日本保健福祉学会誌
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Print ISSN : 1340-8194
韓国の老人長期療養保険制度に関する研究動向と今後の研究課題(学会25周年記念特別論文)
宣 賢奎
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2013 年 19 巻 2 号 p. 31-50

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抄録

本研究は、韓国の老人長期療養保険制度に関するこれまでの筆者の研究成果を振り返りつつ、制度施行前後の日本国内における老人長期療養保険制度に関する研究動向を概観するとともに、今後さらなる論究が求められる研究課題について検討したものである。韓国の老人長期療養保険制度は2008年7月に施行されたが、制度施行以前は制度創設の背景、概要と仕組みなどの紹介が中心的な研究であった。その後、制度の骨格がある程度決まってからは、日韓両国の制度の比較研究が活発に行われた。制度施行以降は、主として制度施行の成果分析、介護サービスの質向上のための提言などに関する研究が中心となっている。制度施行の成果としては安定的な介護サービス提供体制の構築、介護サービス受給者の大幅な増加、家族の介護負担の軽減、介護労働者の新たな雇用創出などが上げられる。しかし、限定的な給付対象者、不十分なサービス給付、低い介護報酬、事業者間の過当競争と介護報酬の不正請求、認知症高齢者に対する不十分な要介護認定、サービス供給の地域格差、専門性の低い療養保護士、療養保護士の劣悪な労働環境、低いサービスの質、ケアマネジメントの不在など、解決しなければならない課題は今なお多い。これらの課題の解決に向けた諸研究者のさらなる論究を期待したい。

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© 2013 日本保健福祉学会
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