日本保健福祉学会誌
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線維筋痛症患者・医師が経験する否定的反応の定量的把握の試み: Illness Invalidation Inventory (3*I) を用いて
本間 三恵子
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2022 年 28 巻 2 号 p. 3-12

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抄録

目的:線維筋痛症(Fibromyalgia: FM)は器質的な原因を特定しにくい疾患であり、患者・医師関係に困難が生じやすい。本研究では患者・医師双方が経験するFM患者への「軽視」「無理解」という「否定的反応(Invalidation)」の経験を定量的に把握し、属性による違いおよび患者―医師間の違いを探索的に検討した。

方法:郵送質問紙による横断調査を実施した。無作為抽出により、患者は患者会会員500名、医師はリウマチ系学会員1,000名を対象とし(各々回収率は72.6%、32.2%)、うち患者304名、医師233名を分析対象とした。否定的反応の測定にはIllness Invalidation Inventory (3*I)を用いた。属性別の比較にはKruskal-Wallis検定またはMann-WhitneyのU検定を、患者医師の比較には対応のないt検定を用いた。

結果:属性別の3*Iスコアでは、患者では重症者、代替医療受診経験者で「軽視」得点が有意に高く(各p=0.003、0.026)、医師ではFM診療ネットワーク登録ありの者で「軽視」得点が有意に高かった(p=0.015)。男性医師、患者受入れ意思がない医師では、「軽視」(各p=0.006、0.026)「無理解」(各p =0.029、 <0.001)双方で高得点であった。患者・医師間の比較では、「軽視」ドメインのみで医師の方が有意に高得点を示した(平均±SD 患者:2.04±0.98 、医師:2.58±0.69; p <0.001)。

結論:他疾患での報告に比べ、本邦FM患者の3*Iスコアは高く、特に「軽視」で特徴がみられたのは、リウマチ等の内部疾患と異なるFMの特性を反映した結果と考えられた。特に本研究では医師自身も否定的反応を自覚している実情、FM診療を行う医師ほど困難を感じている可能性も示唆された。よりよい患者-医師関係の構築にあたっては患者のみならず、医師側へも疾患情報の提供等のサポートが望まれる。

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