2024 Volume 6 Pages 1-12
大学入学時の健康意識や生活習慣,健康度の自己評価を,コロナ禍を経験せずに入学した学生2,653人とその最中に入学した学生5,154人で比べた。次に,3,4年次生の生活習慣と健康度の自己評価を,コロナ禍を経験していない学生4,187人とコロナ禍を経験した学生4,013人で比べた。最後に,3,4年次の精神的な健康度の自己評価あるいは入学時からの変化を目的変数として,ロジスティック回帰分析を行った。コロナ禍最中の新入生は男女とも健康意識が高く,運動と無縁の学生が減っていた。女性では身体的健康度の自己評価がより良かった。コロナ禍を経験した3,4年次生は,男女とも運動習慣を有する頻度が高く,女性では朝食をより高頻度に摂取していた。精神的な健康度の自己評価が良いことや,その改善と関連するのは3,4年次の朝食摂取の習慣で,コロナ禍を経験すると精神的な健康度は悪化していた。朝食摂取の習慣が大切である。
First, at the time of entrance into Kyushu Sangyo University, we compared health awareness, lifestyles, and self-evaluation of the physical and mental health status in 5,154 students with and in 2,653 students without experience of Corona disaster. Second, we also compared lifestyles and self-evaluation of the health status in 4,013 students with and 4,187 students without experience of Corona disaster during the period of attendance at the university. Finally, to know the relating factors to the self-evaluation of mental health status or its changes from the entrance to the junior or senior year of the university, we performed logistic regression analysis. Results showed that the freshmen with experience of Corona disaster have higher health awareness and that less students were not involved in the physical exercise. The 3rd or 4th year students of the university who experienced Corona disaster after the entrance have more frequently habitual physical exercise in men and women, and in women, more frequently take breakfast. Logistic regression analysis shows that, in men and women, better self-evaluation of mental health status or its changes from the entrance to the junior or senior year of the university were related to the habitual taking of the breakfast, and the experience of Corona disaster related to worsened self-evaluation of mental health status. Therefore, habitual taking the breakfast is important.
COVID-19パンデミックの影響は多岐にわたった。国内外で大学生のメンタルヘルスが悪化したことを述べた論文が多い1)~3)。一方では就職内定率の低下も報じられ4),学生は求人状況の悪化5)にも直面した。九州産業大学では,学生の感染は福岡県の20歳代成人よりも少なかったが6)7),コロナ禍は単に感染するか否かという問題に止まらず,感染防止策を講じていればよいわけでは決してなかった。
本学では,コロナ禍の収束が見通せなかった令和3年度にも就職希望者の99.2%が内定を得た8)。学生の努力とともに,教職員の手厚い支援を示すものと推察できるが,卒業者2,161人のうち就職希望者は1,887人で,就職を希望しなかった学生が277人いた。先行研究1)~3)を見ると,長期にわたりメンタルヘルスが悪化し,就職を望めなかった学生がいた可能性は否定できないが,そのような調査は行われていない。
そこで本研究では,学生の健康状態へのコロナ禍の影響を明らかにするため,定期健康診断と生活習慣調査の結果や健康支援サービスについての希望調査の結果を分析した。1)コロナ禍に見舞われる前に入学した学生とコロナ禍の最中に入学した学生を比較し,入学時の健康意識や生活習慣,健康度の自己評価を調べた。さらに2)コロナ禍が始まる前に卒業―コロナ禍を経験せずに学生生活を送った学生とコロナ禍の最中に学生生活をおくり,種々の制限を経験しながら3,4年次に進級した学生を比較し,進級した時点での生活習慣や健康度の自己評価を調べた。このようにして,学生の実態を知ることを試みた。3)最後に,3,4年次の健康度の自己評価やその変化に影響を及ぼす因子をロジスティック回帰分析によって抽出し,今後,コロナ禍のような健康危機に備えて,学生支援の方向性を示すことを試みた。
1)2019年から2021年までの3年間,九州産業大学の各学部に入学した新入生を対象とした。毎年,4月上旬の定期健康診断時に自記式の生活習慣調査や健康支援サービスについての希望調査も行う。対象者は調査用紙の質問を読み,回答を記入する。新入生はコロナ禍の期間中も含め,毎年95%以上が定期健康診断を受診し,受診者のほぼ全員が生活習慣調査や健康支援サービスについての希望調査に応じる。そこで,定期健康診断を受診し,かつ調査に回答した新入生を実際の分析対象(2019,20,21年それぞれ,女 816,881,859人,男 1,837,1,768,1,646人)とした。健康意識と生活習慣,身体的および精神的な健康度の自己評価を調べ,2020年と2021年のパンデミック下の成績を,2019年のパンデミック以前の成績と比較した。健康意識は,① 酒や煙草と健康の関連,② 栄養バランスの取れた食事,③ 高血圧や糖尿病などの生活習慣病予防,④ 発熱や下痢などへの対処,⑤ 健康増進を目指した運動プログラム,⑥ 性感染症予防や避妊法,についての情報提供の希望や⑦ 対人関係や精神的な悩みについてのカウンセリングの必要性を感じるかについての質問からなっている。生活習慣は,運動習慣と朝食摂取の習慣を取り上げた。健康度は身体的側面も精神的側面も,非常に良い,そこそこ良い,良くも悪くもない,やや悪い,非常に悪いの5段階で自己評価させた。
2)九州産業大学に入学以前にも在学中にもコロナ禍を経験しなかった学生と在学中にコロナ禍を経験した学生の比較は,以下のようにした。2016,17年に入学し,2019年に3,4年次に進級した者は,コロナ禍を経験しなかった学生である(2016と17年に入学し,2019年に3,4年次に進級した者はそれぞれ,女 497,514人,男 1,546,1,630人)。2019,2020年に入学し,2022年に3,4年次に進級した者は,コロナ禍を経験した学生である(それぞれ,女609,667人,男1,349,1,388人)。コロナ禍を経験したか否かによって3,4年次の生活習慣や健康度の自己評価が異なるかを比べた。さらに,入学時の健康度の自己評価と比べた時の変化を,2段階以上悪化,1段階の悪化,不変,1段階改善,2段階以上改善の5つに分けて評価した。
3,4年次に至るまでに除籍・退学・休学したり,健診を受診しなかったり,諸調査にきちんと回答しなかったりした学生がいるので,学生の数は1)よりも少ない。1),2)の分析は先行研究7)を参考に,女子学生と男子学生を別々に扱い,クロス集計表を作成した。
3)最後にロジスティック回帰分析を行った。3,4年次の健康度の自己評価あるいは入学時からの変化を目的変数とし,大学でコロナ禍に遭遇したか,学年,性別,3,4年進級時の運動習慣,3,4年進級時の朝食摂取の習慣,3,4年進級時の喫煙習慣を説明変数とした1)~3)9)~11)。
(2) データ解析定期健康診断や諸調査で得られたデータは,全て,エクセルファイルとして,健診機関から共同研究者の学医が提供を受けた。各調査用紙に「回答を集計して統計的な解析を行い,得られた結果を学会や学術雑誌に発表することがありますが,個人の名前やその回答の内容が外部に漏れることは,決してありません。それでもなお,この調査書に記載されたあなたの情報を,研究の目的に使用することに関して同意できない場合,学医あるいは他の保健室のスタッフにお知らせください。申し出るのに期限は設けておりません」という文章を掲載し,それを読んだうえで回答するようにした。後日の削除依頼はなかった。
実際の統計解析には市販の統計ソフト「エクセル統計 BellCurve® for Excel」を用いた。P値0.05未満を統計学的な有意水準とした。
本研究の実施については「大学生の定期健康診断と日常生活習慣調査の分析」として九州産業大学の倫理委員会の審査を受け,承認された(H27-0008号)。
定期健康診断と同時に実施した健康支援サービスについての希望調査(表1)では,男女の差はあるものの,コロナ禍の最中に入学すると,コロナ禍以前の入学者に比べて,それぞれの健康情報を参考に生活を改善したいという学生の割合が増加しており,回答分布の差はいずれも有意(P<0.001)であった。一方,対人関係や精神的な悩みについてのカウンセリングを是非ともやってほしいという回答も,全く不要であるという回答も減っていた。そして,あるに越したことはないという回答が増加していた。これらの差も有意(P<0.001)であった。
2019年(コロナ禍を未経験)と2020,2021年(いずれもコロナ禍を経験(最中))の新入生が表明した健康情報の提供や支援に関する希望.( )内の数値は入学年ごとに見た各回答の割合(%).
女子学生 | 男子学生 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コロナ禍を | 入学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | 3 | 4 | |||
① 酒や煙草と健康の関連 | 未経験 | 2019年 | 246 (30.4) |
160 (19.8) |
107 (13.2) |
297 (36.7) |
488 (26.8) |
298 (16.4) |
290 (15.9) |
746 (40.9) | ||
経験(最中) | 2020年 | 335 (30.4) |
183 (19.8) |
102 (13.2) |
258 (36.7) |
482 (27.3) |
376 (31.3) |
294 (16.6) |
615 (34.8) | |||
経験(最中) | 2021年 | 307 (35.9) |
193 (22.6) |
128 (15.0) |
227 (25.5) |
451 (27.6) |
353 (21.6) |
305 (18.7) |
525 (32.1) | |||
P<0.001 | P<0.001 |
コロナ禍を | 入学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | 3 | 4 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
② 栄養バランスの取れた食事 | 未経験 | 2019年 | 420 (51.9) |
182 (22.5) |
161 (8.5) |
146 (10.5) |
714 (39.1) |
364 (19.9) |
225 (12.3) |
524 (28.7) | ||
経験(最中) | 2020年 | 554 (63.0) |
173 (19.7) |
60 (6.8) |
92 (10.5) |
816 (46.2) |
360 (20.4) |
205 (11.6) |
387 (21.9) | |||
経験(最中) | 2021年 | 548 (63.9) |
168 (19.6) |
48 (5.6) |
93 (10.9) |
756 (46.2) |
354 (21.6) |
180 (11.0) |
347 (21.2) | |||
P<0.001 | P<0.001 |
コロナ禍を | 入学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | 3 | 4 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
③ 生活習慣病の予防法 | 未経験 | 2019年 | 390 (51.9) |
176 (22.5) |
67 (8.5) |
176 (10.5) |
751 (4,101) |
339 (18.6) |
216 (11.8) |
521 (28.5) | ||
経験(最中) | 2020年 | 464 (63.0) |
190 (19.7) |
91 (6.8) |
134 (10.5) |
781 (44.2) |
341 (19.3) |
214 (12.1) |
430 (24.3) | |||
経験(最中) | 2021年 | 447 (63.9) |
179 (19.6) |
91 (5.6) |
138 (10.9) |
744 (45.5) |
335 (20.5) |
187 (11.4) |
370 (22.6) | |||
P=0.0104 | P=0.0044 |
コロナ禍を | 入学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | 3 | 4 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
④ 発熱や下痢などの対処 | 未経験 | 2019年 | 502 (62.1) |
116 (14.4) |
54 (6.7) |
136 (16.8) |
855 (46.8) |
318 (17.4) |
175 (9.6) |
478 (26.2) | ||
経験(最中) | 2020年 | 602 (68.6) |
132 (15.0) |
57 (6.5) |
87 (9.9) |
968 (54.8) |
306 (17.3) |
150 (8.5) |
344 (19.5) | |||
経験(最中) | 2021年 | 554 (65.9) |
131 (15.3) |
62 (7.2) |
99 (11.6) |
914 (55.8) |
288 (17.6) |
147 (9.0) |
288 (17.6) | |||
P=0.0023 | P<0.001 |
コロナ禍を | 入学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | 3 | 4 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
⑤ 健康増進のための運動プログラム | 未経験 | 2019年 | 336 (41.5) |
235 (29.0) |
85 (10.5) |
153 (18.9) |
692 (37.9) |
424 (23.2) |
225 (12.3) |
486 (26.6) | ||
経験(最中) | 2020年 | 427 (48.6) |
282 (32.1) |
83 (9.4) |
87 (9.9) |
766 (42.3) |
483 (26.7) |
191 (10.6) |
370 (20.4) | |||
経験(最中) | 2021年 | 398 (46.6) |
282 (33.0) |
78 (9.1) |
96 (11.2) |
660 (40.4) |
457 (28.0) |
197 (12.0) |
321 (19.6) | |||
P<0.001 | P<0.001 |
コロナ禍を | 入学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | 3 | 4 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
⑥ 性感染症予防や避妊法 | 未経験 | 2019年 | 367 (45.4) |
182 (22.5) |
73 (9.0) |
186 (23.0) |
679 (37.2) |
363 (19.9) |
221 (12.1) |
563 (30.8) | ||
経験(最中) | 2020年 | 478 (54.4) |
172 (19.6) |
92 (10.5) |
136 (15.5) |
737 (41.7) |
365 (20.6) |
213 (12.0) |
453 (25.6) | |||
経験(最中) | 2021年 | 442 (49.7) |
187 (21.9) |
107 (12.5) |
136 (15.9) |
663 (40.6) |
375 (23.0) |
201 (12.3) |
393 (24.1) | |||
P<0.001 | P<0.001 |
コロナ禍を | 入学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | 3 | 4 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
⑦ 対人関係や精神的な悩みについての相談,カウンセリング | 未経験 | 2019年 | 144 (17.8) |
351 (43.4) |
110 (13.6) |
204 (25.2) |
253 (13.9) |
602 (33.0) |
312 (17.1) |
659 (36.1) | ||
経験(最中) | 2020年 | 128 (14.6) |
461 (52.4) |
129 (14.7) |
161 (18.3) |
186 (105) |
692 (39.1) |
340 (19.2) |
550 (31.1) | |||
経験(最中) | 2021年 | 126 (14.7) |
449 (52.5) |
126 (14.7) |
155 (18.1) |
190 (11.6) |
646 (39.5) |
305 (18.7) |
493 (30.2) | |||
P<0.001 | P<0.001 |
①~⑥については,それぞれ以下の4つの選択肢の中から,1つを選ばせた。
1 提供された情報を参考に生活を改善したい 2 情報には目を通すが,生活は変わらないだろう
3 必要性をあまり感じない 4 全く不要である
⑦については,以下の4つの選択肢を提示し,1つを選ばせた。
1 是非ともやってほしい 2 あるに越したことはない
3 必要性をあまり感じない 4 全く不要である
生活習慣に関しては,運動習慣と朝食摂取の習慣を取り上げた(表2)。運動習慣については,コロナ禍の最中に入学した学生で,運動やスポーツは嫌いではないが無縁であるという回答が減っており,全体としての回答分布の差は男女とも有意(女 P<0.001,男 P=0.0275)であった。一方朝食摂取の習慣には,コロナ禍の最中に入学した学生とコロナ禍以前の入学者との間に有意の差は認められなかった。入学時には喫煙者の数が非常に少なく,分析しなかった。
2019年(コロナ禍を未経験)と2020,2021年(いずれもコロナ禍を経験(最中))の新入生の運動習慣と朝食摂取の習慣.( )内の数値は入学年ごとに見た各回答の割合(%).
女子学生 | 男子学生 | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コロナ禍を | 入学年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |||
運動習慣* | 未経験 | 2019年 | 71 (9.0) |
41 (5.2) |
42 (5.3) |
290 (36.8) |
156 (19.8) |
188 (23.9) |
337 (18.8) |
208 (11.6) |
140 (7.8) |
894 (50.0) |
77 (4.3) |
132 (7.4) | ||
経験(最中) | 2020年 | 65 (7.5) |
50 (5.8) |
77 (8.9) |
362 (41.8) |
159 (18.3) |
154 (17.8) |
321 (18.4) |
224 (12.9) |
149 (8.6) |
863 (49.5) |
82 (4.7) |
103 (5.9) | |||
経験(最中) | 2021年 | 76 (9.0) |
61 (7.2) |
87 (10.3) |
336 (39.7) |
139 (16.4) |
147 (17.4) |
330 (20.3) |
236 (14.5) |
158 (9.7) |
725 (44.6) |
72 (4.4) |
106 (6.5) | |||
P<0.001 | P=0.0275 |
コロナ禍を | 入学年 | 週に 6~7日 |
週に 4~5日 |
週に 2~3日 |
殆ど 欠食 |
週に 6~7日 |
週に 4~5日 |
週に 2~3日 |
殆ど 欠食 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
朝食摂取の習慣 | 未経験 | 2019年 | 336 (41.5) |
235 (29.0) |
85 (10.5) |
153 (8.9) |
692 (37.9) |
424 (23.2) |
225 (12.3) |
486 (26.6) |
||
経験(最中) | 2020年 | 427 (48.6) |
282 (32.1) |
83 (9.4) |
87 (9.9) |
766 (43.4) |
483 (24.8) |
191 (10.8) |
370 (21.0) |
|||
経験(最中) | 2021年 | 398 (46.6) |
282 (33.3) |
78 (9.1) |
96 (11.2) |
660 (40.4) |
457 (28.0) |
197 (12.0) |
321 (19.6) |
|||
P<0.001 | P<0.001 |
* 運動習慣については,以下の6つの選択肢の中から,1つを選ばせた。
1 ≧30分/回,週3回以上,≧1ヶ月継続 2 ≧30分/回,週1~2回,≧1ヶ月継続
3 最近,運動しているが,1ヶ月にならない 4 以前は運動していたが,この1ヶ月はしていない
5 運動やスポーツは嫌いで,やっていない 6 運動やスポーツは嫌いではないが,無縁
女子学生の身体的な健康度については,コロナ禍の最中に入学した学生では,非常に良いという自己評価がコロナ禍以前の入学者に比べて多かった(P<0.001)(表3)。他には,コロナ禍の最中に入学した学生とコロナ禍以前の入学者との間に有意の差は認められなかった。
2019年(コロナ禍を未経験)と2020,2021年(いずれもコロナ禍を経験(最中))の新入生の身体的,精神的な健康度の自己評価.( )内の数値は入学年ごとに見た各回答の割合(%).
女子学生 | 男子学生 | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コロナ禍を | 入学年 | 非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
|||
身体的な健康 | 未経験 | 2019年 | 210 (25.8) |
413 (50.7) |
158 (19.4) |
31 (3.8) |
2 (0.2) |
662 (36.0) |
844 (45.9) |
283 (15.4) |
42 (2.3) |
6 (0.3) | ||
経験(最中) | 2020年 | 266 (30.2) |
486 (55.2) |
115 (13.1) |
13 (1.5) |
1 (0.1) |
664 (37.6) |
830 (46.9) |
236 (13.3) |
38 (2.1) |
0 (0.0) | |||
経験(最中) | 2021年 | 271 (31.5) |
434 (50.5) |
130 (15.1) |
22 (2.6) |
2 (0.2) |
653 (39.7) |
737 (44.8) |
225 (13.7) |
28 (1.7) |
3 (0.2) | |||
P<0.001 | n.s. |
コロナ禍を | 入学年 | 非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
精神的な健康 | 未経験 | 2019年 | 202 (41.5) |
364 (29.0) |
203 (10.5) |
39 (8.9) |
5 | 690 (37.6) |
762 (41.5) |
327 (17.8) |
48 (2.6) |
9 (0.5) | ||
経験(最中) | 2020年 | 266 (48.6) |
389 (32.1) |
193 (9.4) |
29 (9.9) |
4 | 701 (39.7) |
753 (42.6) |
268 (15.2) |
42 (2.4) |
3 (0.2) | |||
経験(最中) | 2021年 | 220 (46.6) |
391 (33.3) |
204 (9.1) |
39 (11.2) |
5 | 668 (40.7) |
630 (38.3) |
297 (18.1) |
40 (2.4) |
8 (0.5) | |||
n.s. | n.s. |
喫煙習慣,運動習慣,朝食摂取の習慣を取り上げた。表4に示したのは,3,4年次まで在学し,その年次の健康診断を受け,諸調査に回答した学生の成績であり,表1とは対象者数が異なる。3,4年次生になると習慣的喫煙者が増えるのは,男女で共通している。コロナ禍の経験の有無で比較すると,男子学生でコロナ禍を経験していると,習慣的喫煙者が少なく,一切吸わないと回答した者がより多い(P<0.001)。女子学生では,コロナ禍の経験の有無は,喫煙率には影響していなかった。
2016,17年に入学し,2019年に3,4年次に進級した(コロナ禍を経験せずに学生生活を送った)学生と,2019,2020年に入学し,2022年に3,4年次に進級した(コロナ禍の最中に学生生活を送った)学生の入学時ならびに進級時の生活習慣.( )内の数値は入学年ごとに見た各回答の割合(%).
女子学生 | 男子学生 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
喫煙習慣 | 一切吸わず | 禁煙した | 時々吸う | 習慣的 | 一切吸わず | 禁煙した | 時々吸う | 習慣的 | |
2016 新入生 (未経験) |
487 (98.4) |
4 (0.8) |
3 (0.6) |
1 (0.2) |
1,452 (94) |
34 (2.2) |
22 (1.4) |
36 (2.3) |
|
2019 新入生 (コロナ禍前入学) |
604 (99.2) |
1 (0.2) |
1 (0.2) |
3 (0.5) |
1,305 (97.0) |
22 (1.6) |
8 (0.6) |
10 (0.7) | |
n.s. | P<0.001 | ||||||||
2019 4年生 (未経験) |
414 (85.5) |
23 (4.8) |
20 (4.1) |
27 (5.6) |
914 (59.4) |
109 (7.1) |
147 (9.5) |
374 (24.2) | |
2022 4年生 (経験[最中]) |
535 (87.9) |
27 (4.4) |
25 (4.1) |
22 (3.6) |
888 (66.0) |
95 (7.1) |
134 (10.0) |
228 (17.0) | |
n.s. | P<0.001 | ||||||||
2017 新入生 (未経験) |
508 (98.8) |
1 (0.2) |
3 (0.6) |
2 (0.4) |
1,521 (93.7) |
39 (2.4) |
16 (1.0) |
48 (3.0) | |
2020 新入生 (経験[最中]) |
661 (99.4) |
4 (0.6) |
0 (0.0) |
0 (0.0) |
1,347 (97.3) |
16 (1.2) |
7 (0.5) |
15 (1.1) | |
n.s. | P<0.001 | ||||||||
2019 3年生 (未経験) |
450 (87.5) |
15 (2.9) |
25 (4.9) |
24 (4.7) |
1,016 (62.6) |
115 (7.1) |
155 (9.5) |
338 (20.8) | |
2022 3年生 (経験[最中]) |
605 (91) |
13 (1.6) |
25 (3.8) |
22 (3.3) |
1,033 (74.6) |
88 (6.4) |
111 (8.0) |
153 (11.0) | |
n.s. | P<0.001 | ||||||||
喫煙習慣は,3,4年次に進級した学生で,定期健康診断時の諸調査に回答した者の数値を示した。 |
運動習慣 | 継続 | 始めた ばかり |
今はなし | 運動嫌い | 嫌いでは ないが無縁 |
継続 | 始めた ばかり |
今はなし | 運動嫌い | 嫌いでは ないが無縁 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016 新入生 (未経験) |
32 (6.8) |
38 (8.0) |
195 (41.1) |
119 (25.1) |
90 (19.0) |
349 (23.3) |
125 (8.3) |
811 (54.1) |
80 (5.3) |
133 (8.9) | |
2019 新入生 (コロナ禍前入学) |
86 (14.8) |
34 (5.9) |
214 (36.9) |
106 (18.3) |
140 (24.1) |
391 (30.2) |
101 (7.8) |
654 (50.5) |
56 (4.3) |
92 (7.1) | |
P<0.001 | P<0.001 | ||||||||||
2019 4年生 (未経験) |
91 (19.2) |
48 (10.1) |
127 (26.8) |
108 (22.8) |
100 (21.1) |
632 (42.2) |
87 (5.8) |
495 (33.0) |
109 (7.3) |
175 (11.7) | |
2022 4年生 (経験[最中]) |
157 (27.1) |
54 (9.3) |
146 (25.2) |
98 (16.9) |
125 (21.6) |
548 (42.3) |
79 (6.1) |
462 (35.7) |
60 (4.6) |
145 (11.2) | |
P=0.0176 | P=0.0464 | ||||||||||
2017 新入生 (未経験) |
31 (6.2) |
45 (9.1) |
222 (44.7) |
106 (21.3) |
93 (18.7) |
344 (21.7) |
148 (9.4) |
847 (53.5) |
100 (6.3) |
143 (9.0) | |
2020 新入生 (経験[最中]) |
91 (14.0) |
58 (8.9) |
283 (43.5) |
105 (16.1) |
114 (17.5) |
430 (31.8) |
104 (7.7) |
681 (50.4) |
66 (4.9) |
70 (5.2) | |
P<0.001 | P<0.001 | ||||||||||
2019 3年生 (未経験) |
115 (23.1) |
40 (8.0) |
134 (27.0) |
115 (23.1) |
93 (18.7) |
677 (42.8) |
137 (8.7) |
507 (32.0) |
105 (6.6) |
156 (9.9) | |
2022 3年生 (経験[最中]) |
199 (30.6) |
43 (11.2) |
162 (24.9) |
111 (17.1) |
106 (16.3) |
640 (47.4) |
106 (7.8) |
389 (28.8) |
70 (5.2) |
146 (10.8) | |
P=0.0041 | P=0.0452 | ||||||||||
ここでの運動習慣は表2の選択肢1,2を一つにして「継続」と表した。表2では新入生全員の数値を,表4では3,4年次に進級した学生で,定期健康診断時の諸調査に回答した者の数値を示した。 |
朝食摂取 | 週6~7日 | 週4~5日 | 週2~3日 | 殆ど欠食 | 週6~7日 | 週4~5日 | 週2~3日 | 殆ど欠食 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016年 新入生 (未経験) |
362 (73.0) |
60 (12.1) |
45 (9.1) |
119 (5.8) |
1,095 (71.0) |
188 (12.2) |
131 (8.5) |
129 (8.4) | |
2019年 新入生 (コロナ禍前入学) |
467 (76.7) |
59 (9.7) |
43 (7.1) |
40 (6.6) |
984 (73.2) |
151 (11.2) |
92 (6.8) |
118 (8.8) | |
n.s. | n.s. | ||||||||
2019年 4年生 (未経験) |
197 (39.8) |
100 (20.2) |
87 (17.5) |
110 (22.6) |
606 (39.3) |
240 (15.6) |
273 (17.7) |
424 (27.5) | |
2022年 4年生 (経験[最中]) |
321 (48.3) |
110 (16.5) |
106 (15.9) |
120 (18.0) |
494 (36.7) |
191 (14.2) |
252 (18.7) |
408 (30.3) | |
P=0.0339 | n.s. | ||||||||
2017年 新入生 (未経験) |
367 (71.4) |
57 (11.1) |
47 (9.1) |
43 (8.4) |
1,138 (70.0) |
210 (12.9) |
122 (7.5) |
155 (9.5) | |
2020年 新入生 (経験[最中]) |
504 (75.8) |
85 (12.9) |
48 (7.2) |
28 (4.2) |
962 (60.4) |
188 (13.6) |
112 (8.1) |
125 (9.0) | |
P=0.0112 | n.s. | ||||||||
2019年 3年生 (未経験) |
210 (40.9) |
94 (18.3) |
100 (19.5) |
110 (21.4) |
645 (39.7) |
269 (16.6) |
266 (16.4) |
445 (27.4) | |
2022年 3年生 (経験[最中]) |
321 (48.2) |
110 (16.5) |
106 (15.9) |
128 (19.2) |
586 (39.4) |
206 (13.9) |
346 (23.3) |
349 (23.5) | |
n.s. | P<0.001 | ||||||||
朝食摂取については,表2では新入生全員の数値を,表4では3,4年次に進級した学生で,定期健康診断をうけその時の諸調査に回答した者の数値を示した。 |
運動習慣は,ここでは頻度は問わず,1ヶ月以上継続しているか,運動を始めたが未だ1ヶ月にはならないか,かつて運動をしていたが今はしていないか,運動は嫌いか,嫌いではないが無縁かの5つに分けた。男女ともに,3,4年次生では運動継続者が増え,これはコロナ禍を経験したか否かにはよらない。しかし,男の4年次生を除き,コロナ禍の最中に学生生活を送ると,コロナ禍未経験者に比べて運動継続者の割合が高かった。また,運動が嫌いだと回答した学生も少なかった。
朝食摂取の習慣については,3,4年次生では入学時に比べて,朝食を週6~7日食べている者の割合が少なく,殆ど欠食と回答した学生が高い割合を示す。その中でも,コロナ禍の最中に大学で学生生活を送った女子学生では,コロナ禍の影響を受けていない群に比べて,朝食を週6~7日食べている者の割合がより高く,特に2022年の4年次生や2020年の新入生では,週2~3日かそれ以下の摂取頻度だと答えた学生も少なく,回答分布の差は有意(P=0.0339およびP=0.0012)であった。男子学生では,朝食を週6~7日食べている者の割合はコロナ禍の経験の有無によって大きくは変わっていなかった。2022年の3年次生はコロナ禍の最中に学生生活を送っており,在学中にコロナ禍を経験しなかった学生に比べて,週に2~3日食べるという回答が多く,週に4~5日食べるという回答と殆ど欠食という回答が少なかった。そのため,回答分布の差は有意(P<0.01)であったが,変化の方向は一定していなかった。
2-2) 3,4年次に進級した時点での健康度の自己評価表5に示すように,身体的な側面に関しては,男子学生では3年次生も4年次生もコロナ禍を経験している学年では,コロナ禍未経験の学年に比べて非常に良いという回答が多く,良くも悪くもないという回答が少なかった。この回答分布の差は有意(P=0.0082およびP=0.0075)であった。一方,精神的な側面については,コロナ禍の最中に調査した4年次の女子学生では,非常に良い~そこそこ良いという自己評価がより少なく,良くも悪くもない~やや悪いという自己評価がより多い。この回答分布の差は有意(P<0.0294)であった。同様に男子学生でも,4年次の精神的な側面について,そこそこ良いという回答が少なく,やや悪いという回答が多く,回答分布の差は有意(P<0.0017)であった。
コロナ禍を経験せずに学生生活を送った学生とコロナ禍の最中に学生生活を送った学生の,3,4年次に進級した時点での身体的,精神的な健康度の自己評価.( )内の数値は入学年ごとに見た各回答の割合(%).
女子学生 | 男子学生 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3年次生の身体的な健康度の自己評価 | 3年次生の身体的な健康度の自己評価 | ||||||||||
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
||
2019年 3年生 (未経験) |
133 (25.9) |
275 (53.6) |
86 (16.8) |
17 (3.3) |
2 (0.4) |
565 (34.7) |
747 (45.8) |
261 (16.0) |
46 (2.8) |
11 (0.7) | |
2022年 3年生 (経験[最中]) |
190 (28.5) |
341 (51.1) |
118 (17.7) |
16 (2.4) |
2 (0.3) |
536 (38.6) |
638 (46.0) |
187 (13.5) |
24 (1.7) |
3 (0.2) | |
n.s. | P=0.0082 | ||||||||||
4年次生の身体的な健康度の自己評価 | 4年次生の身体的な健康度の自己評価 | ||||||||||
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
||
2019年 4年生 (未経験) |
138 (27.8) |
249 (50.2) |
88 (17.7) |
17 (3.4) |
4 (0.8) |
560 (36.2) |
696 (45.0) |
246 (15.9) |
38 (2.5) |
6 (0.4) | |
2022年 4年生 (経験[最中]) |
191 (31.4) |
294 (48.3) |
110 (18.1) |
14 (2.3) |
0 (0.0) |
565 (41.9) |
584 (43.3) |
163 (12.1) |
32 (2.4) |
5 (0.4) | |
n.s. | P=0.0075 | ||||||||||
3年次生の精神的な健康度の自己評価 | 3年次生の精神的な健康度の自己評価 | ||||||||||
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
||
2019年 3年生 (未経験) |
137 (26.9) |
241 (47.3) |
105 (20.6) |
21 (4.1) |
6 (1.2) |
628 (38.6) |
683 (41.9) |
251 (15.4) |
54 (3.3) |
13 (0.8) | |
2022年 3年生 (経験[最中]) |
185 (27.7) |
289 (43.3) |
154 (23.1) |
35 (5.2) |
4 (0.6) |
558 (40.3) |
557 (40.2) |
223 (16.1) |
39 (2.8) |
8 (0.6) | |
n.s. | n.s. | ||||||||||
4年次生の精神的な健康度の自己評価 | 4年次生の精神的な健康度の自己評価 | ||||||||||
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
非常に 良い |
そこそこ 良い |
良くも 悪くもない |
やや 悪い |
非常に 悪い |
||
2019年 4年生 (未経験) |
132 (26.6) |
211 (42.5) |
123 (24.7) |
24 (4.8) |
7 (1.4) |
625 (40.5) |
604 (39.1) |
258 (16.7) |
45 (2.9) |
12 (0.8) | |
2022年 4年生 (経験[最中]) |
141 (23.2) |
227 (37.3) |
186 (30.6) |
48 (7.9) |
6 (1.0) |
540 (40.1) |
481 (35.7) |
233 (17.3) |
78 (5.8) |
15 (1.1) | |
P=0.0294 | P=0.0017 |
男女ともにコロナ禍を経験した4年次生では,コロナ禍未経験の4年次生に比べて,精神的な健康度の自己評価が,2段階以上あるいは1段階悪化した学生が多く,不変であった学生は少なかった(表6)。女子学生では,2段階以上の改善を示した学生も少なかった。そのため,回答分布の差は男女ともに有意(P=0.0163およびP=0.0060)であり,精神的な健康度の自己評価は,男女ともコロナ禍を経験すると4年次生では悪化したと考えられた。これに対して,身体的な側面に関しては,コロナ禍を経験した3年次生では悪化した頻度が低く,不変の頻度が高かった。
コロナ禍を経験せずに学生生活を送った学生とコロナ禍の最中に学生生活を送った学生の,入学時から3,4年次進級時までの身体的,精神的な健康度の自己評価の変化.( )内の数値は入学年ごとに見た各回答の割合(%).
女子学生 | 男子学生 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3年次に至るまでの身体的な健康度の自己評価の変化 | 3年次に至るまでの身体的な健康度の自己評価の変化 | ||||||||||
2段階以上 改善 |
1段階 改善 |
不変 | 1段階 悪化 |
2段階以上 悪化 |
2段階以上 改善 |
1段階 改善 |
不変 | 1段階 悪化 |
2段階以上 悪化 |
||
2019年 3年生 (未経験) |
15 (2.9) |
96 (18.7) |
270 (52.6) |
108 (21.1) |
24 (4.7) |
60 (3.7) |
314 (19.3) |
842 (51.7) |
332 (20.3) |
83 (5.1) | |
2022年 3年生 (経験[最中]) |
17 (2.5) |
97 (14.5) |
355 (53.2) |
169 (25.3) |
29 (4.3) |
41 (3.0) |
280 (20.2) |
760 (54.9) |
269 (19.4) |
38 (2.7) | |
n.s. | P=0.0089 | ||||||||||
4年次に至るまでの身体的な健康度の自己評価の変化 | 4年次に至るまでの身体的な健康度の自己評価の変化 | ||||||||||
2段階以上 改善 |
1段階 改善 |
不変 | 1段階 悪化 |
2段階以上 悪化 |
2段階以上 改善 |
1段階 改善 |
不変 | 1段階 悪化 |
2段階以上 悪化 |
||
2019年 4年生 (未経験) |
27 (5.4) |
108 (21.8) |
233 (47.0) |
100 (20.2) |
28 (5.6) |
56 (3.6) |
314 (20.3) |
821 (53.1) |
283 (18.3) |
72 (4.7) | |
2022年 4年生 (経験[最中]) |
17 (2.8) |
146 (24.0) |
303 (49.8) |
120 (19.7) |
23 (3.8) |
60 (4.4) |
314 (23.3) |
685 (50.8) |
241 (17.9) |
49 (3.6) | |
n.s. | n.s. | ||||||||||
3年次に至るまでの精神的な健康度の自己評価の変化 | 3年次に至るまでの精神的な健康度の自己評価の変化 | ||||||||||
2段階以上 改善 |
1段階 改善 |
不変 | 1段階 悪化 |
2段階以上 悪化 |
2段階以上 改善 |
1段階 改善 |
不変 | 1段階 悪化 |
2段階以上 悪化 |
||
2019年 3年生 (未経験) |
20 (3.9) |
98 (19.2) |
249 (48.8) |
115 (22.5) |
28 (5.5) |
65 (4.0) |
342 (21.0) |
828 (50.8) |
318 (19.5) |
76 (4.7) | |
2022年 3年生 (経験[最中]) |
17 (2.5) |
128 (19.2) |
311 (46.6) |
174 (26.1) |
37 (5.5) |
43 (3.1) |
258 (18.6) |
745 (53.8) |
290 (20.9) |
49 (3.5) | |
n.s. | n.s. | ||||||||||
4年次に至るまでの精神的な健康度の自己評価の変化 | 4年次に至るまでの精神的な健康度の自己評価の変化 | ||||||||||
2段階以上 改善 |
1段階 改善 |
不変 | 1段階 悪化 |
2段階以上 悪化 |
2段階以上 改善 |
1段階 改善 |
不変 | 1段階 悪化 |
2段階以上 悪化 |
||
2019年 4年生 (未経験) |
32 (6.4) |
101 (20.3) |
222 (44.7) |
110 (22.1) |
32 (6.4) |
76 (4.9) |
317 (20.5) |
801 (51.9) |
275 (17.8) |
75 (4.9) | |
2022年 4年生 (経験[最中]) |
19 (3.1) |
124 (20.4) |
253 (41.6) |
151 (24.8) |
61 (10.0) |
55 (4.1) |
298 (22.1) |
629 (46.7) |
267 (19.8) |
98 (7.3) | |
P=0.0163 | P=0.0060 |
これまでの分析で男女差が示唆されたため,3,4年進級時の精神的健康の自己評価を目的変数にしたとき(表7)と入学時から3,4年進級時までの精神的健康の自己評価の変化を目的変数にしたとき(表8)のロジスティック回帰分析の結果を男女別に示した。男女ともにコロナ禍の経験,学年,3,4年進級時の運動習慣や朝食摂取の習慣が3,4年進級時の精神的健康の自己評価と有意に(P<0.001)関連していた。すなわち,大学でコロナ禍に遭遇したり,4年次に進級すると精神的な健康の自己評価が悪くなりやすかった。また,3,4年進級時に運動をしているとその期間に応じて,あるいは朝食の摂取頻度が増えるとその程度に応じて,精神的な健康の自己評価が良くなった。さらに男子学生では,3,4年進級時に喫煙習慣を持っていると精神的な健康の自己評価が良く,この関連も有意(P<0.001)であった。
3,4年進級時の精神的健康の自己評価を目的変数としたロジスティック回帰分析.( )内は95%信頼限界.
女子学生 | 男子学生 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3,4年進級時の精神的健康の自己評価を目的変数にしたとき [そこそこ~非常に良い:0,良くも悪くもない 以下:1] (n=2,238人) |
3,4年進級時の精神的健康の自己評価を目的変数にしたとき [そこそこ~非常に良い:0,良くも悪くもない 以下:1] (n=5,783人) |
|||||||
変数 | 偏回帰係数 | オッズ比 | P値 | 変数 | 偏回帰係数 | オッズ比 | P値 | |
コロナ | 0.4907 (0.2775~0.7039) |
1.6334 (1.3198~2.0215) |
<0.001 | コロナ | 0.4087 (0.2629~0.5545) |
1.5049 (1.3006~1.7411) |
<0.001 | |
学年 | 0.4427 (0.2544~0.6310) |
1.5569 (1.2897~1.8794) |
<0.001 | 学年 | 0.3354 (0.2010~0.4697) |
1.3984 (1.2227~1.5995) |
<0.001 | |
3,4年時の 運動習慣 |
0.1773 (0.0952~0.2595) |
1.194 (1.0999~1.2962) |
<0.001 | 3,4年時の 運動習慣 |
0.3175 (0.2603~0.3747) |
1.3737 (1.2974~1.4545) |
<0.001 | |
3,4年時の 朝食摂取 |
0.1764 (0.1009~0.2519) |
1.1929 (1.1062~1.2865) |
<0.001 | 3,4年時の 朝食摂取 |
0.1036 (0.0510~0.1562) |
1.1091 (1.0523~1.1691) |
<0.001 | |
3,4年時の 喫煙習慣 |
−0.0841 (−0.2122~0.0439) |
0.9193 (0.8088~1.0499) |
n.s. | 3,4年時の 喫煙習慣 |
−0.1267 (−0.1837~−0.0697) |
0.881 (0.8322~1.5995) |
<0.001 |
説明変数として,以下の5項目を採用した。
・コロナ:大学でコロナ禍に遭遇したか(1),否か(0)
・学年:3年次(1),4年次(2)
・3,4年進級時の運動習慣:(期間は問わずに)運動している(1),この1ヵ月はしていない(2),無縁/嫌い(3)
・3,4年進級時の朝食摂取:週6日以上(1),週4~5日(2),週2~3日(3),殆ど欠食(週1日以下)(4)
・3,4年進級時の喫煙習慣:一切吸わない(1),禁煙した(2),時々吸う(3),習慣的に吸う(4)
入学時から3,4年進級時までの精神的な健康度の自己評価の変化を目的変数としたロジスティック回帰分析.( )内は95%信頼限界.
女子学生 | 男子学生 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
入学時から3,4年進級時までの精神的な健康度の自己評価の変化を目的変数にしたとき [2段階改善~不変:0,1~2段階悪化:1] (n=2,238人) |
入学時から3,4年進級時までの精神的な健康度の自己評価の変化を目的変数にしたとき [2段階改善~不変:0,1~2段階悪化:1] (n=5.281人) |
|||||||
変数 | 偏回帰係数 | オッズ比 | P値 | 変数 | 偏回帰係数 | オッズ比 | P値 | |
コロナ | 0.3200 (0.1093~0.5306) |
1.3771 (1.1155~1.7000) |
0.0029 | コロナ | 0.2523 (0.1193~0.3854) |
1.2870 (1.1267~1.4702) |
<0.001 | |
学年 | 0.1210 (−0.0653~0.3074) |
1.1287 (0.9368~1.3599) |
n.s. | 学年 | 0.7490 (−0.0486~0.1983) |
1.0777 (0.9526~1.2194) |
n.s. | |
3,4年時の 運動習慣 |
0.0682 (−0.0124~0.1489) |
1.0706 (0.9876~1.1605) |
n.s. | 3,4年時の 運動習慣 |
0.1307 (0.0779~0.1836) |
1.1397 (1.0810~1.2015) |
<0.001 | |
3,4年時の 朝食摂取 |
0.1750 (0.0998~0.2503) |
1.1913 (1.1049~1.2844) |
<0.001 | 3,4年時の 朝食摂取 |
0.0879 (0.0389~0.1370) |
1.0919 (1.0396~1.1468) |
<0.001 | |
3,4年時の 喫煙習慣 |
0.0054 (−0.1184~0.1293) |
1.0055 (0.8883~1.1380) |
n.s. | 3,4年時の 喫煙習慣 |
0.0135 (−0.0373~0.0644) |
1.0136 (0.9634~1.0665) |
n.s. |
説明変数として,以下の5項目を採用した。
・コロナ:大学でコロナ禍に遭遇したか(1),否か(0)
・学年:3年次(1),4年次(2)
・3,4年進級時の運動習慣:(期間は問わずに)運動している(1),この1ヵ月はしていない(2),無縁/嫌い(3)
・3,4年進級時の朝食摂取:週6日以上(1),週4~5日(2),週2~3日(3),殆ど欠食(週 1日以下)(4)
・3,4年進級時の喫煙習慣:一切吸わない(1),禁煙した(2),時々吸う(3),習慣的に吸う(4)
入学時から3,4年進級時までの精神的健康の自己評価の変化についても,男女ともに大学でコロナ禍に遭遇すれば精神的な健康の自己評価が有意に悪化しやすく,朝食摂取の習慣を維持すればこれを防ぐ効果が期待できることも示された。しかし,3,4年進級時に運動習慣を維持していると男子学生では精神的な健康の悪化が有意に(P<0.001)軽かったが,女子学生ではそれは明らかではなかった。また,喫煙習慣を持っていることは,精神的な健康の維持に関して有利ではなかった。
健康に関する種々の情報を得て生活を改善したいという気持ちは,酒や煙草と健康に関する情報に関する男子学生の意識を除き,男女ともにコロナ禍を経験し,その最中に入学した学生で強かった(表1)。健康な毎日の重要性を強く意識して入学したと思われる。喫煙については,男子学生では情報を得て生活を改善したいというものこそ1%弱の増加にとどまったが(表1),これは主に18~9歳の未成年者の意識であり,酒や煙草と健康との関連が実感されていないのかも知れない。しかし,生活習慣病の予防法についての情報を求める割合は男女ともに高まっていた。高血圧や2型糖尿病などは,いずれも中高年から年齢とともに罹患率が増える12)13)。若年時からその予防意識が強いのはコロナ禍のためであろうが,歓迎すべきことである。
一方,対人関係や精神的な悩みについてのカウンセリングを望む意見は有意に減った(表1)。コロナ禍で遠隔授業が増えるなど,登校の機会が減ると対人関係の軋轢や悩みは少なくなると推測した可能性がある。
生活習慣については運動習慣と朝食摂取の習慣を取り上げた(表2)。男女ともに運動をしている(回答の選択肢では1~3)と答えた人が女子学生は,2019年の14.5%から20年22.2%,21年26.5%に,男子学生では2019年の38.2%から20年39.9%,21年44.5%になった。コロナ禍の最中の入学生で健康増進のための運動プログラムを望む意見が強くなっていたことと(表1)対応するデータであろう。
新入生の朝食摂取の習慣については,コロナ禍の最中には週に6~7日食べる学生が増え,ほとんど欠食の学生が減っていた(男女ともP<0.001)(表2)。運動習慣と朝食摂取が連動することは,人間科学部で実施した調査14)でも明らかである。
運動習慣を持ち15),朝食を摂る16)ことは健康維持にも良い効果をもたらすと期待される。実際,女子学生ではコロナ禍の最中に入学した学生では身体的な健康度の自己評価が改善していた(表3)。運動習慣と朝食摂取の習慣が良い効果をもたらした可能性がある。一方,精神的な健康度の自己評価については,有意の変化が認められなかった。
以上をまとめると,コロナ禍の最中でも,本学の学生は現状を冷静に認識し,健康危機に対応しようとしていた。
2) 3,4年次生の生活習慣と健康度の自己評価喫煙習慣については,女子学生も男子学生も3,4年次生になると入学時に比べ,習慣的喫煙者が増えた(表4上段)。在学中の習慣的喫煙者の増加自体は,コロナ禍の経験の有無によらない。男子学生では,コロナ禍の最中には,入学時から習慣的に吸っている学生はより少なく,一切吸わない学生が増えていた。ただし,コロナ禍を経験しないで入学してきた学生についても,2016年と2019年の間に有意差があった(表4)。現在,日本人の喫煙率は年々低下しており,我々のデータにはコロナ禍の影響もあるだろうが,それと無関係な経年的な喫煙率の低下も関与するだろう。これに関して国民健康栄養調査の成績11)17)18)では,2013年には20~29歳の男性で毎日吸っている人が33.0%,吸わない人が61.0%,2016年にはそれぞれ27.3%と64.1%,2019年には22.7%と70.0%となっている。2020,21年の国民健康栄養調査はコロナ禍で中止され,2022年の成績は未発表であり,本学における成績と比べることが出来ない。
女子学生では,コロナ禍を経験する前の3,4年次生とコロナ禍を経験した後の3,4年次生とで喫煙率に有意の差が検出されなかったが,2019年の3,4年次生の習慣的喫煙者は4.7~5.6%であり,同年の20~29歳の一般女性の喫煙率6.7%に比べて若干ではあるが低い。習慣的喫煙者の割合は2022年の3,4年次生がそれぞれ3.3,3.6%で,2019年より低下しているように見えるが,2019年の喫煙率が低いので有意の差にならなかったのかも知れない。
運動習慣をみるとコロナ禍を経験した4年次生の男子学生を除き,運動を継続している割合が増えている(表4中段)。しかし,コロナ禍で学生の健康意識が高くなったことを反映したとは即断出来なかった。それは,2016年と2019年の新入生を比べると,いずれも入学時にはコロナ禍を経験していないにもかかわらず,運動を継続している人の割合が増していたことによる。他の方法で,各要因の寄与を調べる必要がある。なお,入学時には,かつて運動をしていたが今はしていないという回答が多く,大学受験を控え,運動習慣を中断する学生が多いと推測された。
朝食摂取(表4下段)の習慣についても,クロス集計表からは一定の結論を出せなかった。女子学生については,コロナ禍を経験している2022年の4年次生では,朝食を週に6~7日摂っている人が増え,全体としても朝食を摂取する方向に動いていた。これは2020年の新入生についても同様であり,2022年の3年次生については有意水準には達しなかったが,より朝食を摂取する傾向にあった。一方,男子学生について有意の変化が検出されたのは3年次生で,コロナ禍を経験していると経験していない場合に比べてより朝食を摂らない方向に動いていた。これは,4年次生でも同様の傾向があった。このように,朝食摂取の習慣の変化についても性差がある可能性が示唆された。
健康度の自己評価(表5)についても,男子学生ではコロナ禍を経験した人で3年次生も4年次生も身体的な健康度の自己評価が高まっていたが,この現象は女子学生では観察されなかった。新入生で得られた成績を見ると,コロナ禍の最中に入学して来た女子学生で,身体的な側面の自己評価が高かった(表3)。すなわち,男子学生では入学後に身体的な健康度の自己評価が高まる余地があるが,女子学生ではすでに入学時の自己評価が高まっており,それ以上改善しないと解釈できる。健康度の自己評価についても性差があると思われる。
一方,精神的な側面に関しては,女子学生も男子学生も4年次生でのみ,コロナ禍を経験していると健康度の自己評価が有意に低下する。3年次生ではその低下は認められなかった。この時,男女とも,そこそこ良いという自己評価が減り,やや悪いという自己評価が増えていたが,非常に悪いと自己評価した学生は女子学生で6人,男子学生で15人であり,その割合は高くなってはいなかった。すなわち,学生のメンタルヘルスが悪化したことは先行研究1)~3)で示された通りであるが,その悪化は4年次生でのみ有意であった。
健康度の自己評価が入学時からどのように変化したかも調べた(表6)。男女とも4年次生でのみ,コロナ禍を経験している人で精神的な健康度の自己評価の低下が大きかった。すなわち,精神的な健康度に関しては表5で得られた結果と共通しており,4年次生がコロナ禍の影響を大きく被っているといえよう。就職状況は厳しいと云われているのに,コロナ禍の収束が見えていなかったことが関係していた可能性が考えられる。さらに,コロナ禍の最中の4年次生で,精神的な健康度の自己評価が2段階以上悪くなった学生が多いことを見ると,個別の支援が必要となる一歩手前の学生が増えていたのかも知れない。
3) ロジスティック回帰分析精神的な健康度が非常に悪いと自己評価した学生の割合は高くなかった。これまで,メンタルヘルスの悪化した学生への対応は,主に学生相談室が担ってきており,各学部の担任の教員やキャリア支援センター職員との連携も取れている。個々の学生への対応法を変える必要はないと思われる。一方,精神的な健康についてやや悪いと評価した学生は男女合わせて60人弱増えていた。コロナ禍という非日常的な状況で精神的な健康が阻害された可能性があるが,これらの学生に個人的な対応をしている余裕はない。精神的な健康度が非常に悪い学生を個別に支えるハイリスクアプローチに加え,全学生を対象としたポピュレーションアプローチが必要となる所以である。
ロジスティック回帰分析(表7,8)は,大学でコロナ禍に見舞われたか,3,4年進級時の運動習慣や朝食摂取の習慣がいずれも,3,4年進級時の精神的な健康の自己評価に有意に関連することを示した。すなわち,大学でコロナ禍に見舞われると精神的な健康の自己評価が低くなることが示唆され,これは先行研究でも述べられている1)~3)。コロナ禍のような健康危機が発生すること自体はどうしようもない。しかし,3,4年進級時に運動していたり,朝食をなるべく毎日摂ったりすることは僅かな努力で可能である。とくに,3,4年進級時の朝食習慣は入学時からの自己評価の変化にも有意に関連していた。ここには精神的な健康度の悪化を防ぐポピュレーションアプローチのヒントがある。すなわち,全学生を対象に朝食を摂ることを積極的に勧め,できれば運動習慣を維持することである。
なお,男子学生で,3,4年進級時に喫煙習慣を持っていると精神的な健康の自己評価が高かった(表7)。喫煙習慣をもっている学生の進路決定に対する意識なども含めた検討が必要であろう。
今後の課題種々の健康課題に向き合う意識や生活習慣,健康度の自己評価には,明らかな性差がある。今回は詳しい検討は省いたが,男子学生と女子学生を別々に扱った。性差をもたらす要因についての分析は,今後の問題であろう。最後にはポピュレーションアプローチの必要性を指摘した。現時点では,ハイリスクアプローチに近いやり方に止まっている。すなわち,健診時の諸調査の中に体調の悪い学生や質問のある学生は,何時でも保健室に来るよう呼びかけ,心電図検査を受けた学生については,表紙に記載された内容を見て,保健室スタッフから電話をしている。全学生に対するポピュレーションアプローチをすすめ,その効果の測定が必要である
毎年の学生の定期健康診断と諸調査が円滑に実施できるよう,努力を惜しまなかった事務職員の皆様に深謝いたします。本論文に関して,開示すべきCOI状態はありません。