゃんは悪条件にもかかわらず,みんなが愛情を注いで言葉をかけてあげることで花を咲かせた。 ・みんな毎日のお世話のおかげで状況的に咲くのが難しいのに,たくさん咲いてくれてよかった。いつどんな時でも,小夏ちゃんのことを忘れられないくらいかわいい。 ・雨の日も風の日も台風の日も小夏ちゃんのことを考えなかった日は一日もありませんでした。この災難に耐えた小夏ちゃんはとても強いミニひまわりに育つと思う。 ・周りに遮蔽物が多かったから,台風や豪雨の影響を直接受けなかった。 |
2人 | 成長する喜び | ・自分で植えた種が花をつける喜び。 ・植物を育てるということは,命の営みと植物を成長させることで,成長体験を得ることができると思います。 |
2人 | 子どもの五感 を育てる |
・植物とのふれあいは知育に効果的な五感を刺激し,生長の大切さを学ぶことができる。将来学校で学ぶ理科や生物に興味をもつきっかけになる。 ・植物との触れ合いは知育に効果的な五感を刺激し,生命の大切さを学ぶことができます。そして最後まで育てる責任感を覚えます。 |
2人 | 花の命の中に 自分を見る |
・自分で種を植えたり,水をあげたりなどお世話をすることで,花の成長を身をもって体験することができる。 また,自分と花との成長の似ている部分や違う部分を知ることができる。 ・自然との触れ合いを楽しみ,生命の尊重をもち,子どもの感情の表現を,植物を育てることを通して養うことができる。 |
本年度4月から10月までの半年間に,本学科の学生が子育て支援室において,会員親子または,地域の乳幼児親子と触れ合う機会は,各学生により出席の回数は異なるが7回実施した(表3)。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 9月 |
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子育て講座① わらべ歌遊び |
子育て講座② ミニひまわりの種まき |
子育て講座⑤ ブロックで遊ぼう |
七夕 夕涼み会&コンサート |
絵の具スタンプ遊び |
ミニひまわり開花 | ||||
砂場遊び |
表3のような乳幼児親子との直接的な触れ合いの中で,学生が半年間の授業や講義による学習を活かそうとしているか,写真と学生のレポートを参考に考察してみた。
前期の授業で学生は,「保育者論」「保育原理」「保育内容総論」等,保育に特化した授業を受講していた。これらの科目は,保育や保育者の基礎知識や理論に関する内容である。その中では,人的環境として重要な役割を担う保育者の基本的姿勢として,子どもやその保護者を受容し,尊重することが重要であることを学んでいる。その視点で,7月「ミニひまわり開花」と「砂場遊び」の写真を見ると,子どもと接する時の学生は,一様に姿勢を低くし,子どもの目線や動きに自分のそれを合わせている。対照的に,子どもと接していない後方にいる学生は,自分にとって楽な体勢で立っている(写真3)。また,花を切るハサミは,使用しない場面では刃先を内側に収め相手に危険が及ばないようにしているのがわかる(写真4)。この2つの場面の写真から,親子と触れ合っている時に学生は,心身が未成熟の乳幼児に対して意識的に配慮していると考えられる。
低い姿勢と楽な体勢
ハサミの持ち方
次に,9月「絵の具スタンプ遊び」を計画,実施した学生の振り返りのレポートからは,子どもの姿や保護者の姿を観察したり推察したりして考えたことが保育者の視点の芽生えとして伺える。例えば,興味や関心を示さない子どもへ「できた実物を見せたり,方法をしてみせたりする。」という具体的な働きかけを試みている。グループに1歳児や2歳児が混在している様子からは,「月齢の高い子どもほど,興味や関心が高く活動に積極的である。」と推察している。子どもが学生に対して人見知りする様子については,「保護者は手を握ったり頭をヨシヨシしたりして安心させていた。」と子どもの不安行動に対する保護者の具体的手立てを観察している。絵の具で手が汚れるのを嫌がる子どもに対しては,「タオルで手をふいたり水を用意したりすべきだった。」と子どもの想定外の様子に対応できていなかったことを反省している。手洗いという基本的な生活習慣については,「手を洗う時に腕まくりや石鹸をつける順番を知らせることが習得へつながるのではないか。」という気づきがみられる。
上記のように,座学で学習した保育の理論について,親子との具体的体験を通して,現実的に体感したり体得したりできているのだということが推察でき,本学科の学生が子育て支援室を利用する親子を通して,保育施設とは異なる身近な子どものいる現場から,小さな気付きや一歩ずつの歩みでも乳幼児教育や保育を学んでいるのが感じられる。
さて,学生の学びや育ちの変容が見られる一方で,学生が子育て支援室の会員親子と日常的に関わる機会が少ないという課題が残る。学生が,自己の主体的な学びの場として子育て支援室を訪れることが殆んどない。
会員の保護者は,学生との触れ合いについて好意的に受け入れており,それを通して昨今の保育者養成校学生の学び方に興味を持つ人もいる。教室の隣に乳幼児が遊ぶ場があり,そこには,わが子と学生との触れ合いを受容してくれる子どもの保護者がいる。そのような子育て支援室を学生が自分の体験学習の場としてもっと活用したいと思えるように,工夫をしていく必要がある。
「絵の具スタンプ遊び」は,学生ボランティア活動であったが,そのような取り組みに対する積極的受け入れや計画提案など,子育て支援室側から学生に向けて,学習の質を高めるための実習現場としての魅力を発信していくことも課題解消へ繋がっていくのではないかと考える。また,保育現場での実習前後に心の準備をしたり,振り返りのために,保育現場経験者の子育て支援室職員と気軽に語り合ったりすることも活用策となり得る可能性がある。このように子育て支援室での体験学習の層が厚くなると,直接子どもと接している場面でなくても,保育現場や子どもがいる場所では,意識的かつ自然に,自分の行動や体勢,言葉などに配慮を有することができ,小さな気付きも察することができる質の高い保育者,教育者として主体的に育っていけるのではないかと考えられる。