Human Sciences
Online ISSN : 2434-4753
Original Article
Annual changes of health status and lifestyles in university students examined in regular health checkup and lifestyle survey
Second report: Smoking and drinking habits
Yoshiko EdaYaemi HamadaAkane KusubayashiRie TsujiHiromi Muratani
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2025 Volume 7 Pages 33-44

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抄録

2003年から2024年までの九産大生を対象に,喫煙率や飲酒率の経年変化や家族の影響,喫煙と飲酒の関連を調べた。さらに飲酒頻度と一度の飲酒機会に飲む量の関連についても調べた。喫煙率も飲酒率も全体としては低下してきた。1年生の喫煙率は2006年から明らかに減ってきたが,4年生の飲酒率の減少は2012,2013年までは明らかでなかった。2020年には女性で喫煙率,飲酒率ともに増えていた。学生の喫煙習慣にも飲酒習慣にも家族の影響が明らかであり,親も他の家族も影響を及ぼしていた。喫煙習慣と飲酒習慣が重複することも明らかであった。ほぼ毎日飲む学生は,一度に飲む量が3合以上である割合が有意に高かった。しかし,一度に3合以上飲む者の実人数を見ると,たまに飲むと回答した学生が最多であった。

Abstract

In the Kyushu Sangyo University students, from 2003 to 2024, we analyzed annual changes in smoking and drinking habits, influences of family members on the smoking and drinking habits, and whether smoking and drinking habits coexist on same student. Both rate of smoking habits and drinking habits decreased as a whole. The smoking rate of freshmen evidently decreased from 2006. On the other hand, the decrease in the drinking rate of seniors are not obvious until 2012 or 2013. In the women both smoking and drinking rates transiently increased in 2020. The influences of family members were evident (p<0.001) and smoking and drinking habits of both parents and other members influenced on the student’s behaviors. The coexistence of smoking habits and drinking habits was also evident (p<0.001). Almost everyday drinkers tend to be heavy drinkers (p<0.001), actual number of heavy drinkers was the most in the occasional drinkers.

1. 緒言

九州産業大学の学部生(九産大生)には2003年の時点で高頻度に喫煙習慣が見られ1),2011年の検討では,飲酒習慣を持つものも多かった2)。しかし,喫煙者の頻度は年々低下しており,それは特に20歳代~60歳代の男性で明らかであり3)。2016年には九産大生でも喫煙率の低下が明らかであった4)。最近の九産大生の姿を‍知るためには,近年のデータを見ることが必要であろう。

また飲酒率について5),20歳代の日本人の飲酒率を見ると,男性では平成元年の32.5%から令和元年は12.7%と明らかに減少している。女性では同じ期間に4.1%から3.1%と若干の減少である。成人一人当たりの年間アルコール消費量をみると1992年度の101.8 Lをピークに2019年度には78.2 Lまで減少しているが,飲酒人口ほどの減少ではない。九産大生でも恐らく飲酒人口は減少しているのであろうが,多量飲酒者はどうであろうか。また,一度に飲む量が多いことが大学生でも健康リスクを増すと報告されている6)。ここでも,九産大生のデータの確認が必要である。さらに,喫煙と飲酒はセットで語られることもあるが,実際に喫煙者は非喫煙者に比べて飲酒する機会が多いのだろうか。

本研究ではこれらの疑問に答えるために,2003年から2024年までの九産大生について,定期健康診と同時に実施している生活習慣調査の成績を分析し,喫煙率や飲酒率の経年的な変動を明らかにした。初期の調査では家族の喫煙や飲酒の状況も尋ねていたので,本人の喫煙や飲酒とのクロス集計表を作成した。喫煙と飲酒の関係も調べた。学生の喫煙や飲酒には調査年や性別,居住形態による差も考えられたので,多重ロジスティック回帰分析を実施した。さらに2017年以降は飲酒頻度を聞いており,飲酒量と飲酒頻度との関連を調べた。

2. 方法

(1) 対象

2003年から2024年の間に九州産業大学に入学し,年度初めに定期健康診断を受け,同時に生活習慣調査に回答した学部生で,データの揃っている1年生と4年生を対象にした。男83,422人,女26,971人,1年生57,183人,4年生53,210人,計110,393人である。これは,健康度の自己評価を分析した論文中に表1として示した7)

「回答を集計して統計的な解析を行い,得られた結果を学会や学術雑誌に発表することがありますが,個人の名前やその回答の内容が外部に漏れることは,決してありません」という文言は2003年から調査票に表示している。2018年以降は「それでもなお,この調査書に記載されたあなたの情報を,研究の目的に使用することに関して同意できない場合,学医あるいは他の保健室のスタッフにお知らせください。申し出るのに期限は設けておりません」という文言も付け加えた。これまでに研究目的での使用に関して断ってきた学生はいない。

(2) 経年変化

各調査年毎に性,学年別に,習慣的に吸うと時々吸うという回答を合わせて喫煙習慣を持つ学生の数を出した。これに対し,習慣的に飲むと回答した場合にのみ飲酒習慣を持つ学生とした。毎年の対象者数が異なるので,喫煙習慣や飲酒習慣を持つ学生の数をパーセント表示に変換して経年変化を調べた。

(3) 家族の喫煙や飲酒と学生の喫煙習慣,飲酒習慣との関連

2003年から2013年まで家族の喫煙,飲酒の状況も調べた。生活習慣の調査票に,「ご父母やご家族の中で,タバコを吸う方はいらっしゃいますか」という質問と,「ご父母やご家族の中で,普段お酒をお飲みになる方はいらっしゃいますか」という質問を載せ,これらに対して,親が吸う(飲む),他の家族が吸う(飲む),親も他の家族も吸う(飲む),誰も吸わない(飲まない)の4つの選択肢を提示して回答してもらった。こうして得た家族の喫煙,飲酒に関する情報と本人の喫煙,飲酒の状況との間にどのような関連を見出すことが出来るのか,クロス集計表を作成して調べた。

(4) 喫煙と飲酒の関係

(3)で用いた2003年から2013年までのデータを用いて,喫煙習慣と飲酒習慣の関連について,クロス集計表を作成して調べた。

(5) 多重ロジスティック回帰分析

(3),(4)で用いたクロス集計表では二つの変数間の関連を見るには良いが,喫煙習慣や飲酒習慣には他の要因も関与すると思われたので,多重ロジスティック回帰分析を実施して,学生の喫煙や飲酒との関連を調べた。すなわち喫煙習慣を目的変数とした時には,説明変数として本人の飲酒習慣や一度の飲酒機会に飲む量と家族の喫煙状況を,飲酒習慣や一度の飲酒機会に飲む量を目的変数とした時には本人の喫煙習慣と家族の飲酒状況を採用し,さらに調査年,性別,学年,居住形態も説明変数に含んだ。

(6) 飲酒頻度と一度の飲酒機会に飲む量との関連

2017年から2024年まで,飲酒状況について下の6つの選択肢から選ばせている。すなわち,「一切,飲んだことがない」,「たまに(週に1~2日,あるいはそれより少ない頻度で)飲むことがあるが,習慣的ではない」,「以前はよく飲んでいたが,今は普段は飲まない」,「週に3~4日飲んでいる」,「週に5~6日飲んでいる」,「ほとんど毎日飲んでいる」の6つである。これにより飲酒頻度を知り,一度の飲酒機会に飲む量を日本酒に換算したうえで,両者の関連についてクロス集計表を作成して調べた。なお,「一切,飲んだことがない」学生はこの分析からは省いた。彼らについては,飲酒量は0である。

(7) データの入手と倫理的配慮

定期健康診断や生活習慣調査で得られたデータは,全て,エクセルファイルとして,健診機関から本研究の共同研究者である学医が提供を受けた。実際の統計解析には市販の統計ソフト「エクセル統計BellCurve® for Excel」を用いた。統計学的な有意水準は,p値0.05未満とした。

本研究の実施については「大学生の定期健康診断と日常生活習慣調査の分析」として九州産業大学の倫理委員会の審査を受け,承認された(2024-0006号)。

3. 結果

(1) 喫煙習慣と飲酒習慣の経年変化

図1は1年生と4年生で調べた毎年の喫煙率と飲酒率を男女別に示したものである。喫煙率は1,4年生ともに男性も女性も有意に(p<0.01)低下した。飲酒率も4年生女性を除き,全体としてみると有意に低下したが,初期には経年的な低下は明らかでなかった。女性では2020年の喫煙率,飲酒率が高くなっていたが,男性ではそのような変動は見られず,むしろ飲酒率が減少していた。

図1

上:1年生男女の喫煙・飲酒習慣.下:4年生男女の喫煙・飲酒習慣.

(2) 家族の喫煙や飲酒と学生の喫煙や飲酒との関連

表1には家族の喫煙状況ごとに示した学生本人の喫‍煙状況を,表2には家族の飲酒状況ごとに示した学生本人の飲酒状況を,そして表3には一度の飲酒機会に飲む量をまとめた。表1から3には,それぞれ2003年から2013年までのデータを合算して示した。性別,学年別に検討し,全てχ2検定でp<0.001であった。すなわち,性や学年を問わずに,親や他の家族が喫煙あるいは飲酒すれば,習慣的喫煙者(表1)あるいは習慣的飲酒者(表2)が増え,特に親だけあるいは他の家族だけが喫煙,飲酒するより,親も他の家族も喫煙,飲酒した方が,学生本人が習慣的に喫煙や飲酒する割合が高かった。同時に,家族の誰も吸わないあるいは飲まない状況でも習慣的喫煙者や習慣的飲酒者がいた。また,家族が飲酒すれば,一度の飲酒機会に飲む量が有意に増え,それは親と他の家族がともに飲酒した時に特にはっきりすることや,逆に家族の中に誰も飲む人がいなくとも,本人は一度の飲酒機会に3合以‍上‍飲む場合があることも,性や学年を問わなかった(表3)。

表1

家族の喫煙状況と学生の喫煙状況の関連(a)は男女の比較,b)は1年生と4年生の比較)

a)
男性 学生本人の喫煙状況
一切吸わず たまに吸う 禁煙した 習慣的に吸う 合 計
家族の
喫煙状況
親が吸う 10,081(59.3) 1,394(8.2) 968(5.7) 4,549(26.8) 16,992(100.0)
他の家族が吸う 1,915(46.5) 448(10.9) 276(6.7) 1,486(36.0) 4,125(100.0)
親も他の家族も吸う 1,408(35.8) 329(8.4) 244(6.2) 1,954(49.7) 3,935(100.0)
誰も吸わない 12,231(66.3) 1,408(7.6) 996(5.4) 3,817(20.7) 18,452(100.0)
合 計 25,635(58.9) 3,579(8.2) 2,484(5.7) 11,806(27.1) 43,504(100.0)
女性 学生本人の喫煙状況
一切吸わず たまに吸う 禁煙した 習慣的に吸う 合 計
家族の
喫煙状況
親が吸う 3,559(83.4) 218(5.1) 154(3.6) 336(7.9) 4,267(100.0)
他の家族が吸う 903(74.3) 98(8.1) 73(6.0) 143(11.8) 1,217(100.0)
親も他の家族も吸う 739(67.6) 88(8.1) 62(5.7) 204(18.7) 1,093(100.0)
誰も吸わない 5,091(87.7) 242(4.2) 215(3.7) 258(4.4) 5,806(100.0)
合 計 10,292(83.1) 646(5.2) 504(4.1) 941(7.6) 12,383(100.0)
b)
1年生 学生本人の喫煙状況
一切吸わず たまに吸う 禁煙した 習慣的に吸う 合 計
家族の
喫煙状況
親が吸う 9,214(77.6) 886(7.5) 595(5.0) 1,173(9.9) 11,868(100.0)
他の家族が吸う 1,540(68.5) 246(10.9) 140(6.2) 321(14.3) 2,247(100.0)
親も他の家族も吸う 1,346(61.1) 238(10.8) 148(6.7) 472(21.4) 2,204(100.0)
誰も吸わない 10,496(85.2) 636(5.2) 470(3.8) 723(5.9) 12,325(100.0)
合 計 22,596(78.9) 2,006(7.0) 1,353(4.7) 2,689(9.4) 28,644(100.0)
4年生 学生本人の喫煙状況
一切吸わず たまに吸う 禁煙した 習慣的に吸う 合 計
家族の
喫煙状況
親が吸う 4,426(47.1) 726(7.7) 527(5.6) 3,712(39.5) 9,391(100.0)
他の家族が吸う 1,278(41.8) 300(9.7) 209(6.8) 1,308(42.3) 3,095(100.0)
親も他の家族も吸う 801(28.4) 179(6.3) 158(5.6) 1,686(59.7) 2,824(100.0)
誰も吸わない 6,826(57.2) 1,014(8.5) 741(6.2) 3,352(28.1) 11,933(100.0)
合 計 13,331(48.9) 2,219(8.1) 1,635(6.0) 10,058(36.9) 27,243(100.0)

(  )内の数値は,家族の喫煙状況ごとに示した学生本人の喫煙状況の%割合              p<0.001

表2

家族の飲酒状況と学生の飲酒状況の関連(a)は男女の比較,b)は1年生と4年生の比較)

a)
男性 学生本人の飲酒状況
一切飲まず たまに飲む 禁酒した 習慣的に飲む 合 計
家族の
飲酒状況
親が飲む 7,217(29.3) 13,797(56.1) 977(4.0) 2,604(10.6) 24,595(100.0)
他の家族が飲む 540(27.4) 1,138(57.8) 99(5.0) 192(9.8) 1,969(100.0)
親も他の家族も飲む 1,372(15.9) 5,004(58.0) 467(5.4) 1,788(20.7) 8,631(100.0)
誰も飲まない 2,465(32.3) 4,537(59.5) 270(3.5) 357(4.7) 7,629(100.0)
合 計 11,594(27.1) 24,476(57.2) 1,813(4.2) 4,941(11.5) 42,824(100.0)
女性 学生本人の飲酒状況
一切飲まず たまに飲む 禁酒した 習慣的に飲む 合 計
家族の
飲酒状況
親が飲む 2,423(39.0) 3,221(51.9) 168(2.7) 399(6.4) 6,211(100.0)
他の家族が飲む 204(34.2) 321(53.8) 27(4.5) 45(7.5) 597(100.0)
親も他の家族も飲む 733(25.6) 1,604(56.0) 124(4.3) 402(14.0) 2,863(100.0)
誰も飲まない 966(41.3) 1,247(53.3) 52(2.2) 74(3.2) 2,339(100.0)
合 計 4,326(36.0) 6,393(53.2) 371(3.1) 920(7.7) 12,010(100.0)
b)
1年生 学生本人の飲酒状況
一切飲まず たまに飲む 禁酒した 習慣的に飲む 合 計
家族の
飲酒状況
親が飲む 9,028(53.0) 7,208(42.3) 346(2.0) 447(2.6) 17,029(100.0)
他の家族が飲む 618(53.1) 482(41.4) 33(2.8) 31(2.7) 1,164(100.0)
親も他の家族も飲む 2,003(40.1) 2,569(51.4) 138(2.8) 289(5.8) 4,999(100.0)
誰も飲まない 2,898(59.5) 1,820(37.4) 91(1.9) 60(1.2) 4,869(100.0)
合 計 14,547(51.8) 12,079(43.0) 608(2.2) 827(2.9) 28,061(100.0)
4年生 学生本人の飲酒状況
一切飲まず たまに飲む 禁酒した 習慣的に飲む 合 計
家族の
飲酒状況
親が飲む 612(4.4) 9,810(71.2) 799(5.8) 2,556(18.6) 13,777(100.0)
他の家族が飲む 126(9.0) 977(69.7) 93(6.6) 206(14.7) 1,402(100.0)
親も他の家族も飲む 102(1.6) 4,039(62.2) 453(7.0) 1,901(29.3) 6,495(100.0)
誰も飲まない 533(10.5) 3,964(77.7) 231(4.5) 371(7.3) 5,099(100.0)
合 計 1,373(5.1) 18,790(70.2) 1,576(5.9) 5,034(18.8) 26,773(100.0)

(  )内の数値は,家族の飲酒状況ごとに示した学生本人の飲酒状況の%割合              p<0.001

表3

家族の飲酒状況と学生の一度の飲酒機会に飲む量の関連(a)は男女の比較,b)は1年生と4年生の比較)

a)
男性 学生本人が一度に飲む量
0~1合未満 1合以上 3合未満 3合以上 合 計
家族の
飲酒状況
親が飲む 17,018(71.9) 4,405(18.6) 2,259(9.5) 23,682(100.0)
他の家族が飲む 1,366(72.6) 357(19.0) 159(8.4) 1,882(100.0)
親も他の家族も飲む 4,597(54.8) 2,222(26.5) 1,576(18.6) 8,395(100.0)
誰も飲まない 5,608(77.5) 1,063(14.7) 564(7.8) 7,235(100.0)
合 計 28,589(69.4) 8,047(19.5) 4,558(11.1) 41,194(100.0)
女性 学生本人が一度に飲む量
0~1合未満 1合以上 3合未満 3合以上 合 計
家族の
飲酒状況
親が飲む 4,982(83.6) 709(11.9) 270(4.5) 5,961(100.0)
他の家族が飲む 472(82.8) 65(11.4) 33(5.8) 570(100.0)
親も他の家族も飲む 1,989(72.1) 513(18.6) 257(9.3) 2,759(100.0)
誰も飲まない 1,899(86.9) 213(9.7) 74(3.4) 2,186(100.0)
合 計 9,342(81.4) 1,500(13.1) 634(5.5) 11,476(100.0)
b)
1年生 学生本人が一度に飲む量
0~1合未満 1合以上 3合未満 3合以上 合 計
家族の
飲酒状況
親が飲む 14,464(87.4) 1,522(9.2) 557(3.4) 16,543(100.0)
他の家族が飲む 982(86.4) 119(10.5) 36(3.2) 1,137(100.0)
親も他の家族も飲む 3,820(78.2) 723(14.8) 342(7.0) 4,885(100.0)
誰も飲まない 4,241(90.1) 342(9.9) 125(3.9) 4,708(100.0)
合 計 23,507(86.2) 2,706(9.9) 1,060(3.9) 27,273(100.0)
4年生 学生本人が一度に飲む量
0~1合未満 1合以上 3合未満 3合以上 合 計
家族の
飲酒状況
親が飲む 7,536(57.5) 3,592(27.4) 1,972(15.1) 13,100(100.0)
他の家族が飲む 856(65.1) 303(23.0) 156(11.9) 1,315(100.0)
親も他の家族も飲む 2,766(44.1) 2,012(32.1) 1,491(23.8) 6,269(100.0)
誰も飲まない 3,266(69.3) 934(19.8) 513(10.9) 4,713(100.0)
合 計 14,424(56.8) 6,841(26.9) 4,132(16.3) 25,397(100.0)

(  )内の数値は,家族の飲酒状況ごとに示した学生本人の飲酒量の%割合                p<0.001

(3) 喫煙習慣と飲酒習慣の重複

喫煙習慣のある学生は飲酒習慣も持っているかを調べ,表4に示した。このデータも2003年から2013年までの数値を合算したものである。確かに両者は重複しやすいが(p<0.001),この調査をした時点で習慣的に吸うという回答が6割以上であった男性あるいは4年生でも,習慣的に吸う学生のうちで習慣的に飲むと答えたのは3割かそれ以下でしかなかった。

表4

学生本人の喫煙習慣と飲酒習慣の重複(a)は男女の比較,b)は1年生と4年生の比較)

a)
男性 学生本人の飲酒状況
一切飲まず たまに飲む 禁酒した 習慣的に飲む 合 計
学生本人の
喫煙状況
一切吸わず 11,160(43.6) 12,854(50.2) 484(1.9) 1,126(4.4) 25,624(100.0)
たまに吸う 214(6.0) 2,786(77.5) 191(5.3) 403(11.2) 3,594(100.0)
禁煙した 175(7.0) 1,762(70.7) 223(8.9) 332(13.3) 2,492(100.0)
習慣的に吸う 341(2.9) 7,470(62.6) 956(8.0) 3,162(26.5) 11,929(100.0)
合 計 11,890(27.2) 24,872(57.0) 1,854(4.2) 5,023(11.5) 43,639(100.0)
女性 学生本人の飲酒状況
一切飲まず たまに飲む 禁酒した 習慣的に飲む 合 計
学生本人の
喫煙状況
一切吸わず 4,395(42.8) 5,237(51.0) 202(2.0) 427(4.2) 10,261(100.0)
たまに吸う 35(5.4) 447(68.7) 42(6.5) 127(19.5) 651(100.0)
禁煙した 19(3.8) 361(71.6) 36(7.1) 88(17.5) 504(100.0)
習慣的に吸う 29(3.1) 513(54.4) 106(11.2) 295(31.3) 943(100.0)
合 計 4,478(36.2) 6,558(53.1) 386(3.1) 937(7.6) 12,359(100.0)
b)
1年生 学生本人の飲酒状況
一切飲まず たまに飲む 禁酒した 習慣的に飲む 合 計
学生本人の
喫煙状況
一切吸わず 14,445(63.9) 7,670(33.9) 217(1.0) 270(1.2) 22,602(100.0)
たまに吸う 187(9.3) 1,630(80.9) 89(4.4) 108(5.4) 2,014(100.0)
禁煙した 159(11.7) 990(72.9) 130(9.6) 79(5.8) 1,358(100.0)
習慣的に吸う 148(5.5) 1,991(73.5) 184(6.8) 386(14.2) 2,709(100.0)
合 計 14,939(52.1) 12,281(42.8) 620(2.2) 843(2.9) 28,683(100.0)
4年生 学生本人の飲酒状況
一切飲まず たまに飲む 禁酒した 習慣的に飲む 合 計
学生本人の
喫煙状況
一切吸わず 1,110(8.4) 10,421(78.5) 469(3.5) 1,283(9.7) 13,283(100.0)
たまに吸う 62(2.8) 1,603(71.9) 144(6.5) 422(18.9) 2,231(100.0)
禁煙した 35(2.1) 1,133(69.2) 129(7.9) 341(20.8) 1,638(100.0)
習慣的に吸う 222(2.2) 5,992(59.0) 878(8.6) 3,071(30.2) 10,163(100.0)
合 計 1,429(5.2) 19,149(70.1) 1,620(5.9) 5,117(18.7) 27,315(100.0)

(  )内の数値は,学生本人の喫煙状況ごとに示した飲酒状況の%割合                 p<0.001

(4) 多重ロジスティック回帰分析

本人の喫煙状況,飲酒状況,一度の飲酒機会で飲む量を目的変数とし,2003年から2013年までの成績を用いた多重ロジスティック回帰分析を実施した(表5)。その結果,男女や学年の差が確認された。本人の喫煙状況と飲酒状況や一度の飲酒機会で飲む量の間には密接な関連があった。この期間中,他の要因を考慮に入れると,喫煙率は僅かずつ低下し,飲酒率は増加していた。一度の飲酒機会で飲む量が3合以上の学生は僅かずつ減少していた。学生の家族の喫煙や飲酒は,本人が喫煙者や飲酒者になるリスクを大きく増していた。また,アパートや下宿に居住している学生の方が,高頻度に喫煙習慣や飲酒習慣を身に付け,一度の飲酒機会で飲む量も多くなっていた。

表5

本人の喫煙状況(a),飲酒状況(b),一度の飲酒機会で飲む量(c)を目的変数とし,2003年から2013年までの成績を用いた多重ロジスティック回帰分析

a)
目的変数:本人の喫煙状況
0 一切吸わず~禁煙した
1 たまに~習慣的に吸う
有効回答した人数
52,833人
説明変数 オッズ比 p値
調査年 0.937
(0.930–0.944)
p<0.001
性別
1 男
2 女
0.254
(0.238–0.270)
p<0.001
学年
1 1年生
2 4年生
1.516
(1.493–1.539)
p<0.001
居住形態
1 親/親戚宅
2 アパート/下宿
1.192
(1.142–1.244)
p<0.001
家族の喫煙状況
0 誰も吸わない
1 親,他の家族,あるいは双方が吸う
1.835
(1.756–1.918)
p<0.001
本人の飲酒状況
0 一切飲まず,たまに飲む,禁酒した
1 習慣的に飲酒する
2.555
(2.386–2.735)
p<0.001
一度の飲酒機会に飲む量
1 0~1合未満
2 1合以上 3合未満
3 3合以上
1.824
(1.765–1.885)
p<0.001
b)
目的変数:本人の飲酒状況
0 一切飲まず,たまに飲む,禁酒した
1 習慣的に飲酒する
有効回答した人数
54,366人
説明変数 オッズ比 p値
調査年 1.021
(1.011–1.031)
p<0.001
性別
1 男
2 女
0.955
(0.881–1.036)
0.2613
学年
1 1年生
2 4年生
1.752
(1.706–1.799)
p<0.001
居住形態
1 親/親戚宅
2 アパート/下宿
1.161
(1.097–1.230)
p<0.001
本人の喫煙状況
0 一切吸わず~禁煙した
1 たまに~習慣的に吸う
3.691
(3.463–3.934)
p<0.001
家族の飲酒状況
0 誰も飲まない
1 親,他の家族,あるいは双方が飲む
3.130
(2.825–3.468)
p<0.001
c)
目的変数:一度の飲酒機会に飲む量
0 0~3合未満
1 3合以上
有効回答した人数
52,243人
説明変数 オッズ比 p値
調査年 0.928
(0.918–0.937)
p<0.001
性別
1 男
2 女
0.639
(0.583–0.700)
p<0.001
学年
1 1年生
2 4年生
1.531
(1.494–1.570)
p<0.001
居住形態
1 親/親戚宅
2 アパート/下宿
1.320
(1.246–1.400)
p<0.001
本人の喫煙状況
0 一切吸わず~禁煙した
1 たまに~習慣的に吸う
2.955
(2.768–3.155)
p<0.001
家族の飲酒状況
0 誰も飲まない
1 親,他の家族,双方が飲む
1.571
(1.442–1.711)
p<0.001

a),b),c)いずれも(  )内の数値は95%信頼限界

なお,先に述べた様に2020年には特に女性で喫煙習慣や飲酒習慣があるという回答が増えており,COVID-19の影響が否定できない。しかし,この多重ロジスティック回帰分析は2003年から2013年までの成績を用いており,説明変数に調査年を含んだ。

(5) 飲酒の頻度と一度の飲酒機会で飲む量の関連

2017年から2024年まで,飲酒の頻度も尋ねた。この成績を用いて飲酒頻度と一度の飲酒機会で飲む量との関係を調べた。なお,一切,飲んだことがないと回答した学生は,この分析からは省いた。表6に成績を示す。ほとんど毎日飲む学生には一度の飲酒機会で3合以上飲む者が多く,性,学年を問わずにp<0.001で有意であったが,実人数を見るとたまに飲むと回答した学生で一度の飲酒機会で3合以上飲む例が,どのカテゴリーでも最多となる。

表6

飲酒頻度と一度の飲酒機会に飲む量の関連(a)は男女の比較,b)は1年生と4年生の比較)

a)
一度の飲酒機会に飲む量
<1合未満 1~2合 3合以上 合 計
男性 たまに飲む 5,972(60.5) 2,632(26.7) 1,262(12.8) 9,866(100.0)
やめた 410(36.0) 407(35.7) 322(28.3) 1,139(100.0)
週3~4日 295(24.7) 607(50.8) 292(24.5) 1,194(100.0)
週5~6日 59(22.9) 123(47.7) 76(29.5) 258(100.0)
ほとんど毎日 69(19.6) 130(36.9) 153(43.5) 352(100.0)
合 計 6,805(53.1) 3,899(30.4) 2,105(16.4) 12,809(100.0)
一度の飲酒機会に飲む量
<1合 1~2合 3合以上 合 計
女性 たまに飲む 2,518(68.4) 946(25.7) 216(5.9) 3,680(100.0)
やめた 166(49.3) 108(32.0) 63(18.7) 337(100.0)
週3~4日 188(47.0) 123(30.8) 89(22.3) 400(100.0)
週5~6日 27(28.1) 45(46.9) 24(25.0) 96(100.0)
ほとんど毎日 28(28.6) 41(41.8) 29(29.6) 98(100.0)
合 計 2,927(63.5) 1,263(27.4) 421(9.1) 4,611(100.0)
b)
一度の飲酒機会に飲む量
<1合未満 1~2合 3合以上 合 計
1年生 たまに飲む 908(71.8) 260(20.6) 96(7.6) 1,264(100.0)
やめた 52(45.6) 40(35.1) 22(19.3) 114(100.0)
週3~4日 21(35.6) 29(49.2) 9(15.3) 59(100.0)
週5~6日 3(27.3) 6(54.5) 2(18.2) 11(100.0)
ほとんど毎日 8(53.3) 4(26.7) 3(20.0) 15(100.0)
合 計 992(67.8) 339(23.2) 132(9.0) 1,463(100.0)
一度の飲酒機会に飲む量
<1合 1~2合 3合以上 合 計
4年生 たまに飲む 7,581(61.7) 3,317(27.0) 1,382(11.3) 12,280(100.0)
やめた 524(38.5) 475(34.9) 363(26.7) 1,362(100.0)
週3~4日 462(30.1) 701(45.7) 372(24.2) 1,535(100.0)
週5~6日 83(24.2) 162(47.2) 98(28.6) 343(100.0)
ほとんど毎日 89(20.5) 167(38.4) 179(41.1) 435(100.0)
合 計 8,739(54.8) 4,822(30.2) 2,394(15.0) 15,955(100.0)

                                                 p<0.001

4. 考察

(1) 喫煙習慣と飲酒習慣の経年変化

図1を見ると,喫煙率の低下は2006~2007年頃からまず1年生で,その後に4年生も明らかに認められる。全国統計を見ると3),喫煙率低下の足踏み状態は見られない。2003年以前は,九産大生の喫煙率はもっと高かったのかも知れない。

日本では1980年の嫌煙権訴訟をきっかけに1980年代の半ばから分煙の推進や禁煙席の導入が進んだという8)。嫌煙権訴訟とは,国や国鉄,日本専売公社を被告として,受動喫煙の被害への損害賠償と国鉄車両の半分以上を禁煙化することの二つを求めた1980年の訴訟であり,約7年の審議の結果,請求は認められなかったが,分煙の推進や禁煙席の導入が進んだことで原告側の実質的な勝訴という見方がある8)。本研究は2003年以降の在学生を対象にしており,分煙や禁煙が広がったのはそれ以前からである。近年の喫煙率の低下をもたらした主たる要因だとは断定できない。その他の要因として考えられるのは,喫煙者を“格好良い”とみる風潮が薄れてきたことがあり,これには業界が自主的にたばこ広告を規制した効果が関与するだろう9)

法規制の状況を見ると,2003年の健康増進法の施行で受動喫煙の防止が努力義務とされ,2020年の改正で罰則付きの義務になった。この流れは厚労省の後押し10)を受けて全国に広まり,本学でも喫煙場所の制限が行われているが,喫煙率の低下は2020年以前から認められる(図1)。

結局,分煙の推進や禁煙の広がりや業界の広告自粛,健康増進法の改正など,どれか一つで喫煙率の低下を説明するのは困難であろう。さらに,後述する家族の影響も無視できないと思われる。

飲酒習慣については,4年生では男女ともに2013年と2014年の間に落差がある。この落差の理由は明らかにできなかった。酒類の広告に関する業界の自主基準は1988年に明文化され,改訂を繰り返して今に至るが11),自動販売機による酒類の深夜販売は,すでに1977年には自粛された。2013年に大きな変化があったわけではない。

2003年から2024年にかけての喫煙率や飲酒率の変動について,要因が明らかなのはCOVID-19の影響だろう。2020年には,4年生の女性で喫煙したり飲酒したりする者の割合が明らかに高くなっており,1年生の女性にも喫煙者や飲酒者の割合の上昇がある。2020年度の定期健診はCOVID-19のパンデミックの初期に行われ,まだこの疾患のリスクが具体的に掴めないまま生活の制限が広く行われ,女性ではその不安が背景にあった可能性がある。

しかし,コロナ禍における喫煙率や飲酒率の変動に男女差が認められたことの説明を,単にCOVID-19への不安というだけでは足りない。男性の飲酒率は1年生でも4年生でも2020年にはむしろ減っていた。余暇の過ごし方や外出の頻度に男女差があったのかも知れないが,そのようなことは2020年の時点では考えていなかったので,データを取得していない。なお,九産大生におけるCOVID-19の影響については,2024年に詳細な分析を報告している12)

なお,喫煙率,飲酒率ともに男性>女性,1年生<4年生のパターンは,恒常的に認められた。男女差には文化的な要因が,1年生と4年生の差には,20歳を超えて法的な縛りがなくなったことが関与すると思われる。

(2) 家族の影響

喫煙習慣にも飲酒習慣にも,親と他の家族がそれぞれに影響していると思われた(表1表3)。全国統計を見ると,喫煙率については13)大学生の親の年代―すなわち40~49歳,50~59歳―では,男性で2003年55.4%,54.4%から2019年36.5%,31.8%と減少している。女性では男性より喫煙率が低いうえに,40~49歳では2007年の17.9%をピークに10.3%と減少しているが,50~59歳では2003年10.7%,ピークは2004年の13.7%だが,2019年12.9%と明らかな減少は見られない。九産大生で家族の影響を知ることが出来るのは2013年までだが,その影響は現在に至るまで同じだとすると,近年の喫煙率の低値には周囲の大人―特にもともと喫煙者が多かった男性の喫煙率低下―が影響している可能性がある。これについては,最近公表されたアンケート調査で14),家族がたばこを吸っていたことが本人も吸いたいと思った理由のトップであることが示されている。

また,親子関係の質については本研究では全く検討できなかったが,日本人未成年者の喫煙要因として身近な人の喫煙と共に親の不適切な養育態度や子どもの喫煙に対する親の不介入,不良な家庭環境や家族関係が取り上げられている15)

これに対して飲酒率は16),2017年までの統計ではあるが,40~49歳,50~59歳の数値は,男性では2003年が48.5%,50.0%であったのが,2017年にはそれぞれ36.8%,43.8%に減少したのに対し,女性では12.6%,6.6%であったのが,それぞれ14.8%,12.8%に増加している。飲酒率に関しても年齢を問わず男性に習慣的飲酒者が多かったので,男性の飲酒率の低下が大きく影響した可能性はあるだろう。しかし,女性の飲酒率は明らかに増加している。九産大生の家族が全国統計で代表されるならば,中・高年女性の飲酒率増加が今後どのように影響を及ぼすのか,慎重に見ていく必要があるだろう。

なお,我々の検討では学生本人が習慣的飲酒者であることに対して,親や他の家族が飲むことが有意に影響していたが(表5),本州5府県10大学の大学生1,211人を対象にした先行研究17)では,親の飲酒行動と子の飲酒行動の関連はないとされている。但し,この研究では男性の飲酒率が60%以上,女性の飲酒率が50%以上で17),本研究の対象者の飲酒率(図1)より明らかに高く,本研究とは異なる性質の対象を調べた可能性が否定できない。

(3) 喫煙習慣と飲酒習慣

喫煙習慣と飲酒習慣が重複して存在する人では脳血‍管疾患の発症リスクが高いことが,成人男性を対象にした研究で報告されている18)。そこで,喫煙習慣と飲酒習慣が重複しやすいかを大学生で調べた。確かに両者は重複しやすかった(表4)。ただ,習慣的に喫煙している学生が6割程度,その中で習慣的に飲酒している学生は3割かそれ以下であった。現在は,習慣的喫煙者も習慣的飲酒者も減っており,高いリスクに曝される学生はさらに少なくなったであろうが,このように将来的なハイリスクを背負う学生に対するアプローチを如何にするか―つまり,将来のリスクを今の時点で実感させる方法の開発―は,これからの問題だと思う。

(4) 多重ロジスティック回帰分析

この解析法は,もともと医学や疫学において病因究明の方法論として開発され,リスク要因の解析に用いられることが多いとされている19)。これまでに見て来た要因は,それぞれ独立して喫煙習慣や飲酒習慣,一度の飲酒機会に飲む量に影響を及ぼすことが示された。特に,喫煙習慣に関しては,習慣的に飲むと喫煙もしやすいことが示され,同時に,一度の飲酒機会に飲む量が3合以上であれば喫煙しやすかった。本シリーズの第一報7)で述べたように,喫煙と飲酒が健康度の自己評価に及ぼす影響は異なっていたが,今回の多重ロジスティック回帰分析の結果は,喫煙習慣,飲酒習慣,一度の飲酒機会に飲む量について,三者をまとめて指導する意義を示すものであろう。また古いデータではあるが,家族が喫煙や飲酒をしていると,学生本人も喫煙者や飲酒者になりやすかった。取り敢えずは,ここに挙げた多重ロジスティック回帰分析の結果を知らせることが考えられる。

なお,本人が習慣的に飲酒することと一度の飲酒量が3合以上であることに対する家族の影響はいずれも有意であったが,オッズ比を見るとそれぞれ3.130と1.571であった,学生の一度の飲酒量に対する家族の飲酒の影響は,学生本人が習慣的に飲酒することに対する影響ほどは強くはないのかも知れない。

(5) 飲酒の頻度と一度の飲酒機会で飲む量

ほとんど毎日飲むと一度の飲酒機会で3合以上飲む者が多く,性,学年を問わずにp<0.001で有意であったが,そこにだけ目を向けてはならない。たまに飲むという学生の中にも一度の飲酒機会で3合以上飲む者がいて,実人数では最多である。これは,たまに飲む学生が最も多いためであり,いわゆるbinge drinkingのリスク6)20)を考えると,たまに飲む学生への指導は大切であることを示している。

(6) 今回の検討で触れられなかった点と今後の展望

生活習慣の調査票に用いた質問は,学生の喫煙状況については2003年から2024年まで変えていないが,飲酒については2017年からは習慣的に飲むだけでなく,どのくらいの頻度で飲むかも尋ねている。しかし,家族の飲酒状況についての質問を2013年で打ち切ったので,家族の飲酒が学生の飲酒頻度に影響するかは分からなかった。この点の検討は今後の課題である。

喫煙や飲酒と健康度の自己評価との関係については分析したが7),他の生活習慣―たとえば運動習慣や朝食摂取―と喫煙や飲酒との関連については手がついていない。しかし,これについてはデータがあるので将来の分析が可能である。

5. 結語

2003年から2024年までの九産大生を対象に,喫煙率や飲酒率の経年変化や家族の影響,喫煙と飲酒の関連を調べた。飲酒頻度と一度の飲酒機会に飲む量の関連についても調べた。喫煙率も飲酒率も全体としては低下してきたが,詳細に見ると両者の振る舞いは異なった。すなわち,1年生の喫煙率は2006年から明らかに減ってきたが,4年生の飲酒率の減少は2012,2013年までは明らかでなかった。2020年には女性で喫煙率,飲酒率とも増えていた。学生の喫煙習慣にも飲酒習慣にも家族の影響が明らかであった。喫煙習慣と飲酒習慣が重複することも明らかであった。ほぼ毎日飲む学生は,一度に飲む量が3合以上である割合が有意に高かった。しかし,一度に3合以上飲む者の実数を見ると,たまに飲む学生が最多であった。

謝辞

毎年の学生の定期健康診断と諸調査が円滑に実施できるよう,努力を惜しまなかった事務職員の皆様に深謝いたします。本論文に関して,開示すべきCOI状態はありません。

文献
 
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