抄録
本論文の目的は、対人関係を基盤とするケア論の構築である。これまで、ケアは様々な者によって定義されてきた。例えば、ネル・ノディングズは、ケアをケアする者とケアされる者とケアリングとに分けて定義している。そのうえで、ケアは、ケアする者とケアされる者との相互作用から成り立つとした。しかし、ノディングズによるケアはそれぞれの認識から成り立つものであり、そのケアではケアする者、ケアされる者の役割が固定している。ケアする者、ケアされる者の役割が固定していては、ケアされる側がケアする可能性(あるいはケアする者がケアされる可能性)に目が開かれない。本論文では、対人関係を生きる過程で役割が明確化するケアの視点について論じている。